●新連載のお知らせ
昨年、菊地凛子主演映画『ハイヒール』を製作・公開し、今年6月から映画製作拠点を米ロサンゼルスに移した「Lander株式会社」のMutsumi Lee(イ・ムツミ)CEOによる連載を今号より開始します。米国での映画製作を目指し、日々LAで業界の動向をチェックしているMutsumi氏が、最新のトレンドや注目情報をお届けします。(月1回程度の掲載を予定)
皆さんはじめまして。Lander Inc.代表のMutsumiです。私は映画製作やマーケティングなどの新規事業開拓をするべく、今年の6月にロサンゼルスに拠点を移しました。日頃から海外は頻繁に訪れていますが、やはり住んでないと知ることができない情報が沢山あります。この連載では、私がロサンゼルスに住んでいるからこそ知り得る情報や、見えてくる事象から、日本のみなさんのビジネスヒントになりそうなものを選りすぐってお届けしたいと思っています!
8月15日に『クレイジー・リッチ!』が全米公開し、初日の売上で500万ドルを叩き出しました。初週の興行は1位、すでに続編の製作も決定。このあたりの情報は日本のニュースサイトでも速報されているので、みなさんもご存知のことでしょう。
いったいなぜ、ここまで成功したのでしょうか?
先日、私の友人のコリアンアメリカンの女性が、私を含め十数人の友人に一斉にメッセージを送ってきました。
「水曜日についにクレイジー・リッチ!が公開するけど、週末に一緒に観に行かない?もしその前に観ていたとしても、初週末の売上に貢献することは、私達にとって、とても重要なはず!」
アメリカで生まれ育ったアジアンアメリカンにとって、アジア人のアメリカでの地位向上は、とても大きな問題なのです。島国日本からやってきた私には、ピンと来ないのが正直な感覚ですが、本作の大ヒットによって、それがどれだけ多くの声を代弁するものなのかがわかりました。
公開前にアメリカで本作を応援する動きは、個人的なものから、SNSでのムーブメントまで大小様々に発生しています。特に#GoldOpenというハッシュタグのムーブメントは、本作の売上に大きく貢献したようです。コリアンアメリカンの歌手エリック・ナムの兄弟が、アトランタのある劇場上映を買い取ったことが話題になり、#GoldOpenが盛り上がるきっかけにもなったようです。
頻繁に目にする言葉は「SUPPORT」。セレブから一般人までアジアンアメリカン達が本気で応援しています。医者やオタク、忍者などアジア人のステレオタイプなイメージではなく、普通のラブコメの主人公であることも、大きな意味があるのです。
ただ本作にも問題がないわけではなく、中華系の役を東南アジア系の俳優がしているとか、シンガポールなのにインド系がいないとか様々な議論は巻き起こっていますが、まずはやっとスタート地点に立ったところ。これからもっと多くの議論ができる機会を作って行きたいものです。
アメリカでのムーブメントは、アジアンアメリカンのためだけのことではありません。彼らは全てのアジア人の存在を声を大にして叫んでいます。恥ずかしながらハリウッド映画にアジア人があまり出ないことに、さほど大きな危機感を持っていなかった私…。私もひとりのアジア人だということをしっかりと自覚して映画を応援しなければと思い、初週に観賞しました。
ハリウッドでは人種問題というテーマは映画のヒットの一要素となり始めています。世界市場を狙うコンテンツを作るためには、世界各国で生きる人達のリアルな声を聞き、肌感覚として持つ必要があると強く感じました。世界を狙う日本のコンテンツメイカーの皆様にとっても「現地では今何が起きているのか」を知ることは、企画や製作に大いに役立つと思います!
最後にちゃっかりと告知を…、Lander Inc.のマーケティングチームは、LA、パリ、ドイツ、ドバイ、タイなどに点在しています。世界の動向、現地情報、マーケティングリサーチなどはお気軽にご相談くださいませ。