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第30回東京国際映画祭 久松猛朗フェスティバル・ディレクター “アートとエンタテインメントの調和”目

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第30回東京国際映画祭 久松猛朗フェスティバル・ディレクター “アートとエンタテインメントの調和”目指す

2017年06月22日

東京国際映画祭 久松氏.jpg



 日本を代表する映画祭「東京国際映画祭」は、今年で節目の第30回を迎える。この記念すべき年に、元ワーナー・ブラザース映画副代表で、松竹常務取締役を務めた久松猛朗氏(=写真)が、映画祭を指揮する「フェスティバル・ディレクター」に就任した。

 1985年に創設され、32年を経過しようとする同映画祭の置かれた状況は刻一刻と変化している。アジア地域では、中国の上海、北京、韓国の釜山などの国際映画祭が台頭しており、改めて東京国際映画祭の存在感を示していく必要がある。また、新たな映画ファンの取り込むためにも、国内でより強く映画祭の魅力を発信していくことも不可欠だ。

 開催まで半年を切ったいま、久松氏は今回の映画祭の構想をどのように練っているのか。考えを聞いた――。





現場に近い立ち位置で


――久松さんは、15年から始まった東京国際映画祭の映画製作プロジェクト「アジア三面鏡」の統括プロデューサーを務められていました。その流れで今回のフェスティバル・ディレクター就任が決まったのでしょうか。話はいつ頃あったのでしょう。

久松 去年の夏ぐらいですね。前任の椎名(保)さんが第29回をもって退任されると申し出られて、主催するユニジャパンの迫本(淳一)理事長(松竹社長)と、映画祭実行委員会の島谷(能成)委員長(東宝社長)が話され、色々な事情を踏まえて僕を選ばれたんだと思います。ただ、今までの方は、だいたい背景に会社をお持ちなので(前任の椎名氏は角川書店取締役相談役時に就任)、バックが何もない僕でいいのかな?という思いはありました。そんな話を椎名さんにしたら、「逆に背景がないのがいいんじゃないか」ということも言われました。

――映画祭に専念できるというということですか。

久松 そうですね。これまでは、本業をお持ちで、上から俯瞰的に映画祭を見るという立場の方が、「ゼネラル・プロデューサー」や「チェアマン」などの役職名で担当されていましたが、僕の場合は「フェスティバル・ディレクター」という名称が示す通り、映画祭をトータル的にプロデュースする、もっと現場に近い立ち位置のイメージです。

――名称はご自身で決められたのですか。

久松 いえ、最初から「こういう名称で」ということでした。ですから、おそらくそういう(より現場に近い位置でという)思いも元々あって、僕にオファーをくださったのだと思います。椎名さんはユニジャパンの副理事長として引き続き(映画などのコンテンツ見本市)TIFFCOMを担当されるので、僕は映画祭のプロデュースに特化するという気持ちですし、ピッタリの役職名かなと思います。いま、映画祭の事務所にほぼ毎日来て仕事をしていますよ。好まれるかどうかは別にしてですが(笑)。スタッフのみんなとディスカッションを続け、勉強しながら進めているのが現状ですね。

――依頼されて、すぐに受諾したのですか。

久松 ありがたい話ですし、名誉なことでもあるので、すぐにお受けしましたね。

――迫本さんや島谷さんからは、「こんな映画祭にしてほしい」といった要望はあったのですか。

久松 島谷実行委員長からは「久松さんのカラーを出してください。思うようにやってください」と言われています。やる以上は自分なりのカラーを出していきたいと思います。ただ、今までも順調に進んできた部分はあるので、根本的にガラッと変えるようなことはないと思います。整理し直して、自分が思う重要なポイントは、より積極的にやっていこうという思いです。


アートとエンタメの調和

――久松さんが打ちだした、第30回の基本方針を伺えますか。

久松 スローガンとして「アートとエンタテインメントの調和」を掲げています。

――どういう意味でしょうか。

久松 これは僕が歩んできた道でもあり、強い思いで掲げました。映画産業というのは、「アート」と「エンタテインメント」の2つがないと、成り立たないと思うんです。この2つは簡単に定義できませんが、アート系の映画は、作家の想いや作りたいものが優先された作品だと定義すると、エンタテインメント系映画は、お客さんをどう喜ばせるかという視点で作られた作品だと思うのです。このバランスが重要です。歴史に残っている映画も、アートとエンタテインメントが1つの作品の中で調和していたり、バランスがとれていると思います。映画1本の中でのバランスもそうですし、映画祭全体としても、そのバランスがうまくとれていることが理想だと思います。実は、映画祭スタッフの中では「文化的な側面をもっと強調するべき」という意見が多いんです。彼らは映画をよく観ていますから。文化的な使命を担っていること確かです。でも、僕は、映画祭は年間何十本も映画を観ている人だけを対象にしていては成り立たないという思いがあり、年間1~2回観る人も、大事な映画ファンだと思ってます。この人たちも対象になる、祝祭感のある映画祭にすべきではないかと、明確に僕の方針として挙げさせてもらいました。


続きは、文化通信ジャーナル2017年6月号に掲載。

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