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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.45】
「神様のカルテ」、気になる2週目の落ち込み

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.45】
「神様のカルテ」、気になる2週目の落ち込み

2011年09月08日
 遅い夏休みをとっていたので、この記事が遅れてしまったことをおわびしつつ、さて映画興行に目を移してみると、相も変わらない厳しい状況が続いており、一気に現実に呼び戻されてしまった。夏興行の作品に関しては、ほぼ全作品がすでに秋風にさらされてしまっている。

 8月27日から公開された「神様のカルテ」は、当初最終で興収20億円以上が確実視されていたが、2週目の土日である9月3、4日の2日間では、1億8695万9600円を記録。これは、1週目の土日の61・7%の興収であった。最低でも75%ほどに収まると踏んでいただけに、この落ち込みは正直、私には意外なものであった。

 私がこの作品に興味を覚えたのは、人気グループ嵐の櫻井翔が、アイドル映画的な娯楽作品ではなく、ドラマの骨格のしっかりした感動的な装いをもった作品に出演したからであった。それを実現した製作会社の狙いが、非常に理に叶ったもののように感じられたのである。

 映画への入り方は人気者=櫻井が引き寄せるにしても、中身は彼のファンではない普通の大人たちにも十分訴えるものをもっている。それが「神様のカルテ」という作品の“外観“であり、この両者がうまく引き合うと、かなり面白い興行になるのではないかと私は思った。実際、櫻井のファンとおぼしき若い女性に加えて、40代ぐらいまでの男女の観客も、スタート時にはしっかりと集客していて、だからこそ私にはその製作姿勢が興味深く映ったのだった。

 それが、前記のような2週目の落ち込みになったことで、少し見方を修正しなくてはならなくなった。つまり、中身は一般性をもっていても、人気者=アイドル性の要素が、やはり強かったのではないかとの推測が出てきたのである。そうでなければ、その61・7%という推移の理由は、なかなか類推できるものではないのだ。

 ただ、興行は複雑である、2週目はそうであったにしても、3週目となると、また別の展開を見せるかもしれないからだ。だから、今の段階で「神様のカルテ」の興行を云々するのは早計であり、もう少し様子を見ることにしよう。

 個人的には、より広範囲の観客に見てもらいたい作品であるし、その力がある作品だと私は思う。もし今後、客層が広がっていかなければ、宣伝など別の問題を考える必要があるのではないか。

(大高宏雄)

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