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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.58】
「けいおん」の衝撃と11年興収トップ10

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.58】
「けいおん」の衝撃と11年興収トップ10

2011年12月06日

 正月興行戦線異状あり。邦画アニメの「映画 けいおん!」が、何とスピルバーグ監督初の3D=CGアニメ映画「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」を上回るスタートを見せたのである。

 「映画 けいおん!」は、12月3、4日の2日間で全国動員23万7817人・興収3億1631万0450円(137館)。「タンタンの冒険~」は同じく、3、4日の2日間で14万8697人・2億1950万8750円だった(895スクリーン)だった。ちなみに、12月1日公開の「タンタンの冒険~」は、4日までの4日間では、22万6404人・3億1929万3550円を記録した。

 日本アニメの強さを象徴するようなスタートであったと思う。とともに、日本におけるCGアニメの浸透の難しさを、改めて認識させた。ただ、「映画 けいおん!」は公開3日目である平日の12月5日の成績は、やはりというか、あまり伸びていないので、この最初の2日間でかなり(動員が)かぶってきたことが考えられる。コアな人気を誇るアニメだとよくあるパターンであり、2週目の土日以降、今後の推移が注目である。

 「タンタンの冒険~」は、さすがスピルバーグと言われるだけのことはある素晴らしい出来栄えの作品だけに、中身の面白さの浸透が今後の鍵になろう。知名度が低い作品なのだから、当然それが出足に現れる。さらに、CGアニメという枠を、マイナス要素としてとらえる人が多い国柄だから、その枠を中身そのものが破ってくれるのかどうか。その推移にも注目したいところだ。

  さて、以下の数字を見ていただこう。

1、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」=96億円
2、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」=88億円
3、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」=68億円
4、「コクリコ坂から」=45億円
5、「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」=42億5千万円
6、「劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ」=42億円(2本計、推定)
7、「ステキな金縛り」=41~42億円(推定)
8、「SPACE BATLLESHIP ヤマト」=41億円
9、「GANTZ」=34億5千万円
10、「SP 革命篇」=33億9千万円

 邦画と洋画を合わせた今年の作品別興収のトップテンである。最終的に、5~8位あたりは変動があるとは思うが、100億円超えの作品が3本あった昨年と比較して、厳しい結果になっているのは一目瞭然と言えよう。顕著なのが、3D映画(版)の低迷だろう。いや、低迷というより、元に戻ったと言った方がいいかもしれない。3Dの恩恵分の興収増が小さくなり、作品のストレートな興行結果がより露わになったのである。

 邦画は、大型企画が少なかったために、こうした結果を招いた。東宝配給作品のみであるが、相変わらずテレビ局主導の作品が多い。50億円突破が1本もなかったことより、テレビ局製作作品の総体的な興行の地盤沈下が気になる。

 ランキング外では、邦画の「モテキ」(22億円)、「八日目の蝉」(12億円)、「探偵はBARにいる」(12億円)などの健闘ぶりが目立った。東宝配給の「告白」「悪人」が突出した昨年とは趣が違い、松竹(日活)、東映の製作、配給作品に少しいい芽が出てきたことは評価していいと思う。

(大高宏雄)

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