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KADOKAWA 堀内大示執行役員映像事業局長“方向性が定まってきたと実感”

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KADOKAWA 堀内大示執行役員映像事業局長“方向性が定まってきたと実感”

2018年03月31日

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 KADOKAWAは年間興収が増加基調にあり、2017年は5年ぶりに50億円を超えた。2月末のラインナップ発表会と相前後して公開した2作、日中合作映画『空海 ―KU‒KAI― 美しき王妃の謎』と劇場版アニメ『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』が、いずれも好調に推移し、昨年からの勢いは2018年もつづいている。

 2月に発表した2018年から2019年にかけてのラインナップは、例年どおり邦画、洋画、アニメの各領域にわたって、規模感は大中小さまざまな作品が並ぶ。

 映像事業局長として、KADOKAWAの映像事業を束ねるのが堀内大示執行役員(=写真)。編集者として出版を知り尽くした堀内氏が、映像部門を統括する立場に就いて、この4月で4年目に入る。過去3年の経験、実績を踏まえ、今年のラインナップに何を思うのか。





昨年は全社的案件で大成果


──まず2017年度を振り返ります。どんな1年でしたか。

堀内 私が映像事業局長(15年4月就任)になって、3年目にしてようやく方向性が定まってきたと実感できる1年でした。邦画、洋画、アニメそれぞれで確かな足跡を残すことができました。

──具体的には。

堀内 邦画のトピックは2つ。1つ目は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。自社の大ベストセラー小説を自社が主幹事で映画化し、松竹さんと共同配給のもと全国300館以上で公開して興収10億円を超えることができました(最終興収10億9千万円)。もう1つが日中合作の『空海 ―KU-KAI― 美しき王妃の謎』。足掛け10年の企画でしたが、ここ2、3年で急展開して、中国は昨年12月に公開しスマッシュヒット。日本でも東宝さんとの共同配給で今年2月に公開し、現在まで好調な興行になっています。

──その『空海』の見通しは。

堀内 2週目土日(3月3、4日)が興収1億7千万円で前週比61%。3週目(3月10、11日)が1億1千万円で64%。これらの週末成績は1週目(2月24、25日で2億8千万円)に続き「合格」の水準ですし、平日の稼働は想像以上です。2月24日~3月11日の16日間で11億6千万円まで伸びています(3月18日現在、13億5千万円)。高年齢層の支持が強いのが特徴で、その方々が何度でも楽しめる奥行きを持った作品です。一方で、若年層にも関心が広がっています。若者に響いた要素の1つはRADWIMPSの主題歌と挿入歌。それに高橋一生さんら声優キャストの起用も若者に訴求する材料になっています。日中合作のこの映画は日本では「邦画」として全編日本語で公開していますが、中国では「中国映画」の扱いで全編が中国語でした。この中国語版に日本語字幕をつけて「インターナショナル版」として5週目の3月24日から上映開始します。チェン・カイコー監督や、白楽天を演じたホアン・シュアンのファンたちからインターナショナル版の上映を求める声があり、それに応えた格好です。『空海』の日本公開においては、共同配給の東宝さんに営業、宣伝の両面で大きなパワーを頂戴し、とても感謝しています。最終興収はまず15億円を確実に超えた上で、20億円まで視野に入れていきます。

──洋画とアニメはどうでしょうか。

堀内 洋画では、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』が日本の小説を原作にした超大作であり、直球の中身。2時間40分余りの長尺ながら、興収8億4千万円というしっかりとした興行を展開できました。アニメは「角川ANIMATION」ブランドを昨年立ち上げて、『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』(7億円)、『プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』(2億7千万円)などが大成功しました。角川ANIMATIONでは、まずTVアニメをいろいろな手法で劇場版にしていく。1年目にしてそれが確立できました。

 こうして改めて昨年度を振り返ると、全社で取り組んだ意義がダブルで見える作品が相次ぎました。『沈黙』は他社原作でしたが、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や『空海』、各アニメ作品は、KADOKAWAから出ている原作の販売が映画公開を機に急伸しましたし、アニメのパッケージ、マーチャンダイジングなども大きく動きました。KADOKAWAとして、1つのIPを活用してどのように収益をあげていくのか。昨年公開した各作品を通して、そのビジネスモデルが確立されつつあると感じます。また、KADOKAWAのIP戦略を映像や出版など各業界に提示できたのではないでしょうか。外から見て当社に対する企画提案の仕方が分かりやすくなったでしょうし、社内でも一つの流れができて、編集部と映像の担当者が同じテーブルにつくことも以前よりスムーズになりました。


『ビブリア』10億円以上狙う

──今年のラインナップについて邦画、洋画、アニメ、ライブラリーの区分ごとにポイントとなる作品を聞いていきます。まず邦画で特に力を入れる作品はどのあたりでしょうか。

堀内 一番の柱は、『ビブリア古書堂の事件手帖』です。原作の小説は、「ビブリア古書堂」という名前の古書店に持ち込まれた古書に詰まった謎を店主と店員が解き明かすミステリーです。5年前にドラマ化されましたが、満を持して映画化します。当社の中では、昨年の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』と同じ線路に乗った作品です。

──というのは。

堀内 自社の大ベストセラー(シリーズ累計640万部突破)の原作を映画化し、興収10億円以上を目指していくという意味です。ホームズとワトソンの関係になる主要登場人物2人は、黒木華さんと野村周平さん。このキャスティングは原作ファンからも絶賛されています。監督は三島有紀子さん。主題歌も大物の方に決まっており、大きな話題になるのは必至です。20世紀フォックス映画さんが営業、KADOKAWAが宣伝の役割分担で共同配給します。

──演劇賞総なめの伝説的舞台を映画化した『焼肉ドラゴン』は、早くも話題になっています。こちらはファントム・フィルムとの共同配給で、KADOKAWAは営業を担当します。

堀内 小さな焼肉店「焼肉ドラゴン」を舞台に、故郷を奪われた6人家族がたくましく生きる人間ドラマを、原作の鄭義信さん自身が初監督します。3姉妹を演じる真木よう子さん、井上真央さん、桜庭ななみさん、次女の夫を演じる大泉洋さん、皆さんが普段とはまったく別の顔を見せています。それから家族の父母役、キム・サンホさん、イ・ジョンウンさんが圧倒的な存在感を発揮するのをはじめ、韓国人キャストがすばらしい。笑って泣いて、大きな感動がある。映画賞に大きく絡んでいく作品になると思います。


続きは、文化通信ジャーナル2018年4月号に掲載。

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