試し読み

インタビュー
アニプレックス 清水博之氏、高橋優氏

『心が叫びたがってるんだ。』秩父舞台の青春群像劇 再び

©KOKOSAKE PROJECT

 2013年8月に公開され、興収10億円の大ヒットを記録した『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。あれから2年、その製作陣が再結集して製作した待望の最新アニメーションがいよいよお目見えする。

 タイトルは『心が叫びたがってるんだ。』。前作と同様、製作幹事と配給をアニプレックスが手がけ、9月19日公開に向けて宣伝が追い込み態勢に入る。8月下旬の完成を前に、企画・プロデュースの清水博之企画制作部長、配給統括の高橋優CL事業部次長に最新作の全貌を聞いた。

 『心が叫びたがってるんだ。』(略称:ここさけ)は、監督に長井龍雪、脚本に岡田麿里、キャラクターデザインに田中将賀、制作にA‐1 Pictures(アニプレックス子会社)、主幹事にアニプレックスと、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(略称:あの花)のスタッフが勢ぞろいしたことで、早くから注目を集めていた。その製作の経緯をたどると、4年前にさかのぼることになる。

 テレビシリーズ「あの花」はオリジナル作品として製作され、フジテレビの深夜アニメ枠・ノイタミナで11年4~6月に放送された。放送期間中からスタッフ間では、また新しい作品を、しかもオリジナルで作りたいとの話になっていた。ここが『ここさけ』の出発点と言える。この時点でスタッフたちは、「あの花」と同じ世界観を持った青春群像劇を作るという方向性を共有していた。

 彼らは、まずテレビシリーズが予想を超える大ヒットとなった「あの花」の劇場版を製作することを決定。ファンの期待に応えることを前提に、全11話を再編集し、新たなエピソードも追加した99分の総集編を作り上げた。この劇場版と同時並行で、『ここさけ』のシナリオ開発を進めた。

アニメファン以外も

高橋氏(左)、清水氏(右)

 ここで『あの花』をおさらいしておきたい。13年8月31日に全国64館で公開され、土日2日間で興収2億円をあげる大ヒット発進。感動的な青春物語、泣けるアニメとして口コミが広がり、延べ126館で動員は78万人、興収は10億円を突破した。

 高橋氏は「公開当初はテレビシリーズのファンが多く男性中心だったが、徐々に女性が増えて、最終的には男性6割、女性4割くらいの比率。驚いたことに、女子中高生たちが『あの花』を見た感想をSNSに上げて、その輪が広がった。主に男性向けに、パッケージ購入まで見込んで製作してきた当社にとって、これまでにないリアクションだった」と当時の興行を振り返る。『あの花』の興収予算は5億円ほど。劇場公開した『魔法少女まどか☆マギカ』の総集編(前後編)が各5億円超だったことから算出した数字だが、それが2倍に膨らんだのだった。

 なぜ、ここまで広く受け入れられたのだろうか。『あの花』のプロデューサーでもある清水氏は「実写とアニメの両方の客層を取り込めたから」と分析する。映画ファンは往々にしてアニメを斜めから見て、子供向けだ、やれオタク向けだと距離を置きがちだ。そんな中、『あの花』は一見して一般向けの内容に映る。その一方、作り手は当然アニメファンを意識し、キャラクター造形やセリフ回し等でアニメの手法を活用、萌え要素も適度に盛り込んでいた。この二面性が興行の間口を広げたというのだ。「『あの花』はアニメファンに加え、それ以外のライトな層にまで広がった。新作の『ここさけ』も、同様の客筋を狙っている」と清水氏は明かす。

言葉を封印された主人公

 『ここさけ』はどんな作品になるのだろうか。物語の舞台は『あの花』と同じ埼玉県の秩父。一言で言えば、お喋りを封印されてしまった女の子が、ミュージカルの主役に抜擢されて、やがて言葉を取り戻していく物語だ。これを、心に染みる感動作に仕立てていくのだ。「SNSでのコミュニケーションが活発になる一方で、本音をなかなか言えない。素直な気持ちを伝えたい。心の底から叫びたい―。そう思っている人は、子供も大人も多いのではないか。『あの花』とも通底する静かなテーマであり、まさに脚本の岡田さんの感性」と清水氏。

全文は文化通信ジャーナル2015年9月号に掲載

購読案内

試し読み一覧