試し読み

インタビュー
東宝取締役 市川南氏

夏は東宝の中でも1、2位を争うハイレベルな年

市川氏

 近年稀に見る盛況を見せた2015年の夏興行。7月から8月は毎週のように大作・話題作が公開され、30億円を超えた作品も8本を数えた(9月9日時点)。『ジュラシック・ワールド』をはじめ洋画の強豪も続々と登場するこのシーズンに、東宝は『バケモノの子』『HERO』『ポケモン ザ・ムービーXY 光輪の超魔神フーパ』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『BORUTO‐NARUTO THE MOVIE‐』の5作品を投入。邦画サイドをしっかりと支えた。

 夏だけでなく、今年の東宝は前半から好調が続き、そのほとんどの作品が10億円を上回っている。例年にも増して高打率をマークし、1~8月の累計興収は537億円を記録。通年歴代4位だった昨年を現時点でわずかに上回っており、今年も記録的な年間成績になることが予想される。

 2015年も終盤に差し掛かる中、この夏と上期の結果を東宝はどのように受け止めているのか。市川南取締役(映像本部 映画調整・映画企画担当 兼 映画調整部長)に聞いた――。

『バケモノの子』©2015 THE BOY AND
THE BEAST FILM PARTNERS

夏のオリジナルアニメ本命

――大作が揃った夏興行でしたが、東宝の結果はいかがでしたか。

市川 全体では邦洋合わせて500億円以上でしょうか。500億円のうち、東宝配給作品は200億円近くいくと思うので、上々の夏だったと思います。おそらく東宝の中でも1、2位を争うハイレベルの年だったのではないでしょうか。

――作品別に見ると、『バケモノの子』が大きなヒットになりました。細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』に続く作品でしたが、スタジオ地図や細田監督の一般の方への知名度は上がってきていますか。

市川 最終で約60億円までいくので、名実ともに、宮崎駿監督引退後の夏のオリジナルアニメの本命という存在になったのではないかと思います。興収だけでなく、作品のクオリティも『おおかみこども』に続いて夏休みらしい堂々たる内容で、完全にお客さんがついたのではないかなと思います。

――数字的にも期待通りということでしょうか。

市川 そうですね。『おおかみこども』は42億円でしたから、約1.5倍になったわけで、見事な進化だと思います。

――『おおかみこども』は2012年の公開でした。『バケモノの子』まで3年の間隔が開いていますが、今後は何年おきに細田監督の作品が公開されそうですか。

市川 製作幹事の日本テレビさん、スタジオ地図さんには、できれば3年後の2018年に新作をお待ちしているとお願いしています。

――もう動いているのですか。

市川 さすがにまだだと思います。今回は、『おおかみこども』の公開後から1年で企画を、次の年に脚本や絵コンテを固めて、最後の1年で作画から仕上げをするというサイクルだったので、次も順調に行けば2018年にやって頂けるといいなと“切望”しています(笑)。

少々のことでは揺るがない

――『ポケモン』シリーズは、ここ数年は興収が減少傾向にあります。今年の『ポケモン ザ・ムービーXY 光輪の超魔神フーパ』も25億円前後の見込みで昨年を下回りそうですが、これはどう見てらっしゃいますか。

市川 過去にも、興収が20億円台だった翌年にV字回復したこともあるので、我々は心配していません。特に、来年はゲームとTVシリーズが20周年、そして再来年には映画シリーズが20周年を迎えます。それらの記念イヤーの展開に期待しています。夏の興行を20年近く支えてくれて、このシリーズは本当に大きいのです。もし『ポケモン』が無ければ、マイナス30億、40億円になるわけで、それを毎年探したり、作ることは大変なことです。我々にとって大事な作品で、少々のことでは揺るぎません。

――記念イヤーでのV字回復に期待ですね。

市川 弊社配給の定番アニメシリーズでは、『ドラえもん』がここ数年ハイアベレージとなり、『クレヨンしんちゃん』と『名探偵コナン』は今年の新作がシリーズ歴代1位になりました。例えば『クレヨンしんちゃん』は、20数年前に小学生や幼稚園児だった人が、今は親になって子供と一緒に観に行くという循環に入っています。

全文は文化通信ジャーナル2015年10月号に掲載

購読案内

試し読み一覧