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トップインタビュー:高井英幸東宝(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:高井英幸東宝(株)代表取締役社長

2009年01月28日

本誌 これがたしか6月の公開なんですけど、このあたりから東宝が勢いづいた。あ、その前に「ザ・マジックアワー」がありますけどね。

高井 ええ、「ザ・マジックアワー」がよかったです。とにかく、ホップ・ステップではありませんが、「ザ・マジックアワー」と「花より男子」が、夏番組に向けて弾みをつけるきっかけになりました。それ以前の定番の作品、ゴールデンウィークと春休みの「ドラえもん」、ゴールデンウィークの「クレヨンしんちゃん」と、「名探偵コナン」が堅調な成績で来ていましたので、流れはそんなに悪くないとは思っていたんです。それに「クロサギ」も堅かったです。

本誌 もちろん、真打ちは「崖の上のポニョ」なんですが、最初、社長はどのぐらいを見ていましたか。今だから言えると思うんですが。

高井 どのぐらいというよりも、まず100億円は超えたいという思いでしたね。ただ「ハウルの動く城」が173億円いっているわけですから、とりあえず100億円のバーを余裕で超えれば、150億円も狙えるわけですし、150億円のバーを余裕を持って超えられれば、200億円だって夢じゃないと。やはり宮崎アニメの持っているポテンシャルというのは、最低でも100億円からスタートだと。

東宝の強さとは

本誌 それなんですよね、東宝の強さというのは、数字を読めることにあると思うわけです。「ザ・マジックアワー」も三谷さんなんで、三谷さんも「THE有頂天ホテル」でブレイクしちゃったわけですよ。そうすると、数字的に読めるっていうのが僕らにはあるわけですよ。

高井 「ポケモン」もそうですよね。「ポケモン」は最初に大変なブレイクの中でスタートしました。その人気をいかに落とさないようにしていくかというのがずっとテーマだったんです。普通、ホップ・ステップ・ジャンプなんですが、「ポケモン」はジャンプからいきなりスタートしたので。

本誌 つまり、両方あると考えてもいいんですね。最初からボーンと広げちゃって、それを維持していくものと、だんだん上がってホップ・ステップ・ジャンプ型のものを育て上げていくという形。それは東宝の番組を組んでいく中で、非常に重要でしょうね。

高井 それはやっぱり作り手の方の思いの中に、もう一つ上を狙おうという気持ちがないと我々、売り手の方にも伝わって来ないですよね。「ポケモン」の場合、小学館、㈱ポケモンをはじめとする作り手が新シリーズを立ち上げたり、いろいろと新しい戦略を考えて続けてきました。「ドラえもん」にしてもずっと順調に来ているようですけれど、やっぱり途中で上がり下がりがあったんですよね。その都度、作り手がどうしたら来年につなげられるかということを真剣に考えて作っていくという、長期的な戦略があったからこそ、テレビアニメも含め、リニューアルもしたわけですよね。それはおそらく、賭けだったと思います。しかし、それをしないと「ドラえもん」はこの先は続かないという思いがあった。相当のリスクを背負ってそこを超えて来たという背景がある。作り手に長期的に持続させようという気持ちがあれば、ちゃんとした戦略が立てられると思うんです。

心配も杞憂に

本誌 そういう言い方で言うと、僕は中島監督の「パコと魔法の絵本」もその1本だと思うんですよ。「下妻物語」があって、「嫌われ松子の一生」があって、「パコと魔法~」にいくという。これはホップ・ステップ・ジャンプという言い方ができるかどうかわかりませんけれども、だんだんだんだん観客の幅が広がって、今度の場合は24億円いって、アニメを除くテレビ東京の製作作品としては最高の興収らしいです。「クイール」を抜いて、テレビ東京の実写作品のトップになったわけですから、素晴らしいですよね。

高井 中島監督にすれば、「パコと魔法~」を作るために今までがあったと思っているかもしれません。ただ我々、今年一番心配したのは「パコと魔法~」でした。今までシュールな映像でお客様の支持を受けてきた中島作品ですが、今度の企画は完全なファンタジーです。どんなにシュールに描こうが、ファンタジーをシュールにやるのは当たり前ですから。だから、どうなるのかなという懸念はあったんですね。しかし、かなり完成度の高い作品を作ってくれました。幸いお客様にも支持されたんで、やっぱり監督のファンがけっこういるんだなということがわかりましたね。

本誌 あともう1本、「デトロイト・メタル・シティ」というのが東宝の企画から上がって、これも23億円いくということで、これも今年の一つ、作品の中身も含めて、東宝で特筆すべき1本だったと思います。高井社長はあまり好きじゃない作品かもしれませんけれども。

高井 僕は「もうちょっと毒があってもいいんじゃないか」と最初見た時、言ったぐらいだったんですよ。でも、ちょうどこれぐらいがよかったみたいです。やっぱりタワーレコードさんやHMVさんが宣伝キャンペーンにあれだけ協力していただいたんで、CDショップに集まっている層がかなり来てくれた。だからこそ渋谷(シネクイント)に若いお客様、特に普段映画を見る習慣がない高校生、中学生もいっぱい来てくれて劇場の新記録が出ました。やっぱり作品次第では、映画から離れていると言われている層も、来てくれるんですよ。つまり、映画離れではなく、彼女たち、彼らのニーズに合った作品がないだけなんです。そういう層に対してもっと作品を出していかなくてはいけないと思います。

「東宝」イメージ脱却へ

本誌 これは、テレビ局が入っていないということもありましたけれども、東宝が企画を立てて、こういう形で映画を作って当てたというのは、非常に大きかったんじゃないかなと。ちょっと東宝らしからぬ(笑)。「隠し砦の三悪人」はわかるんですけど。

高井 いや、それがもう違うんですよね。「東宝」というイメージをもう変えなきゃいけないと思うんですよ。お客様から見たら、別に東宝の映画だから、東映、松竹の映画だから見に来るわけじゃなくて、たまたま公開されている映画が話題になっているかどうか、面白いかどうかですよね。

本誌 でも、それがほとんど東宝というのはどういうことなんでしょう(笑)。

高井 いや、それは結果的にたまたまそうだったというだけの話であって、東宝だから行こうということではないと思います。今、興行の中心はシネコンです。いろんな映画と一緒に上映しているわけですから。昔のように東宝作品の専門館に来るというのだったらわかりますが、洋画を含め何でも上映している映画館の中で作品を選ぶわけですから、お客様の選択肢にはどこが配給会社ということはないと思います。

本誌 ところで来年は32番組とのことですが、いかがですか。

高井 多様な番組を揃えることができたと思います。どれもが期待作ですが、一部だけ取り上げると、大ヒットした「20世紀少年」の続編として「第2章」を1月に、「最終章」を秋に公開します。続編ということでは「チーム・バチスタの栄光」のスタッフ・キャストが再び結集した「ジェネラル・ルージュの凱旋」や若いお客様に支持された「クローズZEROⅡ」も楽しみです。テレビドラマとの連動ということでは「ROOKIES」、「ハゲタカ」、「のだめカンタービレ THE MOVIE」があります。そして超大作として「真夏のオリオン」、「アマルフィ 女神の50秒」、「沈まぬ太陽」があります。来年は松本清張と太宰治の生誕100年にあたるのですが、それぞれ「ゼロの焦点」、「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」を公開します。そしてまだ発表できませんが再来年2010年の企画も進んでいるところです。

※全文は「文化通信ジャーナル1月号」に掲載

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