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『キセキ』の制作経緯、小池賢太郎プロデューサーに聞く

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『キセキ』の制作経緯、小池賢太郎プロデューサーに聞く

2017年02月16日

『キセキーあの日のソビトー』.jpg
(c)2017「キセキ -あの日のソビト-」製作委員会



 東映配給『キセキ-あの日のソビト-』(製作幹事:ハピネット・ジョーカーフィルムズ)が大ヒット公開中だ。人気ボーカルグループ「GReeeeN」の名曲「キセキ」の誕生にまつわる実話をもとに映画化し、157館でのスタートながら、公開から16日間で興収9億1千万円を突破した。同作の制作の経緯について、プロデューサーの小池賢太郎氏(ジョーカーフィルムズ株式会社 CEO)に聞いた――。




映画のまま


――この映画の企画の発端を伺えますか。

小池 音楽を軸とした映画をやりたいと考えていた時に、「GReeeeN」のプロデューサーであるJINさんとお話させてもらう機会があり、それが始まりです。ご存じの通り、GReeeeNは顔を出さないアーティストとして有名です。にもかかわらず、歌が大ヒットしている。純粋に、歌が皆に届いているんです。どうすればそんな楽曲が誕生するのか。JINさんにその話を聞くと、非常に面白いし、共感できる。彼らの育った環境や、歌への向き合い方も興味深いエピソードだと感じ、すぐに映画化したいと考えました。歌が届くのであれば、その本質的な部分が同じであれば、映画も皆に届くのではないか?と感じたからです。

――映画の中で、ジンとヒデが住む家がすごく庶民的で「ああ、この人たちも一般市民なんだな」と感じました。

小池 実際にお宅にお邪魔して、できるだけ雰囲気を近くできるように心掛けました。劇中でジンとヒデの机が背中を向き合っていますが、実際も近いイメージです。

――小林薫さんが演じる父親は非常に厳格で、たびたびジンに鉄拳が飛んでいましたが、あれは本当なんですか。


小池 あのお父さんの厳しさも本物だと思いました。実際にお会いしましたが、本当に緊張しました(苦笑)。「まあ崩して(楽にして)」とおっしゃるのですが、なかなかそういうわけには…という感じでした。今の時代、優しい父親が多いと思うので、ちょっとウソ臭く感じられてしまうかなと心配しましたが、事実に忠実に描いています。「成敗してやる!」と怒鳴るシーンも本当の話として聞きました。お母さんも明るい方で、お父さんの考えを絶対としながらも、子どもへの思いやり、深い愛情を欠かさない。映画のままなんです。脚本は、JINさん、HIDEさんにも相談し、監督、脚本家と入念に打ち合わせしながら作り上げていきましたから。



現場から「いけますよ」

――兼重淳監督は、小池さんがプロデュースされた是枝裕和監督の『奇跡』で助監督を務めていた方ですよね。

小池 この映画はストレートな青春ストーリーだけに、役者の演出が難しくなります。彼らの機微や雰囲気が重要になるので、それを自然に撮ることのできる兼重監督にお願いしました。楽しいところは楽しく切り取り、父親の厳しいところは厳しく切り取れる。台詞を言わなくても、顔でわかるような役者の演技を自然に引き出してくれています。すべてが、自然なんです。本当に、素晴らしいと思いました。

――キャスティングは難しかったのではないですか。やはり、GReeeeNのメンバーと顔の似ていることを条件に俳優を選んだのでしょうか。

小池 顔よりも、雰囲気を重視しました。実際にメンバーともお会いして、それぞれにお話を伺いながら各メンバーの雰囲気や性格を把握していき、内からも外からも情報を頂き、それをキャスティングに生かしています。本物が顔を出していない分、役者をGReeeeNとして、はじめて見てもらえる利点はアドバンテージとしてあるのですが、ファンそれぞれの方に、GReeeeNのイメージがあるので、それを崩さないようにするのが難しかったです。例えば、ジン役の松坂桃李さんと接してみると、本当に優しく器が大きいと感じる方で、メンバーを裏で支えている劇中のジンのイメージに合っています。菅田さんもリーダー的な性格で芯の強いところやまわりを思う優しいところがヒデさんと似ています。あと、背の高さのバランスも気をつけましたね。

――映画の派生ユニット「グリーンボーイズ」(菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮)は劇場公開前から話題になっていましたね。


小池
 GReeeeN役の4人は、歌のシーンは当初(本物の)吹き替えを予定していたのです。でも、歌ってもらうとあまりに上手くて、現場から「いけますよ」と。彼らがしっかりボイストレーニングをして頑張ってくれて、しかもGReeeeNさながらに楽しそうに歌ってくれる。より、リアルなシーンを創造できたと思います。



絶対に「キセキ」でいきたかった

――GReeeeNの数ある楽曲のなかでも、「キセキ」の誕生秘話を主軸にした理由は何ですか。

小池 音楽は、人を幸せにしたり、その時の気持ちを良い方に変えてくれたりします。そうやって最も音楽を多くの人に伝えることができた数ある楽曲の中で代表的な曲が「キセキ」だと思っています。誰が聴いても前向きになれるし、夢に向かうひとの背中を思い切り押してくれる。国民的に絶大な人気のある曲です。私としては絶対に「キセキ」でいきたいと思っていました。今思えば、幸運にもJINさんにお話を伺えた「奇跡」、素晴らしい俳優に出会えた「奇跡」、そして、GReeeeNが歩んできた「軌跡」であり、起こした奇跡、そして今も輝く輝石、本当に今回のテーマに合っていたと思います。映画がヒットしたキセキもですが。(笑)

――口コミでも広がっています。これだけこの作品は多くの人から支持された理由をどのように考えますか。

小池 すでに大ヒットしている小説やコミックの映画化が多い中で、オリジナルの作品を当てることは本当に難しいのです。でも、今回は色々な要素がうまくかみ合ったと思います。GReeeeNの謎めいたストーリーへの興味を喚起できたこと、素晴らしい俳優が出演してくれたこと。そして、歌の力が大きかったです。世の中にはたくさん良い映画がありますが、それを人々に届けるのは本当に難しい。今回は、歌が映画の内容を皆さんに伝えてくれたのではないかと思います。グリーンボーイズが公開の前に大きな話題となり、若い人を劇場に誘導するリーダーになってくれたことも大きかったと思います。
 でも本当に大きいのは、この映画に係わるみんなで、同じ気持ちで、楽しく宣伝チーム含めての映画製作が出来たことかなと思います。

――いつのあたりでヒットの手応えを感じましたか。すでに公開前からそのような予感はあったと思うのですが。

小池 いえいえ(苦笑)。確かにすごく話題になっている感触はありましたが、それが逆にプレッシャーで(笑)。音楽は話題になっているのに、映画が続かなかったらどうしようと、明けてみるまではわからなかったです。

――作品評も高いですよね。

小池 GReeeeNのファンの方からも好意的に受け止められていることは嬉しいですね。若い人にとってはGReeeeNの知られざるストーリーとして楽しめ、年配の方も、厳格な父親とその息子たちという、昔ながらの家族の物語として感動できるストーリーなのだと思います。映画も彼らの音楽のように、より多くの人に届いたらいいなと思っています。 (了)



取材・文/構成 : 平池由典


(c)2017「キセキ -あの日のソビト-」製作委員会

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