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『マンガ肉と僕』杉野希妃監督/主演/プロデューサー

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『マンガ肉と僕』杉野希妃監督/主演/プロデューサー

2016年02月10日

『マンガ肉と僕』講義シーン.jpg


◆『マンガ肉と僕』杉野希妃監督 

 
女優、プロデューサー業などで国際的に活動する杉野希妃の長編初監督で主演作品『マンガ肉と僕』が2月11日から新宿K‘s cinemaで先行上映、13日よりシネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、元町映画館ほか全国順次公開される。

 原作は、「女による女のためのR‐18文学賞」の大賞受賞作品・朝香式の同名短編小説(新潮社刊)。舞台は京都。青年ワタベ(三浦貴大)が3人の女と出会う8年間の遍歴を、3部構成のラブストーリーとして描いている。ワタベの成長の傍らでは、男に抗う女たちの強くも切ない物語が展開される。なお杉野監督はワタベの優しさにつけ込み寄生するサトミ役、特殊メイクを施してマンガ肉に食らいつく太った女性を演じた。初監督作品『マンガ肉と僕』とは。

杉野希妃.jpg◆杉野監督(=右写真)の略歴

 84年広島県生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中にソウルに留学。05年、韓国映画『まぶしい一日』宝島編主演で映画デビュー。続けて07年に同じく韓国映画『絶対の愛』に出演。帰国後『クリアネス』に主演。08年から映画制作にも乗り出し、『歓待』を主演兼プロデュース。12年、主演兼プロデュース『おだやかな日常』が沖縄国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門で、最優秀ニュークリエーター賞と最優秀主演女優賞、日本映画プロフェッショナル大賞の新進プロデューサー賞を受賞。14年『マンガ肉と僕』で初監督。その他多数の作品に監督、製作、出演で関わる。






女性の歴史を根底に流して


――今作は杉野監督の中で、やはり特別な意味のある作品ではないでしょうか。

杉野監督
東京国際映画祭がワールドプレミアの場だったのですが、舞台挨拶で、あれ程に緊張した経験はありませんでした。本作が観客にどのように映り、感想を持たれるのかが気になって仕方ありませんでした。初監督で主演までやらせて頂いた結果、今まで10数本をプロデュースしてきましたが、それらのどの作品よりも「自分の子ども」の様に感じています。自分が産んだのだなという感覚ですね。

――サトミ役を楽しそうに演じられていましたね。マンガ肉を食べては太っているかを確認するために体重計に乗る姿が引きの画で撮られていて、あの収まり方が面白かったです。

杉野監督
ありがとうございます(笑)。演じてみると、すごく楽しかったですね。サトミ役は、どうしても自分でやりたかった。原作で描かれている彼女に対して、共感する部分がすごくありました。特に「女が男に嫌われるために太る」という設定が斬新で惹かれました。この捻じ曲がったモチーフを基にして、現代社会を投影できるのではないかという想いで制作しました。

 つまり彼女の気持ちに共感できたんです。まるで自分自身の様だと思い、一方ではもっと器用に生きれたらいいのになとも彼女に対して思います。共感と同情…、うーん、一種のシンパシーですね。

『マンガ肉と僕』メイン写真.jpg――ご自身にどのように演出をかけられましたか。

杉野監督
どのぐらいの塩梅で演じていいのか、悩みました。例えばサトミはワタベのアパートに寄生しますね。ワタベに対する台詞の中に、「肉買ってこい」というものがありますが、その言い方1つをとっても、もっと暴力的なのか、貫禄あるように言えばいいのか、ヤクザさんの一歩手前くらいにしたらいいのか、ドスを効かせるべきなのかと迷いました。

 けれど、原作で描かれているサトミは義理の父親から性的虐待を受ける様な過去を持っていますので、あまりに暴力的にしすぎるとリアリティが損なわれるなと思いました。そして最後は「肉買ってこい」と言ってはいるものの、どこか寂しげに見えるように、バランスを取りながら演じました。

――サトミには乱暴さと寂しさが共存している女性像の様に見えました。登場する3人の女性にはそれぞれ役割があると聞きましたが、どのように物語内に配置しましたか。

杉野監督
サトミを現代、菜子を過去、さやかを未来という様にして物語の中に置き換えました。サトミはまさに今抗っている現代的な女性、菜子は男に依存してしまう過去的な女性、さやかは自立していく未来的な女性として。なんとなく、そういうことを意識しながら、女性の歴史が映画の根底に流れている様に描きました。


古き良き日本映画を意識して



――劇中でサトミは、姿を変えてワタベの前に再登場します。その展開やそれぞれの女性がワタベを想う描写が、杉野監督の師であるキム・ギドク監督『絶対の愛』を彷彿とさせました。監督として、やはり影響を受けた部分は多いでしょうか。


◆キム・ギドク監督『絶対の愛』
06年公開、07年日本公開の韓国映画。美容整形がブームとなった韓国の社会事情を背景にしたラブストーリー。杉野監督も出演している。



杉野監督
今、言われて初めて気付きました(笑)。確かにギドク監督は私の師で、良き相談相手です。本作を撮る時も相談しましたが、『絶対の愛』を意識して撮った訳ではありません。でもどこかでギドク監督から学んだことが、滲み出ているかもしれませんね。

 でも、どちらかと言えば、本作は古き良き日本映画を意識して撮りました。英題は『Kyoto Elegy〈キョウトエレジー〉』です。溝口健二監督の『浪華悲歌〈ナニワエレジー〉』を意識したんですね。

『マンガ肉と僕』場面.jpg――と、いいますと。

杉野監督
『浪華悲歌』で描かれる女性像は、地位が低く、確立されていない様に思えますが、だからこそ女性たちの「闘っていくんだぞ」という意識が映画の中にも充満していて、女性の中に突き進んでいかなければならないという感覚が強くあります。

 ただ、現代は男性と女性の立場が二項対立的な時代になっています。私はそういった敵対する時代は終わらなければいけないし、終わらせたいなと思っています。受入れ合って、しなやかに生きていく時代にしなければと望んでいます。

 つまり本作では、女性は女性なりに女性性について悩んでいるし、男性も男性なりに男性性について悩んでいるのだろうなという映画です。少しまだ答えの出ていない時代なんだよっていう。

――今後、杉野監督は映画界でどのような役割を担っていきますか。

杉野監督
常に頭の中ににあるのは、女性として、映画界でいかに生きていくかということです。以前、ある方に「杉野さんが作る映画に女を感じる」と言われたことがあります。その時は褒められているのか、そうでないのか分からなかったのですが、まさに言い当てられたなと今では思います。

 私は常にそういうことを意識しながら、表現しています。女ということに執着していますし、女の複雑さに呆れ返っている自分が共存しています。私自身がまさにその最中にいます。

――今後ともご活躍に期待しております。





『マンガ肉と僕』ポスタービジュアル写真.jpg◆『マンガ肉と僕』 http://manganikutoboku.com/

出演者:三浦貴大、杉野希妃、徳永えり、ちすん、大西信満、太賀、宮本裕子、長原成樹、徳井義実ら
監督:杉野希妃
原作:朝香式「マンガ肉と僕」(新潮社「マンガ肉と僕」所収)
エグゼクティブプロデューサー:奥山和由
プロデューサー:中村直史、杉野希妃
配給:和エンタテインメント+KATSU‐do
製作:KATSU‐do
企画:チームオクヤマ
制作協力:和エンタテインメント
企画協力:新潮社/「女による女のためのR‐18文学賞」運営事務局
2014年/日本/日本語/94分/英題:Kyoto Elegy

(C)吉本興業



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