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『ベトナムの風~』シンポ付試写に大森監督

【FREE】『ベトナムの風~』シンポ付試写に大森監督

2015年08月27日
 日本、ベトナム合作映画『ベトナムの風に吹かれて』(アルゴ・ピクチャーズ配給)のシンポジウム付き試写会が25日、東京・新宿の明治安田生命ホールで行われた。

 同作は、ハノイ在住の日本語教師・小松みゆき氏が、認知症の母とのベトナム暮らしを綴ったノンフィクションの映画化。大森一樹監督がメガホンをとり、松坂慶子が主人公を、草村礼子が認知症の母を演じる。

 上映後のシンポジウムには、日本、ベトナム双方の監督やプロデューサー、キャストらが参加。「映画づくりを通じた、草の根の文化交流」をテーマに話し合った。仏領インドシナ(現ベトナム・ラオス・カンボジア)が舞台の仏映画『インドシナ』のベトナム側総指揮だったダン・タット・ビン監督兼プロデューサーは、「ベトナムではハリウッド映画しか上映されていない。アクションやホラーがほとんど。そんな中、日本側から脚本を読ませてもらい、映画化すべきだと思った。テーマは地味だが、高齢化はどの国でもぶつかっている問題。先日のハノイでの試写会で、ベトナム人観客にも大変歓迎された」と語った。プロデューサーのグエン・ティ・ホアイ・オアイン氏は、「地方へも細かく回る講演付きの公開を考えている」と、ハリウッド映画全盛のベトナムにおける上映展開について述べた。

 大森一樹監督は、「ベトナムにはかつての日本映画にいた俳優さん、森繁(久彌)さんや三木のり平さんみたいな人がたくさんいる。駅前シリーズ、社長シリーズみたいなノリで、古き良き日本映画の復活じゃないかなと思っている。これはベトナムに行ったからできたキャストだし風景。僕はやっていて幸せだった」とベトナム人俳優との仕事を振り返る。主演の松坂慶子は、「ベトナム語の台詞の意味がわからないと感情がこもらない。いまのじゃ伝わらないって、先生にダメ出しされた。早朝からロケに行って、合間に先生について夜までずっと練習して、書いて。先生に本当にお世話になった」と、ベトナム語習得の苦労ぶりを明かした。

 最後に、岡田裕プロデューサーが総括。「ベトナムがアクションとホラー以外ダメと言われるように、日本でも漫画原作や若いスターが主演の映画がほとんどだが、幅広いジャンルがあってこそ。大人のロマンス、中年の新しい生き方、信頼し合う隣人関係。地味な企画で、(観客が)入りにくいけど、勝ってやるぞという思いは、日本もベトナムも一緒。映画を一緒に作るのは、交流という意味では非常に有効な手段。言葉がわからなくても心情が通ずる。非常に短い期間だけど親友のようになる。これこそが映画の良さだとつくづく思っている」と締め括った。10月17日より有楽町スバル座ほか全国ロードショー。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。