閲覧中のページ:トップ > 音楽ニュース >

秋元順子「日本作詩大賞新人賞」受賞作を歌う

【FREE】秋元順子「日本作詩大賞新人賞」受賞作を歌う

2023年12月06日
「ルージュの蝶々」ジャケット写真 「ルージュの蝶々」ジャケット写真

 歌手の秋元順子が、ニューシングル「ルージュの蝶々」(キングレコード)を12月6日に発売した。

 6月にリリースした「プラトニック」に続き、今年2作目のシングルとなる今作は、日本作詩家協会のコンテスト「第56回日本作詩大賞新人賞」を受賞した2作品を音源化したもの。1471通の応募の中から最優秀新人賞に選ばれた「ルージュの蝶々」(作詩:吉津佳風)、優秀新人賞に選ばれた「東京とんぼ」(作詩:奈緒)が収録されており、共に作曲を浜圭介、編曲を溝渕新一郎が手がけた。

 誰かのもとへと帰る恋人への切ない恋心を“ルージュ”と“蝶”に喩えた官能的な作品「ルージュの蝶々」。そして、都会に生きる自由と孤独の印影を軽快なタッチで描いた「東京とんぼ」の両曲について話を聞いた。

○実らぬ恋の歌、世の中には色んな形の愛がある

▼「ルージュの蝶々」について
 作詩の吉津佳風さん、作曲の浜圭介先生、編曲の溝渕新一郎先生、みなさん私にとっては初めての方々です。

 私はいつも、レコーディングをする上での心構えとして、デモテープでくださったものをそっくり真似して歌うことはせず、洋服でいうと、かっちりと商品として出来上がったオートクチュールではなく、仮縫いの状態でレコーディングに臨みます。

 最初の打ち合わせの時に、編曲の溝渕先生に初めてお目にかかって、洋楽がお好きということでしたので、私がジャズやシャンソン、ラテンを歌っていたことをお話ししました。そしたら、この歌詞を読むとジャズのコードをたくさん入れたりするのは無理だね、というお話しになって。でも雰囲気として、どこかに洋風な感じを散りばめていただければと、打ち合わせをしながら歌ったら、すごく気に入ってくださりました。

 レコーディングを始めるまでは、どこも自分が確定していない状態でスタートしましたが、浜先生が、私の声が好きな声の一人だとおっしゃってくださった。初めて曲を書いてくださる先生から、そういう風に言っていただけることは、歌手にとって、とても嬉しいことです。

 歌詞を読みますと、男性なのにこれだけ女性の心を書かれる佳風先生という方は、どういう方であろうかと、先生に「この歌詞は、先生のご経験からですか?」と伺ったんです。そしたら「僕の憧れです」と。

 歌詞でポイントとなるのは「あなたは知らない ルージュの蝶々」というところです。何を知らないかというと、さよならのつもりで寄り添ったシャツの襟に紅の跡をつけてしまう。そのことを知らない。それが蝶々のように見えたという、すごく素敵でお洒落な表現です。だけど、あなたの「愛の花には とまれない」。実らぬ恋であるということですよね。

 でも、不倫という一言では片付けて欲しくないんです。これを聴いた人が「これは不倫だね」って受け取る方も中にはいると思いますが、そうは受け取らないで欲しい。なぜかというと、世の中には色んな形の愛があるから。どういう風に受け取るかはその人その人です。そのために私はここをサラリと歌っています。

 2番の頭に「あなたの暮らしを 壊すつもりはない」という歌詞があります。こういうセリフを昔言ってしまったことがあるというカラオケファンの方もいると思います。それから、佳風先生のように憧れるというファンの方もいると思うんです。誰が歌うとしても、最初に歌う時は力が入ってしまうものなので、力を抜いて歌って欲しい。思いを乗せて歌ってしまうと、聴く人も重くなってしまうので、私は最後の最後までサラリと歌っています。

○混沌とした時代、人の心を軽やかにするテンポ

▼「東京とんぼ」について
 30年も前の話です。私がある友人のお店を手伝っているときに、男性のお客さまが「北空港」(桂銀淑と浜圭介によるデュエット曲、1987年発売)を一緒に歌ってくれませんかとリクエストされたんです。その時に浜先生の名前を知ったのですが、まさかこんな出会いになるとは思いもしませんでした。

 溝渕先生も素晴らしいアレンジャーで、この曲のテンポ感はアレンジャーのおかげなんです。私は先生に両方A面でいきませんかと言ったのですが、A面はどちらかひとつだと。だから、いずれはこちらをA面にして歌いたい。混沌とした時代には、人の心を軽やかにする、こういうテンポ感のある歌って大事なんです。だから私は必ず一緒に歌っていきたいと思っています。

 作詩の奈緒さんは女性の方で、もともと歌手だった。でも、ご病気をされて歌えなくなったので、最初は入院中に歌はやめて作詩をしようと思って書き続けてきた。その中の1曲を私が歌うことになったということで、すごく喜んでくださった。

 1番の「だれか だれか」、2番の「くるり くるり」、最後の「とんぼ とんぼ」という繰り返しの部分をユニゾンで歌いました。私のアイデアで自分の声を重ねてもらうことをお願いして実現しました。そうすることで深みが出るといいますか、あまりはっきり重ねているわけではないのですが、私の声には倍音があって、倍音が重なることですごくいい雰囲気になるんです。

 1番、2番、そして最後もすべて「この指とまれ」という歌詞で終わっています。これは奈緒さんから聞いたわけではなく、私が思っていることですが、東京へ出てきて何年か住んだ人が、もう故郷へ帰ろうかなという気持ちになった時に、いや、この街にまだ居たいから誰か私のこの指にとまって、と呼びかけているような感じにもとれるんです。

 歌詞では東京のことを「都会(まち)」と呼んでいます。これがすっごく好き。私は東京生まれ東京育ち、お祭り大好きっていう人間ですので、この使い方がとっても気に入っています。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。