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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.109】
2012年、邦画定番とアニメ新展開

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.109】
2012年、邦画定番とアニメ新展開

2012年12月18日
 「ONE PIECE FILM Z」が、爆発的な大ヒットである。12月15、16日の2日間では、全国動員114万0081人・興収13億7205万4050円を記録した。これは、今年公開された作品では、最高のオープニング(土日成績)である。

 前作「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(2009年12月12日公開、最終48億円)との比較では、動員が139・1%、興収が132・0%だった。ちなみに、前作のスクリーン数は188で、今回は300。この違いが、明らかに成績に出ており、興行のスケールが一段と大きくなったのである。

 さて、ここで今年の邦画の作品別興収トップテンを見てみよう。「ONE PIECE~」の爆発力を象徴するように、アニメの興行がこれまで以上に膨らんでいるのが、一目瞭然となっている。

(1)「BRAVE HEARTS 海猿」=73億3千万円
(2)「テルマエ・ロマエ」=59億8千万円
(3)「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」=59億5千万円
(4)「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」=52~55億円
(5)「おおかみこどもの雨と雪」=42億2千万円
(6)「映画ドラえもん のび太と奇跡の島~アニマル・アドベンチャー~」=36億2千万円
(7)「劇場版ポケットモンスター ベストウィッシュ キュレムVS聖剣士 ケルディオ」他=36億1千万円
(8)「ALWAYS 三丁目の夕日'64」=34億4千万円
(9)「名探偵コナン 11人目のストライカー」=32億9千万円
(10)「映画 怪物くん」=31億3千万円

(数字は一部推定)


 10本のなかに、何とアニメが5本入っている。しかも、すべて30億円を超える。年間を通して、30億円超えのアニメが5本となるのは2010年に次ぐが、スタジオジブリの作品がない年に、5本も登場したのは、ここ10年では今年のみ。定番アニメの安定ぶり含め、今年はいかにアニメが健闘したかかがわかる。

 フジテレビ製作3本の上位独占と、冒頭の「ONE PIECE~」も入れたアニメの多様な新展開が、今年の映画興行を象徴する。そこに通底しているのが、邦画定番の強さと、監督バリューが大きいアニメへの支持の増大である。

 これを、見知っているもの、大きな話題性のなか、絶えず興味を抱いてきたものなどへの関心の肥大化と言い換えていいかもしれない。それは、全くの新規性とは、微妙な齟齬を見せる。否、新規性への柔らかな拒否とも言えようか。

 洋画もシリーズものが、興収上位を多く占めたことを考え合わせるなら、この時代における映画ヒットの構造が、ここにはありありと見える。そうであるなら、若者中心に、見知っているものの裾野の広さが半端ではないアニメには、さらに関心度が増していくことが考えられる。

(大高宏雄)

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