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『シロナガスクジラ~』シンポに坂口監督ら

【FREE】『シロナガスクジラ~』シンポに坂口監督ら

2015年09月17日
『シロナガスクジラに捧げるバレエ』シンポジウム 『シロナガスクジラに捧げるバレエ』シンポジウム

 大震災後の世界を生き抜く少女2人を描いたサイレント映画『シロナガスクジラに捧げるバレエ』の試写会が15日夜に渋谷区・青山学院大学で実施された。上映後には、「東日本大震災から5年目、見えてきた課題、壁と落とし穴!」と銘打った震災に関するシンポジウムが開催され、監督の坂口香津美、新倉修氏(弁護士、青山学院大学法務研究科教授)、炭谷宇紀子氏(日本ユネスコ協会連盟 ユネスコ運動推進委員)、新倉ゼミの学生が登壇し、それぞれ次の通りコメントした。

坂口監督 6作目の映画作品。新倉氏は拙作『カタルシス』、炭谷氏は『夏の祈り』よりご支援を受けている。死者というのは自分の中に居て、心の中には回廊のようなものがある。その回廊を渡れば、会いに行くこともできるということを本作で描いた。サイレントということもあり、様々な捉え方のできる作品になっている。それぞれの解釈の仕方で何かを想ってもらえると嬉しい。

新倉氏 われわれはさきの大震災を経験しているので、震災というテーマを映像化しにくい部分がある。ほとんどの人が本当の津波をテレビやユーチューブなどで見ている。車、船、ガスタンク等が流されていく生の映像だ。そこにはフィクションでは作れないリアルさがある。ではその時、どう震災を受け止め、映像化するのかが求められる。本作は坂口監督らしいひらめきが随所にみられ、その映像イメージが心に焼きついている。

炭谷氏 さきの大震災以後、1万8千人あまりの死者、20万人以上が以前の日常生活を失ったという現実がある。ユネスコではひとりひとり、求めるものが違い、それらに耳を傾けるという活動を行っているが、現実はけして明るいものではない。本作のように親を失った子供たちが多くいる。彼らに、「夢は叶う」ということを心のケアを通じて伝え続けなければならない。本作では少女2人が、かつて幸福だった時間に戻ろうとする。その幸福の断片をひとつひとつすくい上げる瞬間に心を打たれた。

 配給はスーパーサウルス。9月19日よりユーロスペースで公開。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。