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第8回MPAセミナーで「サイトブロッキング」を議論

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第8回MPAセミナーで「サイトブロッキング」を議論

2018年11月15日
 「漫画村問題」に端を発し、特定のサイトへの接続をISPが遮断する「サイトブロッキング」が、今年の春頃から注目を集めるようになった。MPAおよび日本国際映画著作権協会(JIMCA)が毎年東京国際映画祭期間中に開催しているセミナーでは、2016年からこのサイトブロッキングを取り上げており、今年も10月26日に六本木アカデミーヒルズ49を会場に開催。国内外の識者が登壇し、様々な視点からサイトブロッキングを法制化する必要性を訴えた。

 はじめに、主催者として、昨年12月にMPAA会長に就任したチャールズ・H・リブキン氏が挨拶し、この来日中に様々な映像関係者とサイトブロッキングについて議論を交わしてきたことを報告。「皆、権利を守ることへの意識はある。だが、サイトブロッキングへの誤解がある」と述べ、法制化することで「クリエイターが保障を受けられるようにしなければならない」と語った。また、来賓挨拶で登壇した住田孝之内閣府知的財産戦略推進事務局長は、同本部が先ごろ開催した9回目の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」で、サイトブロッキング法制化への結論が出ないまま会議が終了したことに言及。「考えうる対策はリストアップできた」と、会議を通して違法サイトへの対策に向けて一定の成果が得られたとしつつ、法制化については「50対50の状態。(さらに)議論が必要になる」と、反対意見も根強いことを印象づけた。


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チャールズ・H・リブキン氏




サイトブロッキングは一斉に行うことで効果発揮

 基調講演で初めに登壇した英チャップマン大学のブレット・ダナハーアシスタント・プロフェッサーは、「著作権議論は非常に直感的で、理論に基づいている」と、個々の意見や考えに左右される点を指摘し、「データと証拠に基づいたものを提供したい」という考えのもと、サイトブロッキングを導入した際の効果を研究している。ダナハー氏によると、英国では2012年5月、当時最も有名な違法サイト「パイレート・ベイ」へのサイトブロッキングが行われたが、あまり効果がなかった。その理由については「パイレート・ベイだけ(のブロック)だと、ユーザーはほかの海賊版サイトを見つけてしまう」と説明。一方で、2013年11月に、めぼしい海賊版サイト11個に対し一斉にブロッキングを行うと、該当の11サイトへのアクセス数は85%減少。その直後から合法サイトへのアクセスが12%急増したという。

 ダナハー氏はこの結果を踏まえ、「サイトブロッキングは、違法チャネルから合法チャネルへ消費を転換できる効果的なツールになり得る」とし、その際は「1つのサイトではなく、一斉に複数のサイトをブロッキングすることが有効」と結論づけた。さらに、サイトシャットダウンに比べれば、ブロッキングはISP側の負担も軽微で済むことも付け加えた。


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ブレット・ダナハー氏



海賊版サイトトラブルで正規サイトのアクセス増


 次に、オーストラリアで日本のアニメーションを公開している映画会社マッドマン・エンターテインメントのティム・アンダーソン共同設立者&マネージング・ディレクターが登壇し、オーストラリアの状況を説明した。その中で、2016年12月に、海賊版アニメサイト「KISSアニメ」が、技術的なトラブルにより2週間アクセスできない状況が続いたところ、マッドマンが運営する正規有料配信サイト「アニメラボ」へのアクセス数が一時的に平時の250%まで跳ね上がったエピソードを紹介。KISSアニメが復旧したあとも、アニメラボを使い続けるユーザーが一部残ったことから、サイトブロッキングも効果があると推測。オーストラリアではサイトブロッキングが2015年に法制化されており、これまでに82の海賊版サイトがブロッキングされていることから、これから効果が生まれてくるだろうと期待を寄せた。

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ティム・アンダーソン氏



ユーザー側の意識改革を進めることも重要に


 『ポケモン』映画シリーズの1作目から14作目までエグゼクティブ・プロデューサーを務めた久保雅一小学館取締役は、サイトブロッキングの必要性を認めつつも、タスクフォースで意見がまとまらなかった現状を踏まえ、別の角度から海賊版対策を進めることを提言。小学館の取り組みとして、同社が出版する雑誌34誌で、キャラクターが「海賊版・違法サイトNO!」と読者に理解を求める連合意見広告を掲載した事例を紹介した上で、「ユーザーに対するお願いや啓蒙も大事。新しい海賊版対策を検討すべき」と、ユーザー側の意識改革から切り込んでいく重要性も説いた。

 なお、9回目のタスクフォース後の10月30日に知財戦略本部が開催した上部会合(第1回検証・評価・企画委員コンテンツ分野会合)では、座長の中村伊知哉氏らがサイトブロッキングの法制化については「意見がまとまらなかった」と報告する一方で、「著作権を侵害する静止画(書籍)ダウンロードの違法化の検討」には反対派との共通認識が得られたことも報告(座長メモ)しており、ダウンロードする側の意識の持ちように触れた久保氏の意見の重要性を裏付けている。

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久保雅一氏




角田教授はISPも責任有りの考え、法制化は正当

 基調講演の最後に登壇した角田政芳東海大学教授は、「サイトブロッキングは法制化すべき」という姿勢を冒頭に示した上で、反対派が主張する「通信の秘密を侵すことになる」という考えに対しては、「(サイトブロッキングは)個人情報を取得しないので、問題にならないというドイツの判例があり、私も同じように考えている」とし、違法コンテンツをアップロードするユーザーが利用するISPにも、違法作品と知りながらダウンロードするユーザーが利用するISPにも「侵害ほう助責任がある」と、ISP側の責任を問う考えも示した。

 また、「サイトブロッキングは最後の手段だ」という反対派の主張に対しては「無意味な意見。ISP自体が侵害責任を負うべきであり、(権利元が先に努力すべきという)そんなことは考える必要がない」とした。さらに、表現の自由が侵されるという主張にも、過去の判例(『パロディ事件』)を紹介した上で「著作権侵害をしてまで表現の自由が保障されることになっていない、という経験を日本では持っている」と、強い口調でサイトブロッキングを法制化する正当性を主張した。

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角田政芳氏


「ちょっと脇にずれてくださいのレベル」(久保氏)

 その後は、遠山友寛弁護士の司会のもと、基調講演に登壇した4氏によるパネルディスカッションが行われた。遠山氏が「通信の秘密」を侵すか否かという議題を上げると、角田氏は「機械的に探知するだけであり、個人情報を人間が見るわけではない。全く問題ない」と改めて主張。久保氏も「よくウチに宅急便の荷物を配達してくれる人がおり、私のことをよく知っているが、プライバシーを侵害したと問い詰めることはない。向かう先が工事中で、ちょっと脇にずれてください、というレベルの問題」と表現し、議論が先に進まない現状を受け、「クリエイターサイドとしては非常に残念」と肩を落とした。

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パネルディスカッション



 なお、同セミナーでは来賓として久松猛朗東京国際映画祭フェスティバル・ディレクター、甘利明自民党選挙対策委員長、ニコラス・ヒル米国大使館 経済・科学部 経済・科学担当公使も挨拶し、マイケル・C・エリスMPAアジア太平洋地域プレジデントが閉会の辞を述べた。

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