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「字幕翻訳」、フィルムからデジタル時代への変化とは/ACクリエイト菊地浩司社長が語る

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「字幕翻訳」、フィルムからデジタル時代への変化とは/ACクリエイト菊地浩司社長が語る

2014年05月21日

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 映画字幕翻訳者の菊地浩司氏(ACクリエイト代表取締役社長)によるトークイベントが4月某日、洋画の情報発信に特化した「シネマラウンジ100」(東京・西麻布)で開催された。

 菊地氏はこれまでに『スタンド・バイ・ミー』や『オーシャンズ』シリーズなどを手掛け、現在公開中の『アメイジング・スパイダーマン2』も担当した字幕翻訳の第一人者。トークイベント当日は、「映画館からフィルムが消えた!そんな時代の字幕翻訳事情」と題し、フィルム時代とデジタル時代の字幕翻訳の在り方の変化を中心に興味深いエピソードを披露。イベントに出席した映画ファンは熱心に菊地氏の話に耳を傾けた。

 当頁では、そのイベントの一部をレポートする。(写真右が菊地氏)



戸田奈津子さんはコッポラ監督に直訴


MC 菊地さんはどういう経緯で字幕翻訳者になったのですか。

菊地 字幕翻訳家は、最近はたくさんいて、だいたい専門の学校を卒業して当社(ACクリエイト)のような会社の門を叩く。でも僕の時代(70年代)はコンコンと叩く門が映画業界に存在しなかった。

 例えば僕の先輩である戸田奈津子さんは、大学の時から字幕翻訳をやりたいと思っていて英文科を出たけれど、叩く門が無い。そこで、とりあえず映画会社に行って「何でもいいから何かやらせてください」と言って、映画を買い付ける時にアメリカから送られてくる資料の翻訳を20年ぐらい続けていた。

 戸田さんの字幕翻訳の本格的なデビュー作は、フランシス・F・コッポラ監督の『地獄の黙示録』。撮影隊が日本からフィリピンに行く時に彼女が通訳として同行し、その時にコッポラ監督に「字幕の翻訳をやりたい」と直訴したらしい。するとコッポラ監督が「そうなの?じゃあお願いするよ」と言って、配給会社の日本ヘラルド映画に監督じきじきに「戸田さんで」と連絡があったらしい。ヘラルドの人はびっくり。こんな大作を、実績のない戸田さんが!?と大騒動(笑)。当時、清水俊二さんという大先生がヘラルド作品の字幕翻訳を担当していて、清水さんがサポートしながら戸田さんのやることになった。そして映画は大ヒット。戸田さんは当時40代だから、苦節20年でのデビュー。これ、僕じゃなくて他人の話だけどね(笑)。

MC (笑)菊地さんはいかがですか。

菊地 自分のは忘れちゃうんだよね(笑)。新宿アートビレッジという、今でいうシネマカフェのような場所で僕の先輩が16mmフィルムを上映していたんだけど、その頃僕は少し英語ができたので「じゃあ字幕翻訳やってみろ」と言われて、最初にサイレントフィルムをやることになった。それが僕の字幕翻訳のスタートだね。

MC その頃とデジタル時代の今では、翻訳の仕方が変わったということですが。

菊地 今日会場にいる人は、フィルムを見たことがあるかな。今、映画館ではフィルムはありません。ここ数年で映画館はデジタルに切り替わりました。それまでは映写機で回していました。フィルムが消えたことで、今色々なものが変わろうとしています。
 
 例えば映画館から映写技師が消える。昔はフィルム、そのさらに前はセルロイド製フィルムという、可燃性の高いもので上映していて、映写技師は資格が必要だった。京橋のフィルムセンター(東京国立近代美術館センター)も火事(84年9月)で大変なことになったことがある。その性質で感動的な映画になったのが『ニュー・シネマ・パラダイス』。

 話が脱線したけど、我々字幕翻訳家にとってフィルムからデジタルに移行することで1番大きな変化は、まずギャラだね。フィルムの時は1巻分でギャラが決まっていた。でもデジタルだと「1巻」という概念がないから、「時間」で区切るしかないかと。100分とか120分とか。細かくは説明できないけれどね(笑)

 あと、完成に至るまでのプロセスも変わってしまった。例えば、フィルムの時代はほぼ完成した映像を観ることができたけど、今はデジタルだから未完成のものがいっぱい送られてくる(笑)。

MC 音楽が入っていないとか。

菊地 そんなのはカワイイ方。監督は公開直前まで編集作業を続ける。最終的に劇場で上映するものを「ファイナル」と言うんだけど、その前の未完成の段階を「P1」「P2」「P3」などと区切っている。直近の『アメイジング・スパイダーマン2』は、アメリカよりも日本が先に公開するから、「P1」から字幕翻訳作業を始めた。そして「P2」「P3」と来て、「ファイナル」ではもう「P1」とは全然違う映画みたいになっている。

MC 翻訳したのに使われない箇所もあるのですか。

菊地 シーンが丸ごと消えたところもある(笑)。ただ、どの映画も編集を重ねるごとに良くなっていく。悪くなることはまずない。例えばP1では「ん~」と思っていても、ファイナルは「さすが」となることもある。


1秒=4文字は自分で決めたルール

菊地 では、以前はどのように字幕を付ける作業をしていたのか。今は字幕もデジタル。パソコンで翻訳データを作り、そのデータをラボに持っていって、ラボがデジタルの文字を作り、それで出来上がる。

 でも、昔は全てがマニュアルだった。翻訳を原稿用紙にペンや鉛筆で書き、その原稿を字幕にするための、特殊な映画用文字を書く人がいて、彼らが全てタイトルカードに書いていく。タイトルカードを写真に撮って、凸版という鉛の判を作って、それをフィルムに叩きつけて、フィルムに文字の傷をつける。フィルムの上には薬品が塗ってあり、傷をつけたところは真っ白になる。すると、画面上で真っ白な字幕が見えるという仕組み。非常にアナログな作業をしていた。

 そして字幕翻訳家の作業としては、まず試写で英語の台本と照らし合わせながら映像を観る。そこで、英語の台詞を日本語字幕にした時に、(1つの画面で)ちょうと読みやすいと思われる長さに切る「箱書き」という作業を行う。だいたい今は一行が10数文字で、2段で最大20文字くらいかな。


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