【FREE】第35回日プロ大賞授賞式に塩見三省や奥田瑛二ら
2026年06月24日
当社特別編集委員・大高宏雄が主宰する映画賞「第35回日本映画プロフェッショナル大賞」の授賞式が20日(土)、テアトル新宿で行われ、大いに盛り上がった。
この日、もっとも大きな拍手が起こったのは、特別功労賞を受賞した
塩見三省(『平場の月』『劇映画 孤独のグルメ』及び長年の功績に対して)の登壇。2014年3月に脳出血で倒れ、思うように身体を動かすことのできない塩見は車いすと杖に頼ってこの授賞式に参加。観客やスタッフらが見守る中、壇上のマイクまでたどり着いた塩見は、「この場に立っていられることを嬉しく思う。病に倒れ、それからこのようなままならない身体になり、10年が経った。私の周りからは色んなもの、色んな人が消えていった。ある種の孤立をした。1年後にある映画からこの身体にお誘いがあった。それから10年の間、毎年映画からの誘いが続いた。私の唯一の居場所としての毎年一本、二本の映画が、どれほどの支えになり、励みになったことか。この1年、松重(豊)さん、土井(裕泰)さんが、私の新しい世界を切り拓いてくれた。この受賞は、私がその新しい世界に思いきって舵を切った、その成果が作品のなかにあり、その在り方が皆さんに認められたものだと思う。本当にありがとうございます」と力強く述べた。そして、テアトル新宿の木幡明夫支配人から花束を受け取った。
作品賞の『「桐島です」』からは、
長尾和宏(製作総指揮)と
梶原阿貴(脚本)が登壇した。主演男優賞の
毎熊克哉も登壇。高橋伴明監督は療養のため不参加となった。長尾と梶原に対する花束プレゼンターを奥田瑛二。奥田瑛二は、「嬉しい。何が嬉しいって同胞の高橋伴明の作品だから」と喜び、盟友・高橋伴明監督の容態について「退院したかどうかは知らない。でも、元気だよー、とは言っていた。次の映画を考えていることでしょう。『「桐島です」』は、私の世代的にど真ん中の話。こういう男だったんだ、こういう男がこういうことをしたんだ、と。高橋伴明監督という男は世の中に対する反骨とイデオロギー、そうしたものを凌駕したところで映画を撮り続けていると改めて解釈した」と述べた。自身の父が爆弾犯であるという梶原は「桐島聡の隣にうちの父の写真がずっと貼られていた。脚本の話が来たときに、私にしか書けない話だと思った。桐島聡が50年前に何を考えてあのようなことをしたのか。それは50年経った今にも直結している問題。そのことをよく考えてもう一度映画を観ていただけると、おそらく違う楽しみ方があると思う」。長尾は、「高橋伴明監督、脚本・梶原阿貴、主演・毎熊克哉。このトライアングルでなければできなかった映画」としみじみ語った。毎熊克哉への花束は、出演者の海空が渡した。海空は、高橋伴明監督が“毎熊でなければ演じられなかった”としきりに口にしていたエピソードを披露し、お祝いの言葉をおくった。毎熊克哉は「21歳で役者を始めたばかりの時、高橋伴明監督の『禅 ZEN』という映画にエキストラで出演したことがある。それが僕にとって初めてのプロの映画の現場であり、高橋伴明監督は僕にとって役者人生の始まりの存在」とキャリアの原点を振り返り、「この賞を手にして思うのは、高橋伴明監督のもとに集まった超一流のスタッフの皆さんが用意してくださった環境がなければ、桐島聡という人物をやることができなかったこと。主役としてそうした映画の現場にどっぷりと浸かって演技の経験ができたことは、今後の映画人生においてものすごく大きな糧になるはず」とした。
主演女優賞は、『平場の月』の
井川遥。着物姿で登場した。土井裕泰監督(花束プレゼンター)が駆けつけ、「褒められるべき仕事だと思っていたので、自分のことのように嬉しい。50歳の男女のラブストーリー。井川さんが演じた須藤という役は、途中で病気になり人工肛門を付ける役どころでもある。井川さんは相当な覚悟を持ち、当事者の方に話を聞くなど沢山の準備をして臨まれていた。俳優として自由になっている感じがあるので、これからも色んな役に挑戦されるだろうし、色んなところで井川さんを見ていきたい」とコメント。井川遥は、「須藤のセリフに“夢みたいなことだよ”というものがある。まさに今日は私にとって夢のよう。役者になり、四半世紀。ここまで続けることを想像していなかった。また、結婚や子育てがあり、逸れたところで人生を歩んだ時間も多かったが、それら全部がひだになり、役の上では核になった感覚を持っている。今後も精進していきたい」と感慨深い様子で話した。
その井川遥も出演する『見はらし世代』の
団塚唯我監督が新人監督賞を受賞。森直人氏(映画評論家/花束プレゼンター)は、「令和最初の『東京物語』だと思うほどほれ込んでいる」「最高の長編デビュー作」と激賞。団塚唯我監督は、「またこのような場所に戻ってこられるように映画を撮り続けていきたい」と誓った。
監督賞は『ゆきてかへらぬ』で
根岸吉太郎監督が獲得。メイキングを担当した飯塚花笑監督が花束をもって登壇。飯塚監督は東北芸術工科大学で根岸監督に師事。そうした関係性のもと飯塚監督は、「根岸監督の背中を見ていると、映画ってすごく楽しいものなんだな…とそんな思い違いをして、道を踏み外した(苦笑)。根岸監督がいなければ映画を撮っていない。恨みと感謝を込めておめでとうございます」と親しみを込めた言葉で祝った。根岸監督は、「なぜ貰っちゃったのか。この会のフライヤーに、ベストテンが書いてあって、そこに(『ゆきてかへらぬ』が)載っていない。作品が評価されていないのに監督が評価されるのはどういうことかと考えた。これは僕の15年ぶりの映画。15年ぐらい前に、田中陽造さんのこのホンを映画にしたいと思ったが、実現できずにいた。つまりね、15年も間を空けずに、また撮れよということだと思う」と語った。
特別賞は、『アジアのユニークな国』で、
山内ケンジ監督と
野上信子プロデューサーが登壇。花束プレゼンターは主演の鄭亜美をはじめとする、多数のキャスト・スタッフ陣が務め、受賞を祝った。山内監督は、「僕は基本的にはCMディレクターをずっとやってきて、それから演劇もやって、時々映画も。肩書きで言うと、映画監督って言っていいのかずっと迷っていたが、こんな立派な賞をもらったからには今後、映画監督を一つ格上げして書いていこうと思う」と喜んだ。
なお、特別トークイベント「日本映画とミニシアター」の模様は後日、別途掲載する予定。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。