「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」が、大ヒットのスタートである。10月7~10日の4日間で、全国動員58万5948人・興収7億2818万1500円を記録した。10月14日までの1週間では、10億円を超える見込みという。配給の20世紀フォックス映画は、この勢いが続けば、最終で30億円を超える可能性があるとした。
30億円を超えれば、今年の洋画で言えば、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」(96億円)、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(89億円)、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」(69億円)、「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」(42億5千万円)に次いで、第5位の興収作品となる。
たいしたものである。男性主体の興行ながら、客層が結構幅広いものになっているのも意外であった。かつての「猿の惑星」シリーズを知っているだろう40代以降の世代はもちろんのこと、20代から30代あたりの知らない世代まで。ファミリー層も集客している。
女性層を視野に、感動を大きな売りにした宣伝展開、これを強化する大量のテレビスポット。それに何より、中身の評価の高さが、ある程度の浸透を見せたことも大きかった。ある層にとっては知名度抜群の作品であるが、その上を目指し、さらなる知名度、関心度の高さを意図した宣伝は、よくやったと言うべきだろう。
ただ、やはり限界もあると、私は感じざるをえなかった。第1作目のリメークであったティム・バートン監督の「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001年)が、45億円を記録しているからである。つまり、もともとこの題材は日本では人気が高かったことが、数字からはっきりと証明されている。それは、過去のシリーズの衝撃がいかに強かったかの証しでもあったろう。
その「PLANET~」からさらに10年が経った今日、「猿の惑星」に対する知名度、関心度は、当然ながら大きな変化を見せたとも言える。多くの人々のなかで、確実にシリーズの存在が薄れてきたのである。そのような時代的な推移を推し測りながら、今回の興行を見ていくとき、このスタート成績は、ぎりぎりの成功であったと言っていいのではないだろうか。
中身の面白さは今や、映画興行を保障しない。それがわが国の映画興行を難しくしている要素の一つである。本来ならば、「猿の惑星」はその面白さでもって、問答無用に客層の壁を破っていっていいのだが、そうはなっていない。難しい問題である。
(大高宏雄)