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“10代の教祖”だった尾崎豊のドラマ化

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“10代の教祖”だった尾崎豊のドラマ化

2011年02月23日

 テレビ東京とBSジャパン(BSJ)は、BSジャパン開局10周年記念に企画番組として、尾崎豊の半生をドラマ化した「風の少年~尾崎豊 永遠(とわ)の伝説」を3月21日21時から放送するという。

 CBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)時代に尾崎のプロデューサーだった須藤晃氏(現在も音楽プロデューサー)の著書「尾崎豊 覚え書き」を元に、綿密な取材と証言によって裏付けされた尾崎の「語られることの無かった真実の姿」を描くという(脚本・洞澤美恵子)。主演の尾崎豊役には若手俳優の成宮寛貴を起用している。

 尾崎が亡くなって20年が経つ。早いものである。

 “10代の教祖”と言われてきた尾崎の死は当時、一般紙までが取り上げ、社会現象として取り上げられた。

 それは、ゴールデンウィークを前にした92年4月25日のことだった。東京・足立区。午前4時、民家の軒先の隅に泥酔し全裸姿のままで倒れている男性が近所に住む住民によって発見された。「不審な物音に気づいて出てみると、男性がうずくまっていた」。この男性こそ尾崎豊だった。

 尾崎は、青山学院高校を中退し、83年――18歳の時に「17歳の地図」でデビューした。大人社会への反抗の心情を歌に託して、特に10代後半の世代から厚い支持を得ていた。当時、マスコミは尾崎を指し「時代の寵児」「10代の教祖」といった表現で報道していた。

 まさか、全裸でうずくまっていたその男性が尾崎だとは誰も想像できなかったはずだ。発見した住民の通報で救急車が到着、病院に搬送された。午前6時のことだったという。検査の結果、命には別状がないことが分かり午前8時、繁美夫人に付き添われて自宅マンションに帰った。異変は、それから2時間後に起こった。「突然、苦しみ始め、驚き慌てた繁美夫人が救急車を呼んだが、すでに尾崎の呼吸は停止していた。死因は、肺に水がたまったための呼吸困難による衰弱死――肺水腫と診断された。

 尾崎は、デビューして3年後の86年、1年間活動を停止した。

 「活動を休止して単身で米ニューヨークに渡ったが、1年間の米国生活はクスリ漬けの日々だった」と関係者は言う。

 結局、翌87年の年の瀬に「覚せい剤取締法違反」で逮捕された。東京拘置所で60日間を過ごし、下された判決は懲役1年6ヶ月、執行猶予3年だった。今回のドラマは、昨日(2月22日)から撮影がスタートしたというが、その部分がどう描かれるかは分からない。しかし、曖昧には描けない部分であることは確かだ。

 生前、取材を通して尾崎と公私にわたって親交のあったノンフィクション作家で音楽評論家の田家秀樹氏は

 「死を聞かされた時は一瞬、全身の力が抜け頭の中が真っ白になった。言葉も出なかった」という。しかし、その一方で「やっぱり…」とも思った。「自分自身に傷をつけ、血を流しているようなライブをやっていた奴だったからね。…だって、楽しそうにライブをやっていなかったんですからね。そもそも、自分を痛めつけ傷つけるようなライブをやっている奴が長生きするはずがない。今思うと、自分で答えを出したような気がする」。

  確かに、尾崎の死因については、今なお疑問視する声がある。「アルコールと薬物でのショック死では…」というのだ。

  今回の尾崎豊のドラマについて、テレビ東京の田淵俊彦プロデューサーは

 「今まで実現しなかった理由は様々だが、尾崎さんを生前最も身近な立場で見続けてきた音楽プロデューサーの須藤晃さんの原作を基にすることで、尾崎さんの真実の姿に迫ったリアルなオリジナル脚本を作り上げることが出来た。尾崎さんの役をやれる俳優がいなかったのもドラマ化を困難にしていたが、今回、成宮さんが引き受けてくださると聞いて身震いした」

  と言う。

 いずれにしても、どんなドラマになるか期待大である。

 因みに、尾崎豊が永眠する埼玉・所沢の狭山湖畔霊園や、尾崎のモニュメントのある東京・渋谷駅近くの渋谷クロスタワー(当時は東邦生命ビル)には、現在でも命日にはファンが集まり黙とうを捧げている。

(渡邉裕二)
 

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