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『過ぐる日~』鶴岡、黒沢清両監督がトーク

【FREE】『過ぐる日~』鶴岡、黒沢清両監督がトーク

2015年10月09日
トークを展開する鶴岡(左)、黒沢(右)の両監督 トークを展開する鶴岡(左)、黒沢(右)の両監督

 マジックアワー配給『過ぐる日のやまねこ』のトークイベントが7日夜にユーロスペースで実施され、鶴岡慧子監督、ゲストとして最新作『岸辺の旅』が公開中の黒沢清監督が登壇した。

 鶴岡監督の経歴は初長編作品『くじらのまち』が「PFFアワード2012」で最優秀賞を受賞、東京藝術大学大学院時代に黒沢監督に師事、その後PFFスカラシップ作品として、故郷・長野県上田市を舞台に『過ぐる日~』を制作。それぞれに死者を想う男女が出会い、共に寄り添い探す、喪失から再生までを描いた物語。トークの様子は次の通り。

黒沢監督 上田市はどういう場所?

鶴岡監督 いわゆる田園風景よりも、(劇中に登場する)鬱蒼とした森の方が、私にとっての故郷の風景です。よく変なことが起こる場所でした。誰が住んでいるのか分からない家とか(笑)

黒沢監督 ほかには?

鶴岡監督 友人の話では、空き家に「モナリザ」が堂々と飾ってあったとか

黒沢監督 「モナリザ」ですか(笑)。なるほど。2人の過去が徐々に分かるという語り口は、どこまで意図的?

鶴岡監督 プランを練って物語を作ったというよりも、2人の人間が過ごす2~3日間に集中してドラマを作りました

黒沢監督 たった3日の出来事をここまで最初と最後で変化を付けることができるのは上手いと思います。私はひと夏過ごしたくらいの時間だと錯覚しました《‐中略‐》

黒沢監督 「やまねこ」をタイトルに入れたのは、(死者を描いた作品だから)存在しているかしてないか分からない象徴として?

鶴岡監督 カモシカとかイノシシとかにしたくなかったのは、(実際にいるし)もう少し「オバケ感」がある方がいいなと思ったからです。最終的には直感で付けました。

黒沢監督 こんなものは直感ですよね。微妙な感じで良かったと思いますよ。架空の絶対に存在しないものとかではなくて

鶴岡監督 カメラマンが「なんでネコってヤマが付くだけで、お化けっぽくなるんだろうね」と言っていて、「確かに」とその時に思いました。(作品では)死者の残っている気配の様なものを撮りたかったです。

 トーク終了の時間が来ると、黒沢監督は「何とも言葉にしにくい映画ですが、『どう言ったらいいの』と言葉を探すことも、楽しい映画経験だと思います。是非ご覧ください」と締め括った。なお『過ぐる日~』は、ユーロスペースで9日迄上映した後も全国各地で順次公開される。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。