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【Vol.16】宮崎監督の引退と『あの花』の大ヒット

映画部デスクの「映画興行あれこれ」

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【Vol.16】宮崎監督の引退と『あの花』の大ヒット

2013年09月04日
 9月に入り、アニメに関する大きなニュースが2件続いた。

 ひとつは、宮崎駿監督が引退するとの件。報道を受けて、某興行会社の映画館では『風立ちぬ』の9月2日・月曜日の動員が、夏休みだった前週月曜日と比べ2割増えたという。他の映画が軒並み前週比マイナスを記録する中で、観客に子供があまり多くないとはいえ、画期的な出来事である。興収100億円突破は確実で、今後どこまで伸びるだろうか。

 こうした興行へのプラス効果が示すとおり、宮崎アニメが映画興行界を長年支えてきたという紛れもない事実がある。引退が本当だとすれば、映画興行界は大きな収益の柱を失うことになる。その手当てをどうするのかという視点は、忘れてないけないと思う。

 もうひとつは、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(略称:あの花)が驚異的なスタートを切った件。8月31日、9月1日の2日間、全国64館で動員16万人強、興収2億円弱を上げた。週末興行ランキングは、小規模公開ながら『風立ちぬ』『マン・オブ・スティール』に次いで3位。スクリーンアベレージは300万円を超えて、圧倒的な1位だった。

 製作・配給のアニプレックスとしては、昨年7月に公開した『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』(最終興収5億5千万円)、同10月に2部作連続公開した『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』(前編5億89百万円、後編5億67百万円)に続くヒットとなった。

 今回の大きな特徴は、コアなアニメファンは勿論のこと、普段アニメを見ない層までも取り込んだ点。2011年のTVシリーズ放映時から「大人の泣けるアニメ」として話題を呼んでいた『あの花』。TVシリーズで幅広い観客層を得て、劇場版でそのボリュームが増したと言ったらよいかもしれない。「一般の映画」と何ら変わりのない客層だという。

 演出を手掛けた長井龍雪監督は、アニメ業界で将来が期待される若手の一人だそうだ。冒頭の宮崎監督引退の話にこじつけるわけではないが、才能あるアニメ作家にはどんどん育って、映画の世界に進出して活躍してほしい。コア向けのアニメとは異なる背景を持つ『あの花』がヒットする様子を見て、そう思わずにはいられない。

 宮崎監督の引退と『あの花』の大ヒット、2大ニュースを見聞しての雑感である。




松本 貴則(まつもと・たかのり)  映画部デスク 兼 サイト事業部所属

2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味はスポーツ観戦、読書。





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