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サーティースリーとMyAnimelistが業務提携、アニメ・マンガの海外宣伝に強力なサービス誕生

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サーティースリーとMyAnimelistが業務提携、アニメ・マンガの海外宣伝に強力なサービス誕生

2023年12月11日
 アニメーションや映画などエンタメ業界専門の総合マーケティングエージェンシーである株式会社サーティースリーと、世界最大級のアニメ・マンガのコミュニティ&データベース「MyAnimelist(マイアニメリスト)」(以下、MAL)を運営する株式会社MyAnimelist(以下、MAL社)が、業務提携契約を結んだことを7日発表した。日本のアニメーションやマンガが、海外市場で大きく飛躍するきっかけとなる可能性を秘めた大型タッグの誕生となりそうだ。

 MALは、世界で月間1800万人のユーザーが利用する世界最大級の日本アニメ・マンガのコミュニティ&データベースだ。英語サイトのため日本での知名度は限定的だが、北米やアジア、ヨーロッパなどの海外ファンにとってはなくてはならないサイトとして支持されている。ユーザーによる作品評価の「スコア」や、作品を視聴した(する予定の)人の数を示す「メンバー」は、作品の買付額にも影響すると言われるほど重要な指標になっており、一般のユーザーだけでなく、映像業界のバイヤーやセラーらからも熱い視線が注がれている。運営するMAL社は東京に本社を持ち、株主にはメディアドゥ、講談社、小学館、集英社、KADOKAWAなど出版業界を中心に錚々たる企業が名を連ねる。

 一方、サーティースリーは2021年1月に設立され、映画やアニメーションをはじめ多くの話題作のPRやSNSマーケティングなどを手掛ける。国内事業の急成長を追い風に、2023年4月には米ロサンゼルスに新会社の「33 USA inc.」を設立。経験豊富で実力確かな現地スタッフを雇用して体制を構築し、アニメやマンガを中心とする日本のポップカルチャーに特化したマーケティングエージェンシーとしてサービス提供を開始しており、2024年には日本でも人気の高い大型アニメーションの宣伝を多数担うことも決まっている。

 この両社が手をたずさえ、アニメ・マンガ業界向けに新たに提供するサービスが、権利元の海外マーケティングを支援する「MAL33」だ。


左が久保田氏、右が溝口氏.jpg
サーティースリーの久保田氏(左)とMyAnimelistの溝口氏(右)


  コロナ禍による世界的な巣ごもり期間中、動画配信サービスを通して日本のアニメーションは海外で人気が急騰し、MALのユーザー数も大きく伸長した。同サイトでのデータマーケティングに着目する権利元も増え始め、運営するMAL社には多くの声がかかるようになった。溝口敦代表取締役は「ファンコミュニティやデータベースを活用したマーケティングは得意としていますが、PRやSNSマーケティングなどの相談を受けることも増えてきた中で、社内のリソースでは十分に対応することができず、機会を逃すことも増えてきていました」と実情を明かす。

 かたやサーティースリーにも海外進出にあたって課題が見えていた。同社の久保田光治代表取締役は「弊社はPRやソーシャルメディアマーケティング、広告、クリエイティブと“手法”の部分でしっかりチーム体制を作ってサービスを提供してきましたが、視聴者心理やマーケット構造を分析するためのデータベースは持っていませんでした。より芯を捉えた戦略的なプランニングが必要だと常日頃から考えていました」と話す。

 今回発表した業務提携は、そんな両社が最も欲していた機能を相互補完できる理想的なパートナーシップと言える。溝口氏によると、海外のマーケティングに力を入れようという権利元の気合が格段に高まったのを感じたのが今年に入ってからだという。その夏に久保田氏と溝口氏が共通の知人を介して知り合う機会が得られ、「こんな奇跡的なタイミングで出会えるのか」(久保田氏)と驚くほどの絶妙なマッチングとなった。主に国内の映像会社との取引が多いサーティースリーと、出版業界や海外での取引が多いMAL社が組むことで、販売先の拡大も見込まれる。

 新サービスの「MAL33」では、MAL社が持つデータベースやファンコミュニティを活用し、サーティースリーによる確度の高い戦略的なマーケティング支援を行う。クライアントの予算や作品がおかれている状況に応じたメニューを用意しているという。例えば、これまで北米ではTVアニメーションの公式サイトが開設されるケースが少なかったが、「実際に立ち上げてみると、多くの流入数でした。その必要性を実感しました」(久保田氏)とし、アニメファンから熱い支持を受けているMALの作品データベースと連動した公式サイトの開設をプランに盛り込む。

 また、「プラン・トゥ・ウォッチ プロモーション」と銘打った特別プランも提供する。「プラン・トゥ・ウォッチ」とは、MALのユーザーが「今後見ようと思っている作品」にチェックを付けられる機能であり、アニメファンだけでなく、業界関係者からも重要な人気度の指標になっている。アニメは1クールに放送される本数が多く、ファンにとっても全てをチェックするのはひと苦労だ。そんな中で、データベースを活用し「届けるべく人にしっかり届く」(久保田氏)のが同プランだという。他にも、MAL内でユーザー参加型の企画展開なども用意されており、こういったサービスを皮切りに、今後さらにブラッシュアップを重ねていく考えだ。

 溝口氏は「世界中のファンにとっても、すごく良い取り組みだと思います。クリエイターやコンテンツとファンの橋渡しになれたらいいですね。提携した今年が『あの頃が変わり目だったよね』と言われるようになれたらなと期待しています」と話し、久保田氏は「世界で挑戦するクライアントの皆様の一助となれるように、そして日本のアニメやマンガをはじめとするポップカルチャーが、さらに世界で発展する一翼を担えるように、進化し続けていければと思っています」と力強く語る。市場急拡大の波に乗る両社の提携がどのような化学反応を見せるのか、要注目だ。


取材・文 平池由典

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