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ビデオ広告市場拡大にらみ「GYAO!」強化
―㈱GYAO半田英智取締役に聞く

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ビデオ広告市場拡大にらみ「GYAO!」強化
―㈱GYAO半田英智取締役に聞く

2015年01月23日
 ㈱GYAOは2014年10月27日、ヤフー㈱と協力して運営する無料映像配信サービス「GYAO!」のブランドを大幅に刷新した。サービス名称は、「GyaO!」から大文字の「GYAO!」に変更し、ロゴも一新。ユーザーインターフェースも改良した。「良質な作品を、無料で提供する」という価値を、“PLAY FREE”という新たなタグラインに込め、TVCMを中心としたプロモーションを展開した。「GYAO!」強化の取り組みの背景には、ビデオ広告市場の拡大がある。2014年のビデオ広告市場は、前年比約2倍の300億円規模に拡大し、2017年には880億円に到達する(サイバーエージェント14年10月発表)とも言われるなか、Yahoo!JAPANおよびGYAOが、市場拡大を牽引するのが大きな狙いだ。また2014年は、1月より日本テレビ、10月よりTBSとの無料見逃し配信、さらに日本テレビとは7月ビデオ広告の配信も始めるなどエポックメーキングな年でもあった。そんなGYAOの取り組みと今後の展望について、ヤフーではビデオ広告営業責任者を務めるGYAO半田英智取締役 営業本部長に話を聞いた─(2014年末某日)。※取材・文/構成:小川 航



㈱GYAO半田英智取締役
──2014年10月末に「GYAO!」のブランドを大幅に刷新しました。この狙いについて聞かせてください。

半田 今回我々が一番打ち出したい点は、無料にも関わらず有料課金のサービスと遜色ない映像配信サービスを行っている、ということです。この点を再認識していただきたく、新たなタグライン“PLAY FREE”に思いを込めました。

──リニューアル後の反応は。

半田 お陰様で反応はとても良いです。特にCMクリエイティブの反応が非常に良く、初速で再生数もユニークユーザー数も20%程増加しました。また10代・20代の若年層が増えたことで、ユーザー属性の若返りが図れています。初速の総括としては、想像以上に成功しています。11月24日にCMをいったん終了してからも、サービスの理解を得られたことで、変わらず順調に推移しています。

──今回のリニューアルとヤフーの戦略との関連性は。 

半田 ヤフーの全体戦略の中で大きな柱の一つとして、ビデオ広告があげられています。マーケットにおいてビデオ広告の在庫量を確保することが課題になります。そこでヤフーは圧倒的な在庫量を得るために、事業の中核となるGYAOの強化を図っています。


 売上目標200億円間近


──GYAOは2011年度の時点で、数年で年間売上200億円を目標に掲げましたが、この目標に対する進捗は。

半田 想定より早いペースで成長し、売上目標200億円はほぼ見えてきました。手が届いていると言ってもおかしくない状況です。

──GYAO全体の売上をセグメント別でみた収益の割合は。

半田 当初、広告事業と課金事業の収益の割合は6対4でした。それがヤフーブックストアや占いをはじめ7つの課金サービスが増えたことで、課金が広告を逆転し、若干ですが多くなっています。その一方でビデオ広告が順調に成長し、2014年度第1四半期から第3四半期で3倍に伸び、もう一度5分5分に戻るのも早そうです。

──現在、「GYAO!」のユニークユーザー数はどの程度ですか。

半田 「GYAO!」のみのユニークユーザー数は月間2200万強程度、視聴数は月間2億回以上です。デバイスの割合は、PCとスマートフォン半々ぐらいです。当社が自負しているのは、スマートデバイス各種の普及により、世の中のほとんどのサービスでPCからの利用が減少するなか、「GYAO!」は減少しておらず、かつ今回のブランド刷新によってPCすらも伸ばせていることです。ネット環境が整い、ヤフーに来るネットユーザーの動画自体の利用が増え、ヤフーのトップ画面からの流入も増えているとみられます。さらにスマートフォンにおいても、「GYAO!」アプリダウンロード数が1500万DLを突破し、ヤフーサービスのアプリ中3番目のダウンロード数で大変順調です。PCユーザーを減らさず伸ばしながらも、スマートフォンでさらに積み上げることに成功しています。


 “見逃し配信”巡る動き活発化


──2014年は日本テレビ、TBSと無料見逃し配信という大きなトピックスがありましたね。

半田 我々としては、足かけ5年で念願がようやく叶ったという感じです。2013年の夏頃から、地方局を含む放送局様から、動画配信やビデオ広告の現状について尋ねられることが私個人として増えだしました。当社としては、放送局様に株主として入っていただいているからには、いずれはTV番組をネット配信したいという思いが強くありました。そして実際に配信を始めたところ、当初目論んでいたとおり、我々のサービスのなかでもTV番組コンテンツは圧倒的に強く、他のコンテンツに比べて雲泥の差があります。日本テレビ様の見逃し配信は始めて1年になりますが、クールごとに再生数が上がっている状態です。ドラマだけでなく、バラエティ番組も非常によく見られています。ビデオリサーチの調べによると、録画視聴ではバラエティはあまり録画されない傾向にありますが、ライトに視聴できるネット配信においてはTVのバラエティー番組コンテンツは圧倒的にパワーを発揮しています。

──そして日本テレビとの無料見逃し配信では、7月クールからビデオ広告をスタートしました。

半田 おそらくニーズがあったということだと思います。再生回数が無ければ、広告ビジネスは成立しません。結果的に当社の想像のみならず、おそらく日本テレビ様の想像も超えて相当回数見られたことで、ビジネスとしてのトライアルをご判断されたのだと思います。TBS様の無料見逃し配信も、当初の日本テレビ様のようにどのくらい見られるのかなどの諸々を検証されているのだと思います。

──GYAOとしての手応えは。

半田 日本テレビ様の無料見逃し配信は、14年1月の開始当初、日本テレビサイト、You Tube、ドガッチ、GYAO!の4サービスからスタートしました。それが4月以降、日本テレビ、GYAO!の2つになった。このご判断がどういう理由かは分かりませんが、「GYAO!」による再生回数の貢献度が高く、放送局様とご一緒するうえで放送業界を理解した様々な対応ができたからなのだろうと思っています。

 再生回数の面では、You Tubeと「GYAO!」の性格の違いによるものが大きいと思っています。You Tubeは指名検索で映像視聴します。したがって具体的な興味を持って検索しないと、映像コンテンツには辿り着かない仕組みになっている。一方「GYAO!」は、何の気なしにサイトに訪れた方に、サービス側からコンテンツをお薦めし、気づきを与え、興味を醸成することができる。ひいてはヤフーが“気づき与えメディア”だと言えます。知らなかった方に対して知らせることが、ヤフーや「GYAO!」にはできる。これは編集力によるもので、You Tubeには機械的なレコメンドしか存在しません。「GYAO!」は、“見逃し配信やっていますよ”と我々側からプッシュすることができる。知っている方しか辿り着かないYou Tubeに対して、知らない方に見せることができる「GYAO!」。これが再生回数の大きな違いになったと思います。(つづく)

※全文は、月刊文化通信ジャーナル15年1月号に掲載
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半田 英智(はんだ ひでとも)氏
 平成12年4月 ㈱USEN入社 平成21年10月 ㈱GyaO入社(USENから転籍) 平成23年4月 同社営業2部部長 平成24年4月 同社パートナー営業部 部長 平成24年5月 同社CSO(Chief Sales Officer) 平成24年6月 同社取締役(現任) 平成26年4月 同社営業本部長(現任) 平成26年4月 ヤフー㈱マーケティングソリューションカンパニー ビデオ広告営業責任者(現任)

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