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視聴者は待っている‐CM復活を

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視聴者は待っている‐CM復活を

2011年03月24日
 仕事帰り、川崎駅で下車し地下街アゼリアを抜けて地上に上がると、いつもと違った雰囲気に気づく。「計画停電」である。それでも、いくつかネオンが灯っている。アーケードのある銀柳街の商店はやや閑散とし、いまが深夜かと思わせる。店舗前の貼紙を見ると「計画停電が終了次第、営業再開します」とある。行き交う人も困惑の表情。信号は役割を果たさず、交通整理の警官がいないため車道を横断するのも気を使う。車のライトを目で追いながら事故が起きても不思議でない気がした。ただ、その一帯が暗くなるわけではないらしい。いつものように明るい照明で営業していたコンビニや飲食店もあった。少し歩けば信号も機能していた。そういうものなのかと妙な感想を抱きつつ踵を返すことにした。

 福島原発事故は放射性物質の排出で暮らしを脅かし、電力不足があらゆる産業界を直撃している。計画停電はまだしばらく続き、一旦は終了しても夏場に再開せざるを得ないと、東電は見通した。原発復旧のメドはまだ立っていない。このまま行ったらどうなるか。政府は東日本大震災の被害額が16兆~25兆円と試算した。阪神大震災の10兆円をはるかに上回り、原発事故に伴う放射能被害や計画停電の損害は含まれていないというから恐ろしい。想像を超える経済危機に胸騒ぐ。

 放送界を直撃するのは必至。既に企業のCM自粛で厳しい損失。AC(公共広告機構)のCMはまだ大量に流れている。ACのCMは基本的に料金ゼロ。ただ、CMを予定していたスポンサー側の意向でACのCMに差し替えた場合などでは、収入がないわけでもないらしい。そこはスポンサーと局、双方の信頼関係や配慮にあるようだ。とは言え損失は大きい。それに景況悪化はこれから押し寄せてくる。一体どれほどの影響が出るのか。各局予算の見直しに入っているが、見通すことも難しい。過度なCM自粛を脱して欲しいが、震災による被害は収まりを見せない。東京・葛飾の浄水場から放射性物質も検出されるなど不安は拡がるばかり。余震も予断ならず、近く大型クラスが起こる可能性も示唆されている。

 ただ、民放ではほぼ通常の編成に戻り、バラエティ番組などが好数字を獲得している。その現状をみると、後退して立ち止っていた視聴者も歩き出したよう。どの企業もダメージを受け容易でないが、CMも少しずつ活況を取り戻して欲しいと願うばかりである。視聴者は待っているのだ。

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