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アルバムは語る
アークエンタテインメント専務取締役 坂上直行氏

ヘラルド時代、ヒットの裏に累々たる死体の山

坂上氏

  記者が前月の文化通信ジャーナル(2015年8月号)で角川グループ映像部門の過去20年来の変遷をたどる中、日本ヘラルド映画を傘下に収めたことは非常に重要な出来事の一つだった。この角川特集は、ヘラルドについても思いをめぐらす機会になった。これまで数多くの映画を見てきたが、我が学生時代がいかにヘラルド配給作品と共にあったかを実感。いわば、ヘラルド作品で育ったとも言えようか。

 そんな思いを、ヘラルド出身で現アークエンタテインメント専務の坂上直行さんに打ち明けると、ヘラルド時代の写真を示しながら、当時のエピソードの数々を披露してくれたのだった。

 坂上さんは1973年に日本ヘラルド映画入社、宣伝部に配属。81年ヘラルド・エースに転籍。88年に取締役宣伝部長としてヘラルドに戻った。今回の話の中心は宣伝部長就任以降のことになるのだが、坂上さんは過去の作品群を振り返り「関わった作品それぞれに思い出がある。コケさせてしまった作品がなんと多いことか。年間でヒットは2割に満たず、まずまずが3割、コケたのが5割強。ヒット作品の背後には、累々たる死体の山があるんだよね」と冗談混じりに語る。

 それにしても、この一覧(下表参照)を眺めると、強烈な印象を与える作品ばかり。見た当時の記憶が鮮烈に呼び覚まされる。坂上さんが宣伝部長、営業本部長として送り出した作品がヘラルドの一時代を築いたのは間違いない。坂上さんは「古川博三社長の理解とスタッフが頑張ったおかげ」と謙遜し部下の仕事ぶりを讃えるが、それは坂上さんの辣腕にスタッフが応えていたからだろう。その証拠に、ヘラルドが無くなった現在もメジャー、インディペンデント各社に坂上さんのスタッフたちが在籍し、第一線で活躍しているのだ。

常識破りの宣伝数多あり

日本ヘラルド映画の主な配給作品

 以下、坂上さんが特に印象深かったという宣伝方法を採った作品について、坂上さんの述懐とともに追っていく。

『トゥルーライズ』(94年)

「ジャンボをチャーターして記者、興行者、公募した一般ファンをハリウッドにお連れして、チャイニーズシアターで初の試写会。続いて、向かいにある第1回アカデミー賞会場のルーズベルトホテルでパーティー。ロサンゼルス・タイムズの1面を、日本人一行とジェームズ・キャメロン監督の写真が飾ったのには驚いた。米国版ポスターがコメディ風で、『ターミネーター2』の後だから日本ではアクションっぽいポスターじゃなきゃダメと思い、本国の許可を取らずにポスターを作った。来日キャンペーンの時は劇場に貼ってあったポスターを撤去したけど、翌日、帝国ホテルで先方が『お前を訴える』って。実は予定より1日早く来日し、日本版ポスターを見ていた。仕方ないと思っていたら、映画が大ヒット。当たったのは日米だけ。全世界でコケた。訴える話が立ち消えに。当たったから、お咎めナシだったのかな」

『レオン 完全版』(96年)

「日本に来た『レオン』のフィルムはLAで見た時と違い、マチルダがレストランでワインを飲み酔っ払うシーンが、米国のレイティングによりカットされていた。わずか数分でも、僕にとっては二人が心を許し合う必須の場面。カット版は95年3月に公開するも、完全版の公開を求めてリュック・ベッソンに交渉。会社は当たるワケがない、やめろと反対したが、96年10月、公開に漕ぎ着けた。するとシネセゾン渋谷単館で記録的な大ヒット。今では『レオン』といえば完全版が圧倒的主流だ」

 そのほか、『メジャー・リーグ』、『愛人 ラマン』、『フィフス・エレメント』、『ロード・オブ・ザ・リング』の裏話、『氷の微笑』、『WATARIDORI』、『恋人たちの予感』、『太陽と月に背いて』、『陽のあたる教室』、『ロード・オブ・ザ・リング』、『ニキータ』の邦題に関するエピソードなども披露してくれた。

全文は文化通信ジャーナル2015年9月号に掲載

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