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【Vol.31】東急レクが大幅増益、その理由を考える

映画部デスクの「映画興行あれこれ」

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【Vol.31】東急レクが大幅増益、その理由を考える

2014年02月21日
 東急レクリエーションが14日に発表した2013年12月期通期の決算を見て、驚いた。映像事業の利益が、前年比2ケタの大幅増となっていたからだ。興行他社よりも増益の幅が大きい印象だ。何があったのだろうかと。

 同社の連結業績は、売上高302億35百万円(前年同期比3.6%減)、営業利益10億52百万円(5.9%増)、経常利益9億18百万円(5.8%増)、当期純利益5億79百万円(230.6%増)。そして映像事業は売上高151億90百万円(6.3%減)、営業利益5億74百万円(16.3%増)だった。

 年間の興行収入は全国の映画館と同様、ほぼ前年並と聞いていたので、6.3%のマイナスは他に原因があるのだろう。前期は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の物販が大きく貢献していたので、その反動が出たのかもしれない。

 さて、売上は下がったのに、利益が大きく増えた理由は何だろうか。決算短信では「徹底したコストコントロールによる効率的な運営を実践してきたことにより」と簡単に説明しているが、その中身については触れていない。

 まず考えられるのは、VPFスキームの活用も含めたデジタル化が完了し、人件費が下がったこと。ここ数年の、興行界全体のトピックだ。また、自動の空調管理システムに切り替えたことも一つ。全国的に電気料金が上がっている中で、混雑具合などを自動的に判断し室温を調整するので、効率的な電気使用となって、電気料金を抑えられる。ただ、こうした施策を実施している会社は他にも沢山あるし、逆に、他社が推進する自動券売機の導入は東急レクではあまり進んでいない。

 他社との違いを考えると、近年、不採算事業所の対策に大ナタを振るっていることが挙げられる。池袋東急(2011年12月)、上野東急・上野東急2(2012年4月)、渋谷東急(2013年4月)とロードショー館を順次閉鎖させてきた。その際、一時的に損失を計上したものの、財務体質は身軽になる。マイナス要因を±ゼロに戻したことも、利益を押し上げる要因になったと思われる。

 これらは推測に過ぎないので、改めて取材をしようと思う。ただ、断言できることはある。それは、興行界全体のパイが横ばいで推移する中、利益を伸ばしていくのは並大抵のことではないということだ。




松本 貴則(まつもと・たかのり)  映画部デスク 兼 サイト事業部所属

2000年、シネコン担当記者として入社。その後、配給会社などへも取材範囲を広げるが、取材のベースは興行に置いている。2011年から映画部デスク。趣味はスポーツ観戦、読書。




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