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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.162】
今年の映画興行、“貯金”切り崩しの定番

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.162】
今年の映画興行、“貯金”切り崩しの定番

2014年10月10日

 10月に入り、そろそろ1年を通した映画界の動向の話が、取りざたされるようになってきた。今年の興行実績は、昨年を上回るのか。上回るのなら、どの程度なのか。映画界では、重要なことである。今年の内実を簡単にいえば、前半の相当分の “貯金” (前年と比較した興収上乗せ分)が、後半で徐々に切り崩されて、その切り崩しが現在も進行中だということである。

 この言い回しは、かつてもしたような気がする。前半の貯金が、年末が近づくにつれてなくなっていき、1年を通すと、いつもの年の興収近くに収まるという “定番” である。なぜ、そうなるのか。いいときもあれば、悪いときもあるのが映画興行の常とはいえ、年間を通したその “バランス感覚” が、ある意味 “見事” なのだ。

 その詮索はともかくとして、9月の各シネコンの成績にバラつきがあったことを、まず押さえておきたい。9月のTOHOシネマズを含む東宝グループ全体では(609スクリーン)、興収41億1098万9090円で、これは前年9月の110.2%だった。1~9月累計では、416億1201万9883円で、前年対比112.8%である。ただ、これが全体の興行を意味しない。

 大いに気になったのが、川崎のチネチッタだ。9月興収が9856万円で、前年9月対比で82.0%だった。18%も落ちた理由は、何だったのか。川崎地区には現在、シネコン3サイトが比較的近隣にあり、サイトにより上映作品はまちまちの場合もあるので、これは編成の違いによるものかもしれない。ちなみに、チネチッタの1~9月累計は10億6490万円で、前年対比106.7%だった。これは、東宝グループ全体と比較して、6%以上も差がある。

 日本一のシネコンである新宿ピカデリーは、9月興収では2億6980万0400円を記録している。これは、前年9月対比で103.0%である。1~9月累計は出ていない。ただ、都内近郊にあるシネコンでは、9月は前年の80%ほどで、1~9月累計ではついに前年並みになったというデータが出ていることも付け加えておく。

 こうもバラつきがあると、なかなか全体像がつかみにくいというのが実情である。おそらく、年間を通して、数%あたりの伸びが読めるが、これとて10、11月で鈍化の度合いが強まれば、さきのシネコンのように、前年対比の%はさらに下がることも考えられる。

 これらに関連して、消費税の増税分を考えないといけない(例外を除いて、消費税分は興収に入っている)。単純に言って、興収が前年並みということは、動員では下がっているということだ。結果、年間を通して数%の興収の上昇だとして、5%あたりを切れば、動員的な伸びはそれほどでもないということになる。大雑把ではあるが、これが現時点での今年の映画興行における数字の推移である。

(大高宏雄)

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