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40億円を不正流用した大手広告代理店元部長の言い訳。

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40億円を不正流用した大手広告代理店元部長の言い訳。

2011年03月02日

 最近、非常に興味を持ったのが、大手広告代理店「電通」の「電通エンタテインメント事業局」の企画業務推進部の元部長による横領事件だった。

 元部長は2002年から08年に亘って、架空の投資話をデッチ上げ、何と40億円以上ものカネを集め、私的に流用したというのだ。

 この部長、実は02年に、東京・渋谷にあるSHIBUYA AXやBOXXの設立に関わったことで有名な人。それにしても、部長とは言え40億円を超える金額を横領するというのは凄いことである。

 電通の知り合いに聞いたところ、この元部長は、エンタテイメント事業部の前は電通のテレビ局に所属していたという。そういったことからだろうSHIBUYA AXは日本テレビ、SHIBUYA BOXXはテレビ東京が関わりがあった。

 今回の事件は、その中で「SHIBUYA BOXX」を舞台に起こったものだった。

 「SHIBUYA BOXX」は、電通とテレビ東京などが共同運営しており、具体的な運営については両社で「共同運営組合」を設立していて、元部長は事務局次長に就任していた。

 しかし、設立当時から、さまざまな問題が指摘されていた。「当初は、放送スタジオにする予定だったんです。ところが出資者が撤退したことから、スタジオを断念しライブスペースとして運営していくことになったんです」(関係者)。

 だが、いざ運営を始めると「建設費がかさんだこともあって資金繰りが大変だった」と元部長はぼやいていたようだ。そういったことから、今回の横領事件は、その資金繰りのために起こったというのだが…。

 ところが、報道によると「(元部長は)本来の目的とは異なる業務発注を繰り返し40億円以上を流用していた」とし、その際に、元部長の父親が役員を務めていた広告会社などに業務を下請けさせ、入った資金をBOXXなどの資金繰りの穴埋めなどに使っていたと伝えている。

 《知人が役員を務めていた大阪市のコンサルタント会社など約10社を1次委託先とし、組合や電通などの名義で施設の運営関連業務などを発注。その際、以前に父親が役員を務めていた広告会社など数社を2次委託先に指定、1次委託先から2次委託先に作業代金を前渡しする契約を結んだ。しかし、実際には広告会社などは目的の作業をせず、渡された資金は、別の1次委託先への支払いや施設の土地の賃料など、主に施設の資金繰りの穴埋めに使われた》

 だが、電通の関係者によると、元部長は「電通も出資する」と言い、架空の投資話をデッチ上げていたという。「電通が出資する」と言えば、誰もが信用するだろうし、ビジネスにも繋がる。そういったことから大手のファンドまでが元部長の口車に乗っかり投資したと言うのである。

 「我々は20億円ぐらいの横領だと聞かされていましたが、今回、報道で40億円と報じられた時は正直驚きました。資金繰りと言いますが実際には分かりませんよ」。
もっとも、この元部長による横領事件については1年前から内部調査が行われていたという。

 「電通の総務局には、検察出身者が何人かいて、その検察出身者が元部長を徹底的に調査したらしいんです。ところが、なかなか落ちない。とにかく内部調査が大変だったと聞いています」

 「どうやら、会社のパソコンや携帯電話からは証拠となるものが全く出てこなかったようです。そういった意味から元部長の私物のパソコンや携帯電話を使っていたと言われていました。そういった意味で言うと、今回の事件と言うのは、元部長のほんの出来心というのではなく、最初から狙ってやっていた…。明らかに確信犯でしょうね。だいたい、父親が役員を務めていた広告代理店などを2次委託先に指定していたんですから」

 捜査に当たっている警視庁では、今回の横領事件に関して「背後に暴力団が絡んでいる」との見方をしているムキもあるという。

 「捜査をしている中で、入金経路は全て判明しているようですが、支出については全容がイマイチ判明していないと言われています。入った金がどこに出ていって、何に使われたのか…元部長の説明に対して、実は捜査が殆ど進んでいないと聞いています」(関係者)

 この事件を巡っては、業務委託先の3社が電通などを相手取って、未払いの委託料など計約46億8700万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしている。いずれにしても事件は、これからが本番かもしれない。

 因みに、O元部長に対して電通は昨年3月、これらの取引を「作業実態がなく、架空だった」として懲戒解雇としている。


(渡邉裕二)

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