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映画館のCM「デジタルシネアド」、調査で広告効果が明らかに

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映画館のCM「デジタルシネアド」、調査で広告効果が明らかに

2017年01月05日

 映画館のスクリーンで放映するCM「デジタルシネアド」の広告効果に関する調査結果が12月2日発表された。TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われたセミナー「デジタル化するマーケティング戦略、その最新動向」(主催:公益社団法人日本マーケティング協会)の中で行われたもので、2016年5~6月にボルボと花王が出稿したシネアドをもとに、様々な調査結果が説明された。



映画館に集う人は発信力がある

 セミナーでははじめに、中央大学ビジネススクール教授で、デジタルシネアド・コンソーシアム(DCAC)準備会代表の田中洋氏が、現在のマーケティング事情を説明した。田中氏は、経産省の「特定サービス産業動態統計調査2015」にある日本の広告費の推移の中で、近年成長著しいインターネット広告のほかに、シネアドを含む「プロモーション広告費 展示・映像」分野も2015年の年間広告費が前年比7.7%増と伸長していることを示し、「この分野はサンプリングやポップアップストアが含まれる。プロモーションメディアというのは今かなり伸びており、着目しないといけない」と指摘した。

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DCAC準備会代表 田中洋氏


 また、動画広告やプロモーションメディアが存在感を増す中で、「コンテンツをどう活用するか」も重要だとし、飲料メーカーのレッドブルを例に挙げ、「エアレースなどを開催するレッドブルは、映像制作会社や権利元も所有しており、コンテンツにかなりの資金を投入している」と、映像の持つ訴求力の大きさにも言及。それに加えて「オーディエンスの質」も鍵を握るとし、「『君の名は。』や『シン・ゴジラ』は、最初に観に行った人たちが口コミで広げていった。この人たちはすごく発信力がある。今、音楽などのライブに非常に注目が集まっているが、映画館もライブに似ており、そこに来るオーディエンスの質に着目するべき」と説明した。

 これらの傾向から、田中氏は、映画館CMのシネアドがプロモーション広告として今後ますます効果を発揮していくことを示唆。「DCACの代表を引き受けるにあたり、本当にシネアドは効果があるのかと思い、本調査(ボルボと花王の調査)に入る前に、今年1月に不動産情報サイトが出稿したデジタルシネアドのパイロット調査を実施したが、シネアドを見た人と見ていない人には実に差があった」と、その効果に驚いたエピソードを紹介した。



「ボルボ」の第一再生はシネアド効果で倍以上

 デジタルシネアドの調査結果は、DCAC準備会委員の立花徹也氏(シネブリッジ常務取締役)が説明した。

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DCAC準備委員 立花徹也氏


 この調査は、今年5~6月にボルボの輸入乗用車「ALL-NEW VOLVO XC90」のシネアドを『64‐ロクヨン‐前編』上映時に放映、花王の「ビオレu」を『スノーホワイト/氷の王国』上映時に放映して行ったもの。それぞれ、(1)デジタルシネアド鑑賞者800人、(2)デジタルシネアドを見ていない800人、(3)TVCMで商品を知っている約800人からインターネットでアンケートを回収した。対象者は20~64歳の男女。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県が調査地域。

 比較は、(1)と(3)の人を中心に行った。アンケートではまず、「外国メーカーの乗用車」で思い出す(第一再生)ブランド名を5つ記入してもらったところ、1番目に「ボルボ」と書いた人の割合は、(3)が3.4%だったのに対し、(1)は7.5%と倍以上にアップした。一方で、「ボディウォッシュ」で思い出すブランド名で、1番目に「ビオレu」と書いた人は、(1)が37.7%、(3)が37.1%とほとんど差がなかった。このことから、もともと知名度の高い商品では差異が少ないものの、成熟したブランドを活性化する際には大きな効果が期待できることが明らかになった。



「ビオレu」の健康志向への理解は2ケタ増に

 次に、商品の特性理解を問うアンケートでは、ボルボが「安心・安全性の高い乗用車である」ことを認知した人は、(3)が51.2%だったのに対し、(1)は58.3%で7.1ポイント増。「ステータスを感じる乗用車である」と感じた人は、(3)の37.9%に対し、(1)が51.8%で13.9ポイント増になるなど、全ての面でボルボに対してポジティブ意向がアップ。ビオレuは、「肌にやさしいボディウォッシュである」と理解した人は、(3)が66.6%で、(1)は77.9%と11.3ポイント増。「健康肌を考えて作られたボディウォッシュである」ことも、(3)が51.5%に対し、(1)は64.4%が認知するなど、全ての項目で8ポイント以上の増加を見せた。このことから、「ブランド属性の理解」も一貫して高くなることがわかった。

 また、購入意欲に繋がるか否かのアンケートでは、ボルボの場合、「購入検討意欲」が(3)は17.4%で、(1)は24.7%と7.3ポイント増加。「来店意向」も、(3)は11.3%だったが、(1)は20.6%と9.3ポイントも上昇していた。ビオレuは、「購入検討意向」は(3)が51.2%で、(1)は65.1%と13.9ポイントアップ。「購入意向」は、(3)が42.0%で、(1)が54.5%と12.5ポイントもそれぞれ増加した。このことから、視聴者の態度変容にも効果があることが実証された。DCAC準備会の田中代表は「ボルボさんの場合、第一再生に効いてきた。ビオレuのように日用品の場合、どういう属性でブランドが評価されるか、という面で大きな効果があった。これは、映画に行く人の質の高さも相まって、こういう結果になったのではないか」と同調査の結果をふまえながらシネアドの特徴を分析した。



調査協力会社も効果実感、有効な出稿を模索へ

 さらに、立花氏はデジタルシネアドの世界の市場動向も説明した。それによると、2015年は、アメリカのシネアド広告費は7億1600万ドル(約796億1920万円)で前年比13.4%増となり、過去最高。2位は中国の4億1865万ドル(約465億5388万円)で前年比63.8%増と驚異の伸びを見せ、こちらも過去最高。以下、ポーランドの4億0841万ドル、イギリスの3億4035万ドルと続き、日本は10位前後の約5000万ドル(約50億円前後)と言われている(いずれも各国メディアニュースを参考にSAWA〈スクリーン・アドバタイジング・ワールド・アソシエーション〉が算出)。ちなみに日本のシネアドでは、2015年は情報・通信関連、ソーシャル系を含むゲーム関連、自動車関連の業種から出稿が伸長。ラグジュアリーブランドも増えた。また、年々長尺の出稿数が増えているという。

 アメリカでは、優秀なシネアドを表彰する「デジタル・シネマ・メディア・アワード」が毎年開催され、2016年の最高賞は、スマートメーターを使って使用ガス・電力をコントロールするキャンペーンのCMが受賞。ガスや電気のキャラクターが映画館で大暴れ、4Dシアターの座席からは次々とガスが噴出し、その騒動をスマートメーターを使って収めるというコンセプトが評価され、見事グランプリに輝いた。日本では、『アメイジング・スパイダーマン2』の公開時に、メントスの出稿によりプロジェクション・マッピングを使ったシネアドが行われ、これも大きな話題となった。

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写真右がボルボ 関口氏、中央が花王 石井氏、左が司会の田中氏


 この調査に協力したボルボ・カー・ジャパンの関口憲義マーケティング部ディレクターと、花王の石井龍夫デジタルマーケティングセンター センター長もセミナーに出席し、シネアドについて、関口氏は「TV(のCM)に合わせて、シネアドでどうトッピングするかがポイント」と語り、石井氏は「こんなに効果があるのかと思った。どうシネアドを使うのか、継続的に考えていかないといけない」と、それぞれシネアドの効果的な出稿方法を思案している様子だった。

 なお、田中氏が代表を務めるデジタルシネアド・コンソーシアム準備会は、デジタルシネアドのメディア価値(効果性、優位性、独自性等)を、リサーチをもとにマーケティング視点から立証する目的で、2016年の年初に研究者と実務家が集まって結成。本格始動に向けて準備を進めている。 了


取材・文/構成 : 平池 由典



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