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WOWOW 国際共同制作インタビュー
「人間目線の作品を世界に発信したい」

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WOWOW 国際共同制作インタビュー
「人間目線の作品を世界に発信したい」

2014年12月05日
 WOWOWは12月から、国際共同制作ドキュメンタリーを、毎週土曜午後1時放送中の「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠で放送する。「連続ドラマW」が10月から土曜・日曜の2本立てとなり、ドキュメンタリーにおいても、「ノンフィクションW」が評価され、WOWOWブランドが確立しつつある。そうしたなか、昨年5月国際共同制作ドキュメンタリー第1弾『もしも建物が話せたら』の制作を発表し、それから国際共同制作への取り組みが活発化。今年10月に開催された第27回東京国際映画祭では、『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 50年の挑戦』、『もしも建物が話せたら』の2作品が日本初公開された。WOWOWの国際共同制作が目指すものは何か。国際展開を担当する編成局シニア・エグゼクティブ・プロデューサー中嶋雷太氏に話を聞いた。※取材・文/構成:小川 航



中嶋雷太氏
 ──今年7月、編成部門に国際展開担当が設けられました。この役割について教えてください。

 まずは国際共同制作を推進していくことが1つです。当社は「ノンフィクションW」を始めて約250本になりますが、日本の制作会社と一緒に、日本の視聴者に向けて作るという基本的なことをしっかりやってきたことでプロデューサーが育ち、制作会社とも良い関係が出来上がりました。その実力が溜まってきたことと、国内外における共同制作の気運が高まり、WOWOWもそこに関わることにしました。
 私は、部署の垣根を越えて、協力し合ってWOWOWの番組やイベントの海外展開を推進することが役割です。
 そして、既にいくつか動き始めています。


 ──ドキュメンタリーを国際共同制作するにあたって、まず何から取り組み始めたのでしょうか。

 実は国際共同制作については、3年ほど前から動き出していました。これまでWOWOWが持っていた欧米、アジアの人脈を使って、世界中の放送局と連絡を取り合い、直接お会いして、ヒアリングを重ねました。
 各局が想定している番組尺、単発、シリーズ番組、テーマ、異文化の融合が生み出す化学反応のアイディア、クリエイティブの方向性などを持ち帰って、WOWOWのプロデューサーに企画を出してもらいます。簡単には成就しませんが、この程ようやく、WOWOWのオリジナル企画『1984~不朽のSF小説から生まれる過去・現在・未来~』(12月27日放送)がオーストラリアとの共同制作で実現しました。

  ──日本の放送局が海外と共同制作する際の課題とは何でしょうか。

 作品づくりの基本は世界を視野に入れることだと思います。どうしても我々、日本の放送局は、無意識に日本人目線で作ってしまう。たとえ「日本のお茶」がテーマのドキュメンタリーでも、日本人だけが理解できる内容ではなく、世界中の人に向けて作ろうと意識したとき、この作品は世界に通用します。この人間目線をWOWOWのプロデューサーも持ち始めたので、今後うまくいくと思っています。

 ──12月にはいよいよ、国際共同制作ドキュメンタリーのうち、マーティン・スコセッシ監督『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 50年の挑戦』(制作・WOWOW、米HBO、英BBC)、天才オルガン奏者キャメロン・カーペンターに迫る『キャメロン・カーペンター:サウンド・オブ・マイ・ライフ』(制作・WOWOW、仏ARTE、独ZDF)など3作品がWOWOWで放送されます。それぞれの見どころについて教えてください。

『キャメロン・カーペンター:サウンド・オブ・マイ・ライフ』12月20日放送 Photo by Thomas Grube
 マーティン・スコセッシ監督『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス 50年の挑戦』(12月13日放送)は、文芸誌「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」が、かたくなに編成方針をキープしながら50年間、批評というポジションを崩さずに、いかに当時の政治や社会状況に対して鋭い刃を保持してきたかが映像で物語られています。また、『キャメロン・カーペンター:サウンド・オブ・マイ・ライフ』は、パイプオルガン奏者キャメロン・カーペンターの、これまであまり知られていなかったオルガンに対する向き合いについて、伝統あるクラシック楽器に対するモダンで革新的な挑戦を描いた作品です。


 ──そして来年、『もしも建物が話せたら』(制作・WOWOW、仏ARTE、独rbb)が放送されます。
『もしも建物が話せたら』 ⒸWim Wenders 2013


 これは当初3D制作を前提にした作品でした。まさにタイトル通り、建てられた地域・場所、背景、機能など、建物が持つ物語性を紐解きながら、現代建築学の心臓部を描いた作品です。哲学者が建築物を語るのはフランスの伝統ですが、おそらく国際共同制作でなかったら思い浮かばなかった発想でしょう。そういった作品を、世に送り出す一端を担えることが国際共同制作の〝妙味〟の1つと感じています。

 ──これら国際共同制作は、10月より毎週土曜午後1時スタートした「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠で、「ノンフィクションW」との2本柱として放送されます。国際共同制作の編成戦略的な位置づけを教えてください。

 10月からスタートした「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」は、「ドラマW」と同様に、WOWOWらしさを出し、基幹ジャンルに成長させて、ブランド化を目指しています。この数年「ノンフィクションW」が国際エミー賞にノミネートされるなど当社のドキュメンタリーが評価されるようになり、国際共同制作はさらなる伸びしろとして捉えています。

 ──国際共同制作作品の海外セールスも視野に入れていますか。

 今後の目標に据えています。ゆくゆくはビジネスになるよう、国際番組見本市にも出品できるようにしたいと思います。

 ──WOWOWは2020年に向けた理念「VISION2020」を掲げていますが、国際共同制作の展望を教えてください。

 現在発表している、中期経営計画(14~16年度)の中で、2016年度末までに複数の国際共同制作作品を、WOWOWで定期的に放送する計画です。それを実現するため、人間関係を広げて環境を作り、東京五輪で日本に注目が集まる2020年までには、WOWOWの存在感を世界にしっかり示したいと思っています。



中嶋雷太(なかしま・らいた)氏
 1959年京都生まれ。同志社大学大学院新聞学専攻(ジャーナリズム/現・メディア学)修士修了。出版社勤務を経て、1990年日本衛星放送株式会社(現・WOWOW)入社。番組プロデューサー(ドキュメンタリー番組等)の後、初代LA駐在員。帰国後、編成局、経営戦略局を経て、2014年7月より、編成局シニア・エグゼクティブ・プロデューサー。

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