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エンターテインメントの限界…

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エンターテインメントの限界…

2013年03月22日

 東日本大震災の時、実感したのは災害地におけるエンターテインメントの役割だった。

 エンターテインメントの果たした役割は大きかったと思うが、その逆もあったはずだ。チャリティーのあり方でも人によって違いがある。しかし、考えはさまざまだろうがエンターテインメントにも限界があるはずだ。

 先週、内閣府は太平洋沖に延びる「南海トラフ」での巨大地震対策を検討する国の有識者会議の調査結果として、東日本大震災と同等のマグニチュード9.1の地震が起きると、最悪のクラスで220兆3000億円の経済被害が出るとの想定を明らかにした。これは東日本大震災の10倍を超える規模の被害額になる。だいたい220兆円といったら国家予算の2倍強だ。

 同会議は「巨大地震の発生は1000年に一度、あるいはもっと低い頻度」と断っているが、それは単なる誤魔化し。天災なんて、いつ起こるかわからない。だから、一方で「東日本大震災の教訓を踏まえ、耐震化や防火対策を進めれば被害は確実に減らせる」とも言っている。

 いずれにしても、万が一でも大地震が起こった場合、インフラやライフラインの被災規模は上水道は3440万人、下水道は3210万人が断水で使えず、停電も2710万軒に拡大するという。さらに中部、関西、高知、大分、宮崎の5空港が津波で浸水し、このうち高知と宮崎は半分以上水浸しになると言う。さらに地震発生から1週間で、食料が9600万食、飲料水が1億4500万リットル不足し、500万人が避難所で暮らすことになると想定していて、極めつけは震災で生じる瓦礫などの廃棄物。東日本大震災の約12倍にあたる2億5000万トンに達すると予測している。

 前述した通り実際には明日にも起こるかもしれないわけだし、備えあれば憂いなし…といったところ。日本で生活している以上は常に覚悟が必要だ。

 しかし、こういった現実を突きつけられている一方で理解出来ないのは、東京都も含めた政府や行政の態度である。「大地震が来たら…」などと大騒ぎしておきながら、「2020年の五輪は東京で…」なんてキャンペーンをやっていることである。しかも、「大地震が来る」と言われ、不安になっているだろう都民や国民は東京での五輪開催に「好意的」だとも…。一体、この国の住民は何を考えているのか?

 オリンピックを日本で――。オリンピックを東京で――。

 そんなことを言い続け、巨額な誘致合戦を繰り広げ宣伝費を投じ続ける。さらに開催が決まったら、当然ながらも何千億円もの予算を投じて開催に向けての設備を整えていく…しかし、そんな金があったら、まずは、巨大地震や巨大津波に備えた防災に金を使うべきだろう。

 オリンピックは、究極のエンターテインメントだと思う。大震災で多大な被害を受けた我が国にとっては、オリンピック開催というのは確かに悲願だろう。エンターテインメントの重要さをアピールできるのも事実だ。しかし…。

 巨大地震が来るかもしれない、防災に力を入れろ――そう本気に思っていたら、間違っても東京でオリンピック開催なんて無責任なことは言えないはず。そんな巨大地震が来る可能性のある国、都市で五輪をやろうなんて思う奴はいない。ハッキリ言って選手だってイヤだろう。

 やはり、現実を見た場合、やはり災害を前にしたらエンターテインメントは限界がある。

(渡邉裕二)

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