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放送業界も注目!? ロボット事業

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放送業界も注目!? ロボット事業

2015年03月19日

 インターネットに次ぐ新たな産業革命と期待されるロボットビジネスに、放送業界も注目している!? 今年フジテレビ系の会社がロボット開発ベンチャーに出資したり、電通は昨年ロボット推進センターを立ち上げ、博報堂は先頃、動きを楽しむ “ロボットドール” の開発を発表した。吉本興業では昨年、子会社としてロボット研究所を設立している。

 ロボットと言っても、人型ロボットもあればドローン(無人飛行機)もあり様々だ。放送業界では、人型ロボットはコミュニケーション、ドローンは空中撮影などが考えられそうだが、さて、テレビ局とロボットビジネス、今後どう関わっていくのだろうか。

 フジ・メディア・ホールディングス傘下の(株)フジクリエイティブコーポレーション(FCC)は今年1月、ロボット開発ベンチャーの「ラピュータ社」(東京都新宿区)に出資したと発表した。FCCの出資の狙いは、ラピュータ社が持つ、クラウド・ロボティクス技術を応用した演出や撮影技術を用いて、革新的な各種イベント・番組制作をしようというものだ。ラピュータ社は、世界最先端のロボット技術研究を誇る、チューリッヒ工科大学のRaffaello D'Andrea研究所の主要メンバーが立ち上げた会社。クラウド・ロボティクス技術において高い技術力とノウハウを有する。クラウド・ロボティクス技術とは、ロボット本体の “低価格化・軽量化”  を実現する技術の1つとして注目され、クラウドが持つ膨大な演算処理能力とそこに蓄積された知識をベースにロボットを制御して各種サービスを実現する仕組み。FCCはこれらを踏まえて放送に活用しようとの思惑だ。

 一方、博報堂のプロジェクト「monom(モノム)」は、ユカイ工学(株)と “動き” を楽しむロボットドール「iDoll(アイドール)」を共同開発中で、プロトタイプの詳細をこの程発表した。iDollは、手のひらサイズの身長15cmのロボットドール。15個のマイクロモーターと10個の関節によって、ダンスや挨拶、一発ギャグなど、様々な動きを音声とともに再生することができる。操作は、スマホ専用アプリ「iDoll PLAY」で行い、「歩く」「ジャンプ」などのアクションや歌に合わせたダンス、漫才など、好きな動作プログラムを選んで再生させることができる。さらに、見た目を変えることで、様々なキャラクターに展開することが可能だ。主にコミュニケーションツールとしての活用が狙いと見られる。

 iDollは、コンセプトモデルで、現在、「iDoll」を市場に出すために共同で量産、販路開拓を行う製品化パートナーを募集している。3月中旬米国テキサス州オースティンで開催の世界的なトレードショーSXSW(サウスバイ・サウスウェスト)でiDollの展示も行い、また、iDoll専用の二人組アイドルユニット「あい☆どーるず」のデビュー曲およびミュージック・ビデオも公開するなど、iDollをPRしている。

 電通は、社内横断の組織として「電通ロボット推進センター」を昨年11月1日立ち上げた。ロボットを新しいコミュニケーションメディアとして育成し、将来的に人とロボットが共生できる社会の実現に貢献することが狙いという。想定する主なビジネスは(1)コミュニケーション活用を中心としたロボットの開発、(2)ロボットに関する企業や人材のマッチング、およびロボットの広告利用、(3)ロボットのキャラクターライセンス管理やロボット競技などのコンテンツ化だ。「ロボット開発」に当たっては、国内トップクラスのロボットクリエイターや専門家との協力体制も整え、顧客ニーズに合わせてカスタマイズしたソリューションを提供していく。

 ちなみに、電通ではこれより先に、会話ができるロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」の宇宙飛行の研究を推進し、キロボは2013年8月「こうのとり」4号機に搭載され、種子島からロケットで打ち上げられた。宇宙ステーションに滞在し、同年12月には若田光一JAXA宇宙飛行士と共に、世界で初めてとなる “宇宙における人とロボットとの対話実験” を実施した。この「キロボ」会話実験プロジェクトは2014年度グッドデザイン賞を受賞している。

 吉本興業は昨年、ロボットのエンターテイメントコンテンツの企画監修・開発に特化した100%子会社「(株)よしもとロボット研究所」(東京都新宿区)を設立した。資本金は1000万円。ソフトバンクモバイルの、感情を認識して “人を笑わせることができる” 人型ロボット「Pepper」のエンタメコンテンツ企画監修・開発協力を行うのが目的だ。チーフプランナーは、「ロンドンハーツ」「アメトーーク!」などの人気放送作家・中野俊成氏。

 他方、総務省は今年3月、ロボットにおける電波利用に関して、使用可能周波数の拡大など技術的な検討を行うことにした。現在も、ロボットの運用(画像伝送、データ伝送、操縦コマンド等)に使用可能な周波数帯は複数存在するが、ドローンの普及などにより、特に高画質や長距離の画像伝送用途等についてのニーズが高まり、利便性向上のため、使用可能周波数の拡大、最大空中線電力の増力などに向けた検討が必要ということだ。検討結果は来年(2016年)3月に答申される予定で注目されている。

 日本の国際競争力を高めるのに、ロボット革命の実現が昨年6月提言された。これに基づき設立された「ロボット革命実現会議」において、“ロボット新戦略” が今年1月策定された。つまり、日本はロボットビジネスで世界をリードしようというものだ。現在、ロボット産業の国内市場規模は約9千億円と言われている。それが20年後の2035年には約10倍の9・7兆円に成長すると経済産業省は予測している。テレビ局は、本業である放送以外の事業領域をさらに拡げる動きを推進しており、エンターテイメントにも関わるロボットビジネスは魅力的に映るだろう。放送業界あるいは映像業界と “ロボットビジネス” 、将来深く関わっていく可能性もありそうだ。

(戎 正治)

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