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激動 東京都内 映画興行2018

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激動 東京都内 映画興行2018

2018年02月28日
 近年、熱気を帯びている東京都内の映画興行。ここへ来て、過熱の度合いがさらに増してきた。

 2017年は上野と調布に新館が誕生し、それぞれ予想を超える観客を集める。都内に熱い視線が注がれるなか、3月下旬に開業するTOHOシネマズ日比谷はまさに「真打ち」登場の感がある。これまで日劇などが担っていた役割を一手に引き受け、TOHOシネマズにとって無二の拠点となる。

 各方面に及ぼす影響は大きく、1つのシネコンが開業する以上に多くの意味を内包する。おそらく映画業界の分岐点になるだろう。

 本誌は2年前の16年3月号で「激動 東京都内 映画興行」と題した特集を実施。15年に開業したTOHOシネマズ新宿と109シネマズ二子玉川を起点に、変わりゆく都内の興行地図を展望した。今回はその「続編」に当たる。話題性十分の日比谷を入り口に、この2年の間に起きたさまざまな動きを押さえ、激しさのいっそう募る東京の映画興行の行方を占う。


東京ミッドタウン日比谷.jpg
東京ミッドタウン日比谷


日比谷に「映画の宮殿」

 TOHOシネマズ日比谷が3月29日にオープンする。三井ビルと三信ビルの跡地を三井不動産が一体的に再開発した「東京ミッドタウン日比谷」の4階に11スクリーン、2231席を新設。従来のTOHOシネマズスカラ座、TOHOシネマズみゆき座を改装し、あわせて13スクリーン、2830席を構える巨大シネコンの誕生だ。

 TOHOシネマズが日比谷に関して掲げたコンセプトは「映画の宮殿 ザ・ムービーパレス」。設備面で3つの「プレミアム」を提供する。1つ目は「プレミアムラージフォーマット」。IMAX(R)デジタルシアター、同社独自規格TCX(2スクリーン)を導入する。2つ目が「プレミアムサウンド」。1番スクリーンのカスタムオーダーメイドスピーカーシステムはシアターの形状に最適化した形で導入し、商業映画館で国内初。コンサートホールのような良質な音響空間を作る。ほかにもドルビーアトモスや、JBL社が提供するスカルプトサウンドシステムを一部に導入する。3つ目の「プレミアムシート」は、同社で実績のあるラグジュアリーシートとボックスシートを一部に設置する。1番スクリーン(459席)にさきのTCX、カスタムオーダーメイドスピーカーシステム、ラグジュアリーシート、ボックスシート、さらに舞台装置を集中装備し、初の「TOHOシネマズプレミアムシアター」と命名。極上の映画鑑賞を堪能できるシアターとして、ブランディングを高める。


日劇閉館、シャンテ存続

 TOHOシネマズ日比谷が華々しくオープンする反面、TOHOシネマズ日劇が2月4日に閉館した。1984年10月、有楽町マリオン内に日本劇場、日劇東宝、日劇プラザの3館がオープン。02年に日劇PLEX、09年にTOHOシネマズ日劇と名称を変えながら営業を続けてきたが、ついに閉館の時を迎えた。1933年に始まった「日本劇場」の長い歴史は85年で幕を下ろしたのだった。


閉館した日劇1館内.jpg
閉館した日劇1



 1月27日から2月4日までさよなら興行「さよなら日劇ラストショウ」を行い、3スクリーンを使って名作の数々を終日上映。連日賑わいをみせ、9日間累計で動員2万9732人、興収4040万0900円を記録した。最終日の2月4日は日劇1(日本劇場)で『もののけ姫』、日劇2(日劇東宝)で『ゴジラ(54年)』、日劇3(日劇プラザ)で『トップガン』を上映し、いずれも完売、満員の観客は日劇との別れを惜しんだ。

 閉館した日劇とは正反対に歩みだしたのがTOHOシネマズシャンテだ。15年3月、日比谷へのシネコン出店決定と同時に、日劇とシャンテの閉館が発表された。ただ、シャンテに関しては業界内に閉館撤回を望む声は数多く、社内で意見が分かれたことも想像に難くない。東宝グループの強力な映画興行網において、シャンテは特別な役割を担ってきた。閉館撤回までに要した時間は、シャンテの存在意義を再認識するのに必要だったのかもしれない。日比谷がオープンするタイミングで、スカラ座とみゆき座は改装して日比谷の12番・13番スクリーンに生まれ変わるが、シャンテは特に手を入れることはしない。日比谷とシャンテはオペレーションが別になるというが、どのような連携を図っていくのか、注目は大きい。


番組集中がはらむ問題点

 東宝グループの映画館は、スバル座を除いてTOHOシネマズ日比谷(13スクリーン)とTOHOシネマズシャンテ(3スクリーン)に集約されるが、これを引き金にさまざまな変化がみられそうだ。

 TOHOシネマズ日比谷のオープン以降、金曜初日が本格化する。洋画はすでに金曜初日が多いが、邦画についても東宝、松竹が土曜から金曜への初日移行を表明。邦画と洋画の大型作品で金曜初日が大勢を占めることになり、金曜初日は遠からず定着するだろう。

 さらに大きな関心事が、増加基調の公開本数と、その多くが日比谷に集中することだ。オープン翌日、3月30日初日の5作品(『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『トレイン・ミッション』『レッド・スパロー』『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)が、日比谷を中心にして全国規模での公開を想定しているようだ。

 ただ、書き入れ時である3月はシネコンのスクリーン、キャパシティの奪い合い。13スクリーンありTOHOシネマズの旗艦店となる日比谷ではブッキングできても、ほかに丸の内ピカデリーがメイン館の作品や東映系の作品もあり、大多数のシネコンではこれらの作品を全部受けることはできない。オープン直前の祝日である3月21日公開だけでも『ボス・ベイビー』『トゥームレイダー ファースト・ミッション』『曇天に笑う』の3作品がある。

 毎週のように新作が続々公開されるなか、多数のスクリーンを効率的に運営するのが特徴のシネコンにあっても、上映作品をさばききるのは至難の業。ゴールデンウィークや夏休みも現時点で大激戦は必至の様相。こうした繁忙期は配給会社が想定したブッキングを確保できず、作品が本来持つ興行力を十分に発揮できないケースも今以上に出てくるだろう。

 ある興行者に聞くと、最近は配給会社との交渉で、一日あたり通常5~6回のところ、「1週目から3回でもいいか」といった交渉も珍しくないという。ようやく公開した作品も最初の週末の成績が振るわないと回数、キャパシティが一気に減る傾向に拍車がかかると心配の声もあがる。これは配給会社、特にインディペンデントにとっては死活問題になりかねない。

 システマティックな運営を第一義とするシネコンは、生まれながらにして功罪を併せ持つ存在。行き過ぎた効率化に疑問を投げかける声は確かにある。日比谷のオープンで、シネコンの在り方がどう変化するのか。慌てずじっくり見ていく必要がある。


日比谷成功でエリア復権へ

 TOHOシネマズ日比谷の集客力はいかほどか。予想するのは簡単ではない。ある興行者は一つの目安として「年間200万人」を挙げた。いま国内のシネコンで200万人を達成しているのは、TOHOシネマズ新宿と新宿ピカデリーの2サイトのみ。日比谷が大台に乗せれば、この2トップに割って入ることになる。銀座・有楽町・日比谷エリアの映画館は、夜の客足の引きが早い。東京ミッドタウン日比谷が新名所となり新しい人の流れが生まれ、夜の回が稼働するようになったり、家族連れが目に見えて増えたりすると、驚天動地の爆発力を示すかもしれない。

 都内にまでシネコンが続々と進出し始めた00年以降、このエリアもご多分に漏れず急激に地盤沈下した。本誌をさかのぼると、東京23区内にシネコンが皆無だった99年は、洋画系ロードショー劇場15館で動員440万人、興収72億円をあげている。これに日劇東宝や丸の内東映、ミニシアターも加えると80億円規模の市場だったと推定される。その後、市場は一気に収縮する。ベンチマークとして日本劇場(日劇1)を抜き出すと、99年に15億7千万円あった年間興収が00年に11億7千万円、01年に7億5千万円と急降下。その後も下降線をたどった。近年はTOHOシネマズ日劇として3スクリーン合計の数字のみ発表するようになっていたが、17年は合計で9億5千万円だった。

 エリア全体の17年興行市場は当社調べによると、概算で動員300万人、興収40億円と90年代末から半減している。これがこのエリアが現有する力である。近隣ではTOHOシネマズ日本橋が優に100万人を超えているが、これを足しても及ばない。

 例えば新宿のケース。いまや新宿は映画興行のメッカだが、閉館が続き壊滅的だった06年は36億円まで落ち込んだ。しかし、一敗地にまみれた邦画3社それぞれがシネコンを作り、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿の3つが並び立つ現在、100億円を超す日本一の巨大な市場に成長したのは周知のとおりだ。

 銀座・有楽町・日比谷エリアがいま一度、名実ともに映画興行の「主役」として胸を張ることができるのか。TOHOシネマズ日比谷の成功は、このエリアの復権にもつながってくる。

 日劇があった有楽町マリオン本館と別館に3スクリーンを構える丸の内ピカデリー。松竹マルチプレックスシアターズ社内で、さまざまな議論はあったようだが、日比谷オープンに合わせた大掛かりな施策は実施しないようだ。TOHOシネマズが16年7月にオープンした仙台において、MOVIX仙台を17年12月に全面リニューアルした前例もあり、日比谷オープン後の影響を見定めた上で、適切な手を打っていく。


不動産経営部の大きな仕事

 日劇の閉館、日比谷のシネコン開業は、東宝グループの経営全般に波及する重大な出来事である。興行部門の裏側にある難題に中心となって取り組んだのが、東宝の不動産経営部だ。
 TOHOシネマズ日劇は、東宝が一部所有する有楽町マリオンの9階、11階を占めていた。閉館後の空いたスペースをどう活用するかは東宝にとっての重点課題。日劇1跡(11~13階)は不動産会社のヒューリックが賃借し、貸ホール「ヒューリックホール東京」を今夏オープンさせる。ヒューリックは都内を中心に国内各地でオフィスビルやマンション、商業ビルを展開。業界関係ではティ・ジョイ本社の入居先がヒューリックの保有するビルだ。日劇2・3跡(9~10階)はコニカミノルタプラネタリウムが入居。プラネタリウムを中心とした複合型映像体験施設を今冬開業する。コニカミノルタは池袋サンシャインシティ、東京スカイツリータウンの都内2カ所で同様の施設を運営し、いずれも好評を博しているという。

 また東宝は、東京ミッドタウン日比谷の建設現場を横目に見ながら、自社の商業施設「日比谷シャンテ」の大規模リニューアルを3期に分けて実施。昨年10月の第1期は東京宝塚劇場、日比谷シャンテ間が歩行者専用道路になるのを受けて、日比谷シャンテのビル外観を改装、1階に新店舗も入れ外見に輝かしさを持たせた。続いて12月の第2期は地下2階レストランフロアを全面改装し、新店舗も出店。今年3月下旬の第3期は、シャンテ広場に日比谷周辺の劇場チケットを購入できるローチケを設置するなどし、半年がかりのリニューアルは完了する。2月1日には東京メトロ日比谷駅、東京ミッドタウン日比谷、日比谷シャンテが直結する地下通路が開通、シャンテにつながる通路壁面に「ザ・スター・ギャラリー」を設置。合歓の広場にあったスター77人の手形を移設した。

 日比谷は東宝グループ創業の地である。隣接する有楽町も含めると、東宝の帝国劇場、東京宝塚劇場、シアタークリエや、東宝以外でも日生劇場、オルタナティブシアター(丸の内ルーブル跡)などの劇場があり、「映画と演劇の街」という特長的な顔を持つ。東宝はTOHOシネマズ日比谷を開業、日比谷シャンテをリニューアル、日劇跡に集客施設を誘致するという3本柱で、有楽町・日比谷エリアの際立つ強みに磨きをかける。


続きは、文化通信ジャーナル2018年3月号に掲載。

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