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実験的映画『ポール・ヴァーホーヴェン/トリック』が面白い (vol.110)

平池記者の「競馬ときどき映画」

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実験的映画『ポール・ヴァーホーヴェン/トリック』が面白い (vol.110)

2014年01月14日

今週末から、ヒューマントラストシネマ渋谷で「未体験ゾーンの映画たち」という特集上映が始まります。もう今年で3回目。恒例のイベントになってきましたね。

通常だと日本では劇場未公開になってしまいそうな作品を集めて、一挙上映するのがこのイベント。「こんな傑作があったの!?」という出会いもあれば、「こりゃヒドい…」というハズレもあり、非常に面白い企画です。今回は、なんと28作品が集いました。この中で果たして当たりと外れはどんな割合になるのでしょうか。

さて、上映作品の中でも高い注目を集めているのが 『ポール・ヴァーホーヴェン/トリック』という映画。未体験ゾーンのオープニングを飾る1本です。

タイトルの通り、『ロボコップ』『トータル・リコール』『氷の微笑』『スターシップ・トゥルーパーズ』などでおなじみの、ポール・ヴァーホーヴェン監督の最新作。『ブラックブック』以来、6年ぶりだそうです。

この映画、非常に面白いスタイルで制作されています。なんと、映画の冒頭約5分間だけを公開し、その後の脚本を一般公募したのです。そして、送られてきた1000本以上の脚本から、監督自ら選び抜き、繋ぎ合わせて完成させたというもの。

映画は全90分。最初の30分は、映画制作過程を追ったドキュメンタリー。そして残りの60分が完成した本編。という構成になっています。

当初は、「一般公募の良い脚本を選んで制作するんだから、ヴァーホーヴェン監督はラクチンよね」なんて思っていたのですが、とんでもなかったです。ドキュメンタリーパートの中で、「どんな脚本にも良いところがある」と監督が話している通り、1本1本から良い部分を採用し、映画の中に取り込み、それをうまく繋ぎ合わせて、1本の映画にまとめるのですから、相当な手間だったようです。

映画の冒頭は、男女8人が出てきて、それぞれが複雑な関係を醸すサスペンスタッチの作り。さあ、ここからどんな映画に仕上がるのか。それは映画を観てのお楽しみですが、まあ~面白いですよ。

なにせ、1000本の脚本から良いシーンを選び抜いたというだけに、全編が「修羅場」。次々と厄介な事件が起こり、しかも話がどう転がっていくのか全然わからない。1000人の英知・・・というか、1000人の「パッション」を感じる刺激的な映画です。普通に作った映画なら「60分間で色々あり過ぎでしょ」なんて批評も聞こえてきそうですが、1000人分のアイデアだと思うと、何だかニヤニヤしてしまいます。そして、この奔放なエピソードたちを、最後はきっちり収拾させたヴァーホーヴェン監督の腕にも感心です。

「未体験ゾーン」ファンの方々、まず同作は「当たり」の部類ですので、ぜひご覧ください。


平池アイコン(サイト用).gif平池由典(ひらいけ・よしのり) 映画部記者 兼 サイト事業部所属
 映画・DVDの取材を担当しています。“宇宙人が攻めてくる系”映画が大好物。趣味は競馬と映画鑑賞。当コーナーでは、競馬と映画を中心に自由につぶやいていきますので、良かったらご覧ください。

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