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トップインタビュー:豊島雅郎 アスミック・エース エンタテインメント(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:豊島雅郎 アスミック・エース エンタテインメント(株)代表取締役社長

2009年07月28日
インディペンデントの原点に立ち返る

拡大戦略から“小判鮫商法”へ!?“ゲリラ部隊”を発火点に
他社と提携強化、映像業界のハブとして存在意義示せるか

 アスミック・エース エンタテインメント(アスミックAE)は今年4月、急激な業界環境の変化に対応するため、本格的な自己改革と自らの革新の推進を目指し、大幅な経営体制改革を行った。
 5名の新しい執行役員を選任し、昨年6月1日付で発足させた役割別組織(6グループ(室)の事業部門とコーポレート部門)から事業別組織に変更。映画と映像コンテンツ事業を一元化し、より一層のタイトル別収益目標の明確化と、共有・意思決定の迅速化・効率的人材配置を目指している。
 4月8日には約2年ぶりのラインナップ発表会を開催。創業25周年を迎え、豊島社長は「社員一同、初心に返って、創業ゼロ年、新しい形に生まれ変わり、新たな一歩を踏み出したい!」と宣言した。6月30日には株主総会を開催。より明確なメッセージ・方針を打ち出していく役員人事も行われる可能性があるという。
 豊島カラーをより鮮明にした新組織・人事の狙いや、今後の事業展開、戦略などについて聞いた―。


【豊島雅郎(てしま・まさお)プロフィール】
1963年生まれ、東京都出身。86年、新卒一期生としてアスミック(現アスミック・エース エンタテインメント)に入社。06年より代表取締役社長に就任。主な洋画担当作品にダニー・ボイル監督作『トレインスポッティング』(96)、テリー・ツワイゴフ監督作『ゴーストワールド』(01)等。主な製作作品に曽利文彦監督作『ピンポン』(02)、金子文紀監督作『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03)、宮藤官九郎監督作『真夜中の弥次さん喜多さん』(05)、森田芳光監督作『間宮兄弟』(06)、高田雅博監督作『ハチミツとクローバー』(06)、蜷川実花監督作『さくらん』(07)、長崎俊一監督作『西の魔女が死んだ』(08)、英勉監督作『ハンサム★スーツ』(08)森淳一監督作『重力ピエロ』等がある。
“DVDショック”で愕然

本誌 まず、4月1日付で発表した新組織・人事について、改めてその狙いなどを聞かせて下さい。

豊島 やはり映画もより作ることに集中し、映画をディストリビューションすることも頑張りますが、もう一つの「映像コンテンツ」、映画というプラットホームに頼らない映像ビジネスというのも、より加速してやっていきたいです。

本誌 洋画を扱いつつ、邦画製作とどうバランスを取って、非映画コンテンツに注力していくか。豊島社長体制を、改めて固めたということになりますか。

豊島 そうですね。原(正人・特別顧問)さん、椎名(保・取締役会長)さんからの体制を受け継ぐような形で06年からやってきたのですが、一つはビジネス・モデルが急速に変化したことが大きいです。アスミックAEは、アスミックとエース・ピクチャーズが98年合併した以降、ビデオグラムのマーケットに支えられていた事業運営というのを正直していたのです。それが去年春頃から、もう雪崩を打ったように崩れ、弊社的にはリーマン・ショックならぬ“DVDショック”でした。弊社は4月からのスタートで3月決算ですので、4―9月ぐらいの数字を見て愕然としました。

本誌 予想していた以上だったということですか。

豊島 これは、経営者として読みが甘いと言われてしまえば、もうそれまでなのですが、私が読んでいた70~80%にはなってしまっています。利益率の商売ですので、ある損益分岐点を超えて、しかも上に行けば行くほど利益率が高くなりますから、損益分岐点を超えていく作品が本当に少なくなってしまった。プラスに振れる数十本ある作品の中の、一握りの儲けてくれる作品がマイナスをカバーしてくれていたんですが、その一握りのカバーしてくれる作品というのが損益分岐点をちょっと超えたぐらいで止まってしまって、そこから先、利益率が良くてかなり稼いでくれるというのが、DVDにおいてはなくなってしまったんです。これはうちだけではなくて、業界全体そうでしょう。これはメジャーさんであっても何か違う方策を打たないと生き残っていけないというのは、ビデオグラムの世界からまずは来たなと。
 ただし映画興行でも、年間興収2千億円はなんとなく微減だけど維持はできていると、そこで「まだ大丈夫じゃないかな」と思っていたら、正直特にインディペンデントの我々は、ちょっと安穏とはしていられないなという気持ちが物凄くしています。よく分析すると、やっぱり一極集中で、どうしてもシネコン・システムが当たる作品はより上映し、当たらない作品はすぐに閉じていくという仕組みが主戦場になっていますので、そういう意味では、より頑張らなくてはと。月並みな表現になってしまうのですが…。

本誌 よりインディペンデントにとって、興行面・製作面でマイナス要素が大きくなってしまったというところがありますよね。

豊島 これは社員にも話をしているんですが、原点に立ち返ってインディペンデントの、今までなかったものを、今までなかったやり方で世の中にアプローチをしていくことが弊社の会社が生き残っていくために必要で、インディペンデントの宿命でもある。常に時代を見すえながら違うやり方、新しいやり方で攻めていかないと。それは映画におけるマーケティングの手法もそうですし、映画を作るということでも、今までなかったタイプの映画を作るとか、映像、ドラマを作るとか、それしかないなという風に思っています。多少マーケットの公開本数が落ち着いてきた今ここが正念場で、生き残っていければ今よりはいいビジネス展開も出来るかなというのを物凄く感じています。
 興行というプラットホームにおいては、今よりはやりやすくなるのではないでしょうか。ただ、DVDとか二次利用の部分からの収入というのは、落ちたままで、ここから伸びてくるというのは、特にパッケージにおいては、なくなりはしないですけど、以前のような好景気にはもうならないかなと思います。ブルーレイが出て来ていますが、DVDの時のような消費者の需要には至らないんじゃないでしょうかね。



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