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インタビュー:「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」阿部秀司 エグゼクティブプロデューサー

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インタビュー:「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」阿部秀司 エグゼクティブプロデューサー

2011年11月28日

R A I L W A Y S
愛 を 伝 え ら れ な い 大 人 た ち へ

「北アルプスの雄大な自然を背景に定年と夫婦の絆を描く」

阿部秀司氏.jpg


 昨年7月に個人事務所を設立した阿部秀司プロデューサー(=写真)が地方鉄道を舞台に人間模様を描くシリーズ第2弾「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」(12月3日公開)を製作。定年を迎えた夫婦の機微が描かれ好評である。作品への想いや撮影の舞台裏について、阿部Pに聞いた――。



団塊世代の定年と第2の人生

──先日、作品を見せていただきましたが、前作「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(10年)を上回る作品に仕上がっていました…。

阿部秀司P(以下、阿部) 本当にうれしいです。業界専門紙の方にそう言っていただくことは百万の味方を得たようです。指田さんはおいくつですか。

──私は56歳です。

「RAILWAYS2」(1).jpg阿部 それでは、大体主人公と同世代だね。今回、主人公を演じた三浦(友和)さんは、昭和27年生まれで来年還暦を迎えます。

──では三浦さんとしては、ほぼ実年齢という役柄だったわけですね。

阿部 実年齢です。ですから三浦さんに関しては初めからキャスティングしていました。今回、男にとって大きな節目である定年とその定年を迎える夫との夫婦関係という二つを大きなテーマにやってみたいと製作しました。

──前作の公開前に、阿部さんにインタビューした時(2010年文化通信ジャーナル6月号インタビュー)に、ぜひシリーズ化したいと話されていましたが、もう富山を舞台にということだったのですか。

阿部 そうですね。その時、僕としては富山の富山地方鉄道か長野の長野電鉄か、二つに絞り込んでいました。

──その時はまだ、鉄道だけで物語やテーマ性までは考えてはいなかったのですか。

阿部 そうですね。(立山など北アルプス連峰の)景色を見て、富山であれば夫が定年を迎える夫婦の話が合うかな、しかも撮影が冬だし、しっとりとした北陸が舞台に合うかなという。枯れるというのか、ぴったりする話を作りたかったということです。

──非常に人生観をじっくり味わう映画になりましたね。

阿部 そうですね。60歳、定年を迎え第二の人生をどうするのかを考える映画にしました。(昨年、映画制作会社ROBOTの代表取締役社長を退任し、阿部秀司事務所を設立するという)自分のこともかなり入れて、大体定年を迎えた人たちの平均的なことを基本的に盛り込んだつもりなのです。

──前作は昨年5月29日に公開したのですが、いつ頃に第2弾を決められたのですか。

阿部 もう第1弾の撮影が終わったあたりから第2弾というのか、新しいシリーズにしたいとは思っていたんです。しかし、ご存知のように映画は興行収入がいかに上がるかによって次回作の製作も決まっていくわけです。でないと製作委員会各社に対しても納得してもらえないだろうなとは思っていて、ある一定の数字は自分の中でも最低ラインとして持っていたのですが、実は前作(推定興収約6億円)はそれをクリアするには到らなかったのです。しかし、ウェルメイドといいますか大人が見て落ち着けていい映画とみなさんおわかりになっていただき、特に松竹さんからは「ぜひシリーズ化に挑戦してみましょう」という強い助言もいただき、実現したのです。松竹さんもこの「RAILWAYS」をシリーズ化できれば、新しいタイプのシリーズ作品としていいはずですし、なんとか定着できればと思っています。前作は「〜49歳で電車の運転士になった男の物語」という副題からも分かるように50歳前後をターゲットにしていましたが、今回は「60歳のラブ・レター」(09年)ではありませんが、50代以上のハイ・ターゲットに完全に絞り込み映画化したのです。


懐かしのレッドアローが登場

──先程、第1作の興収は阿部さんが想定した最低ラインには到らなかったということですが、DVD・テレビなど2次使用ではリクープできたのですか。

阿部 そこそこですね。いまDVDをはじめ2次利用は非常に苦しいです。各社さんともMG(ミニマム・ギャランティ=最低保証)を切ることがなくなりました。以前であればMGがついていたので大作でもある程度リスクヘッジはできていたのですが、興行だけでリクープすることを計算すると、なかなか難しい時代になったと思います。

──今回、富山でレッドアロー(1990年代まで西武鉄道で使用されていた特急電車両)が走っていることを知り、私は西武沿線の所沢出身なので映画を懐かしく見ました…。

「RAILWAYS2」場面写真2.jpg阿部 懐かしいですよね。(レッドアローがいまでも富山を走っていることは案外)知らないでしょう。存在しているのです。第2の人生…。前作はデハニ50形という、日本で最古参の電車をテーマにしていました。今回、電車としては、富山地方鉄道さんはいろいろな電車のレパートリーを持っています。特にレッドアローが第2の人生を歩んでいることは、打ち出してはいませんが、今回のテーマにちょっとかぶるところがあります。所沢出身の青年が、子供の頃からの夢だったレッドアローの運転士を心指し富山地方鉄道に務めるというように…。

──少し横幅があるように見えたのですが。

阿部 電車自体は同じですが、西武鉄道で使っていたものをそのまま持って来たわけではありません。足回りという、動力部分と乗車部分はJR(東日本)製ですし、運転席周りは京王製という具合にいろいろな物を寄せ集めたのですが、一番のメインであるボディ(胴体、車体)はレッドアローそのものです。

──電車の種類は他にもありますか。

阿部 やはり他社から持って来たものや富山地方鉄道としてオリジナルに製造したものもあります。ベージュとだいだい色の“だいこん電車”の愛称がつくモハ14760形や黄色とグリーン色の“かぼちゃ電車”(モハ10030形)があります。


蔵方政俊監督は有名助監

──今回、監督に蔵方政俊さんを起用されたのですが、前作の錦織(良成)さんからどういう経緯で変えられたのですか。

阿部 実は蔵方くんは、前作のチーフ助監督なのです。錦織監督でいくということも考えたのですが、錦織監督は“島根”を背負っている監督なのです。今回富山が舞台であり、ちょっと島根から離れたいということと、助監督として蔵方くんを見ていて、この人に監督になってもらいたいと思ったのです。彼は有名助監督なんです。有名監督はたくさんいるのですが、有名助監督はあまりいないんじゃないでしょうか。「超少女REIKO」(91年)を皮切りに「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)や「舞妓Haaaan!!!」(07年)「なくもんか」(10年)、そして「源氏物語 千年の謎」(11年)など数々の作品の助監督を手掛け、様々な経験値を持っています。私の一つの仕事として新しい人に監督デビューしてもらうということがあります。「ジュブナイル」(99年)で山崎貴、「タイヨウのうた」(02年)で小泉徳宏…とみな最初の監督作品は私が手掛けており、蔵方くんでいいんじゃないかと、プロデューサーの石田和義くんと話して、石田くんのリコメンドもあり、蔵方くんを起用したんです。蔵方くんは本(脚本)も読めるし、演出力は助監督で鍛えられており、真面目によく考える監督でした。主演の三浦友和さんともうまくいき、仕上がりを見ると本当によかったと思っています。

──先程も少し出たのですが、前作は49歳で普通のサラリーマンから電車の運転士に転職する話でした。今回、定年にしたのはどんな理由ですか。

「RAILWAYS2」(3).jpg阿部 「RAILWAYS」というウェルメイドでターゲットがある程度上の人たちをねらう時に、“定年”は一番興味を示す題材なんじゃないですか。たまたま渡辺淳一さんが「孤舟」(10年)という本を書かれたんですが、これも定年をテーマにしていてかなり話題になりました。定年はテーマというよりも、マーケットとしてあるなと思ったのです。

──最近の映画界では、若い人よりも50代以上の方が映画館に来ているという調査結果もあります。

阿部 そうです。実はテレビ業界ではこれまでずっとF1層(=Female1、20歳〜34歳の女性)を狙い目にしてきたのですが、最近は、F2・5層(F2=35歳〜49歳の女性/F3=50歳以上の女性でありその中間層)に移っているのではないか…。今これらの層が一番のボリューム・ゾーンになりつつあり、映画のターゲットにしたことは正しかったかなと思っています。たまたま第1作、第2作とも中年の夫婦ものを扱い、第2作では団塊の世代の定年ということにフォーカシングしたかったのです。

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