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第25回外通協研修会(前編)/「デジタル保管の現状と問題点」

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第25回外通協研修会(前編)/「デジタル保管の現状と問題点」

2011年07月27日

第25回外通協研修会 詳細

◆(前編)デジタル保管の現状と問題点(7月27日アップ)◆
◆(後編)日本におけるVPFの仕組みについて(8月アップ予定)◆


 毎年恒例の、第25回「外国映画通関連絡協議会 研修会」が7月6日、IMAGICAの第1試写室で行われた。今回は、主に『デジタルシネマ』に主眼が置かれ、映像業界の現状・問題点等が各講師によって説明された。当頁では、同研修会で「デジタル保管の現状と問題点」について説明した根岸誠氏(東映ラボ・テック 映像プロセス部長)と、「日本におけるVPF(ヴァーチャル・プリント・フィー)の仕組みについて」を説明した堤修一氏(ブロードメディア・スタジオ プロダクション・カンパニー プレジデント)の話を、2部に分けて掲載する。(前編=根岸氏/後編=堤氏)



「デジタル保管の現状と問題点」

(東映ラボ・テック 取締役  映像プロセス部長 根岸誠氏の話)

東映ラボ・テック根岸氏.jpg
東映ラボ・テック 根岸氏
 ここ最近、特に今年になってから、フィルム上映とデジタル上映の併用が顕著になってきた。これまでは、フィルムで撮影して、フィルム原版にしたものは、劇場でもフィルム上映だった。また、デジタルで撮影したものも、デジタル対応スクリーンが少なかったため、結局は一旦フィルムに焼いて、フィルム上映するのが主流だった。ところが去年今年に入って急速にデジタルプロジェクターが普及してきた。この結果、より多くのスクリーン数を確保するためには、フィルムとデジタルの両方を作る必要が出てきた。そうすると、それぞれに問題点が浮かび上がってきた。

 まず、フィルム完成原版作品(をデジタル上映する時)の悩みは、デジタル上映用のパッケージを作る際に、時間もさることながら、数百万円単位の費用がかかってしまうこと。丁寧に作ると、数千万円単位のお金がかかってしまう。この費用を、製作サイドなのか、劇場サイドなのか、どこが出すのか?という問題。

 逆に、デジタル完成原版作品は、劇場上映終了後、このデジタルの元素材を残す方法が決められていないことが悩み。フィルムならば、ネガやマスターポジがある。しかしデジタルしか上映していない作品は、明確な原版という形状が決まっておらず、それぞれのポストプロダクション、コンテンツホルダーが相談しながら、それぞれの残し方をしている。

 (残し方の形式を)ごく単純に分けると、デジタルソースマスター(DSM)と、デジタルシネマディストリビューションマスター(DCDM)、デジタルシネマパッケージ(DCP)の3つがある。これらはそれぞれ持っている役割が違う。まずDSMは、その名の通り「ソースマスター」。これは一番基になっているデータで、非圧縮で重い。映像データと音声データも分離しているので、二次利用には使いづらいが、最も撮影の素材に近いデータ。ここから、色々な使用目的に応じてデータを書き換えていく。例えばフィルムネガを作る場合だと、このDSMからフィルムレコーディングを経て、フィルム原版を作っていく。そういう意味では、これが基のデータとなる。(下表参照)

それぞれのデータの役割.jpg


 デジタルシネマにするためには、DSMからDCDMというマスターを作る。デジタルシネマの場合、上映する「色」の表現環境が違うので、それに合わせたマスターを一旦作らなければいけない。これがDCDMというデータ。しかし、このDCDMもまだ重く、音のデータも分離しているため、上映には向いていない。

 ここから、上映するために必要なDCPというデータを作っていく。このデータになって初めて、上映できる環境になる。このDCPという規格が、今までのポジフィルムと同じような扱いとなる。これはJPEG2000という圧縮をかけ、DCDMの約8分の1~10分の1ぐらいの軽いデータになっており、上映に向いている。これがハードディスクで各劇場に配られるのが現在の主流。

 3種類のデータは、それぞれ使用目的が明確に分かれており、DCPは上映用、DCDMはDCPを作るための基データ、DSMは撮影データに最も近いデータ、と大別できる。

 では、どの形式で保存しておけばいいのか?というのが、問題点の中心になっている。今は規定がなく、3種類のどれをもってデジタル原版とするのかが決まっていない。ちまたでは、「上映用のDCPを残しておけばいいのではないか」という声があるが、例えば5~10年後にデジタルシネマが進化し、より色の表現が豊富なDCPが出来てしまい、そっちに主流が替わった場合、今のDCPは原版と言えるのか?という意見もある。DCPはすでに圧縮した形で、特殊なラッピングをしてあるので、ここから映像を加工する場合には、アンラッピング(解凍)しなきゃいけない。簡単にラッピングは取れないし、取れても映像に傷みが出る可能性もあり、あまり原版には向いていないかなという印象。じゃあ、保存はDCDMがいいのか?というと、これはデジタルシネマの上映に特化した色表現になっている。二次利用のことを考えたら、DSMの方が良いのでは?という考え方もある。結局どれがいいのか? 現在はこういう状況で、この数年で決めていかなければいけない問題。

 ちなみに、今フィルムの上映をしていないものは何で残しているのかと言えば、放送用、あるいはDVD、ブルーレイ、配信用のストリーミングに則したものを、HDCAM‐SRという、HDのテープに保存しているケースが多いよう。間違いなくビジネスになるものは、皆さん必要経費としてお考えになっているようだ。これを映画のデジタル原版として認めるのかという点については、今後も考えていかなければならない。

 HDCAM‐SRで残っていると言っても、現状はもう一つ「色温度」という問題がある。白の色をどのポイントに置くのかを「色温度」という表現を使っているが、デジタルシネマの場合、通常この色温度は6500K(ケルビン)が標準規格となっている。これは世界標準なので、本来はHDCAM‐SRに、この色温度で保存しておくべき。しかし日本国内での二次利用を考えた場合、放送に関しては、運用基準が9300Kとなっている。色温度を(9300Kに)変換したものをHDCAM‐SRに保存しているので、色が変わってしまう。例えば、日本で作った映画を海外で売ろうと思った場合、海外にHDCAM‐SRをコピーして送っても、海外は6500Kで統一されているため、色が変わってしまう。なので、コンテンツの利用目的がはっきりしている会社は、6500と9300の2種類を残しているところもある。しかし、概して9300だけを残している場合が多いように思う。どちらが良い悪いではなく、海外に売れるものは両方作っておき、そうでないものは片方しか作らないという考え方もある。

「何に保存するのか」もテーマに

 また、保存する形式ももちろんだが、「何に保存するのか」も大きなテーマになっている。デジタルシネマのデータは、すでに膨大なものがポスプロに眠っているが、私どもの東映デジタルセンターにおいても、バックアップサーバーには容量に限りがある。そこで、2テラくらいの小さなハードディスクを大量に購入して、そこに入れていっているのが現状だが、これも怖い状況だ。単体の小さな箱型のハードディスクは、通電している間は大丈夫だが、電源を切って置いておくと非常に不安定。一番怖いのは、使おうとして電力を流した時に壊れてしまうパターン。その対策のためにどこのポスプロも、同じデータを二つ以上の小分けしたハードディスクに分けて保存していると思われる。私どもも、似たような状態で保存している。すると、倉庫がハードディスクの山になってくる。この状態が続いているので、今後どうやって保存していくのかも大きな問題だ。

 では、これからは何に保存するのか。一つは、従来のビデオテープによる保存。ところがビデオテープは、どうしても使うテープに依存してしまうので、技術が次に進化してしまうと、そのテープが使用不能になってしまう。歴史的に見ると、1インチの時代を経て、D1、D2、D5も製造中止になり、ものによってはメンテナンスも中止になっている。それらのテープは、持っていても再生できないこともある。現在使っているHDCAMやHDCAM‐SRについても、将来的には同じような経過を辿るのではないかと予想される。そのため、ビデオテープでの保存は限界があるのかなと感じている。

 色々な方の意見として多いのは、ファイルベースでの保存。ただ、ファイルベースの保存は、非常に広範囲に渡る。ファイル形式は数限りなく存在するので、選択するのが困難だ。しかし、選ぶにあたって、いくつかの基準はある。

 まず大きな基準として、「どういう入れ物に入れておくのか?」。中身ではなく、ラッピング用のフォーマットのこと。例えば、よく知られているのはQuick Time ムービーファイル。中身のデータの種類はたくさんあるが、外から見ればみんなQuick Timeにラッピングされている。このように、一般的に普及しているものが、ラッピングのファイルとしては重要視されている。普及していないものは、見る環境が少ないので致命的。できるだけ見る環境の多い形式で保存していくことが大事だ。QuickTimeのほかに普及率が高いのは、MXFというラッピング形式。日本の放送局は、今年からCMのファイル納品をスタートさせたが、これのラッピング形式がMXF。これも比較的普及してきている。ラッピング形式は、これら主流のもの中から決まっていくと思われる。

 一方、その中の具体的なデータについては、コンテンツホルダーがそのコンテンツをどれぐらい重要視しているのかで変わってくるため、色々な形式が混在するのだろうなと思う。デジタルシネマのデータの中で、一番基になるDSMは連番ファイルで出来ており、保存形式としては最も精度が高いと思う。しかし、二次利用しづらいので、しやすいファイル形式を皆さん模索している。これは世界的にも強い関心事で、ヨーロッパや北米でも色々議論されている。

 ファイル形式を選ぶ上で、ビットレート(データの転送レート)を考える必要もある。今、日本のCM放送で使うファイル形式は、50メガbpsぐらいを目標にしている。CMの場合、放送局はソニーのXD‐CAMのコーデック、パナソニックのAVC‐intra、それと、東芝のGF‐PACK。これらを放送用のファイルフォーマットとして採用しようとする動きが出ている。そうすると、コンテンツホルダーは、放送はもちろん、それ以外にも(コンテンツを)使うわけだから、放送のフォーマットよりも品質の高い状態で保存しておかなければならない。

 現在、比較的よく言われるのが「400メガbpsあれば大丈夫」ということ。非圧縮のもののビットレートは、約1・2ギガのものが多い。すると、400メガは3分の1。このぐらいの圧縮率だと、二次利用としてほとんど問題ないという認識の方が多いよう。最低でも200メガぐらい。ようは、200~400メガぐらいであれば、保存用のファイルデータとしては十分活用できるのではないか、というのが、多くの人の共通認識。ただ、圧縮のコーデックはこの2年ぐらいで目を見張るぐらい進化していて、例えば2年前の200メガぐらいの圧縮と、現在の50メガの圧縮を比べたら、今の50メガの方が良いこともあり、ビットレートだけでは計れない部分もある。それでも、ビットレートは正直に限界を示してくれるので、今後圧縮の技術が進歩することも考慮に入れても、たぶん200メガくらいを下限にしたところで、保存形式のファイルが決まっていくのかと推測される。

 さらに「何に保存するのか」については、現在3つの方法が考えられる。1つはバックアップサーバー。現在はペタ(テラの上)レベル(の容量)で持たないと機能は果たせないが。こういうレベルのバックアップサーバーを持って保存していくのが一つの考え方。これは24時間通電しているので非常に安定性がある。ただし、東日本大震災の影響により、停電する恐れも出てきたため、そのための無停電装置を入れたら、どれだけ費用がかかるのかという問題が出ている。

 もう一つは、先程申し上げた、小さなハードディスクに保存しておく方法。現在、2テラのハードディスクだと、2万円を切るぐらいまで価格は下がっている。1テラだと1万円を切っている。ハードディスクの価格が安くなっているので、これを大量に買い込んで小分けして置いておく。これは、通電しておく必要がないので、電気代もかからない。ただ、非常に不安定なことが難点で、特に再利用する時の電源投入時にトラブルが起こることが多い。これらの対処方を考えた上で、保存していくのが2つめの方法。

 3つ目は、データテープで保存しておくという考え方。ハードディスクが安くなってきたとはいえ、テープベースで保存した方が容量あたりの単価は安くて済む。現在、データテープとして注目を集めているのが、「LTO5」。「LTO」テープ自体は2000年から運用を開始しているが、すでに10年以上の実績があり、ジェネレーション1からスタートして、この10年間に5にまで進化している。今後も8まで進化のロードマップが出ているので、ある程度計画的に使うことができるデータテープだと思う。もう一つ良い点は、メーカーに依存していないということ。「LTO」テープはIBMが中心になって開発してきたが、ソースコードを全部オープンにし、現在はIBMとヒューレットパッカード、クアンタムの3社が共同で色々なものを開発、色々な約束事の下に作られているため、比較的これが信頼性があるかなと思う。現在は、この3つのどれにするの?という状況で、今後探っていく形になるのかなと思う。(了)

※文中の表は、研修会の配布資料を元に作成。

(後編:『日本におけるVPFの仕組みについて』 ブロードメディア・スタジオ プロダクション・カンパニー プレジデント 堤修一氏の話は後日掲載)


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