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被災3県デジタル移行延期の決定は

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被災3県デジタル移行延期の決定は

2011年04月21日
 岩手・宮城・福島3県の地上アナログ放送延長の判断は、予定より延びて結論が下された。総務省は、東日本大震災による放送設備等の被災状況の調査に乗り出し、それを見極めた上で決断したとはいえ、関係者との意見交換の中でせめぎ合いがあったと想像もされる。

 震災後、延長か否か、関係者は注視していた。被災地の自治体はアナログ延長を求め、地元の放送局らは計画どおりアナログ停波の意向にあった。延長すれば、放送局はアナログとデジタルのサイマル放送を継続しなくてはならず、コスト負担増のみならず様々な対応に追われる。地元局の中では嘆願も考えられたようだ。

 キー局発の全国ネット番組にも課題が生じる。アナログ回線は7月までの契約で、被災3県に番組を発信するには再契約する必要があり負担も増える。技術的にはデジアナ変換の策もあるが、このほか様々な課題がある。

 だが、予想を上回る被災状況。津波で流失した施設等は3県で7万9千世帯を超える。今後対応が必要な世帯は6万世帯にのぼる。復興を最優先する中、受信対策も滞り、完全デジタル化を予定していた7月24日までの3ヵ月間では対策が追いつかない情勢。アナログを停波すれば多くの地デジ難民を生み、被災者たちはテレビを視聴出来なくなる可能性が高い。テレビから得る情報を失うことは今後の生活に影響しかねず、デジタル移行延期の結論に至った。

 これを受け、民放連広瀬道貞会長は「甚大な被害を受けた地域では、完全デジタル化のためのデジサポ事業や自治体活動などが滞り、全体的な作業が遅れていることは理解している。しかし、放送事業者はデジタル受信環境整備に向けた努力を既に開始しており、この時期に政府が被災3県のアナログ放送の延長を表明したことは極めて残念」とコメントを発表した。「被災3県の放送事業者にさらなる経費負担を強いるものであり、これに必要な民放事業者の経費は国で措置していただきたい」と要望する。「その上で、3県においてもできるだけ早期にアナログ放送終了・デジタル放送移行が達成できるよう、総務省は地元の放送事業者の意見を尊重して、必要な予算・人材等を投入し、集中的な対策を実施していただきたい」と訴える。

 3県の延期は最大1年まで(来年7月24日まで)で、実際に延期する期間は7月24日までに別途告示で定める。行政は早期デジタル移行への財政支援に取り組む。

 3県以外は予定どおり7月24日にアナログを停波してデジタル移行するが、全国完全デジタル化の実現は先送りとなった。

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