ポニーキャニオン 村多氏
ポニーキャニオンは、新規事業の一環として地域活性化事業に力を入れている。2015年に開始し、2020年度で6年目に入った。同事業の初年度売上は5千万円だったが、2019年度は約5億円と10倍まで膨れ上がり、急速に事業規模を拡大している。村多正俊経営戦略本部エリアアライアンス部部長に、現在の状況について聞いた――。
シティプロモーション全般を手掛ける
エリアアライアンス部のミッションは、全国各地の自治体などから地域プロモーション業務を受託し、ポニーキャニオンが培ってきたエンターテイメントのノウハウを駆使しながら地域活性化の一翼を担うことだ。2019年度は44件の業務を受託。関係のある自治体の数は累計170にのぼり、着実にポニーキャニオンの名を各地域で広めてきた。
代表的な事業の一つが、3年で1億6千万円の予算がついた、松山市の道後温泉本館保存修理工事を活用した観光資源化事業だ。2019年1月から約6年にわたる保存修理工事中も観光客をつなぎとめるという重大な役割を担う。この事業では、「火の鳥」と道後温泉のコラボレーションを実現させ、本館へのプロジェクションマッピングや、アニメ制作、工事中の仮屋を囲う幕にラッピングを施すなど、工事中しかできないPR施策を次々と打ち出し、併せて首都圏でのPRも手掛けている。
村多氏は「松山市は、工事が始まってしまうと入れ込み観光客数が通年の50%以下になってしまうと想定していたそうですが、マイナス5%(※新型コロナ影響前)で推移しているそうです。野志克仁市長からはご評価頂いております」と話す。
ほかにも、町田市のシティプロモーション支援業務では、アニメーションや楽曲を制作し、様々なPRやイベントを実施。草加市の市制60周年記念事業では、エンタメ性の高いイベントを企画運営したほか、アニメ制作や奥華子の主題歌制作を行い、街頭ビジョンなど様々なシーンで活用している。
「以前は動画制作がメインの受託案件でしたが、今は主としてまちのPR全般(シティープロモーション)を手掛けるようシフトしています」と村多氏。自治体の業務を受ける企業を決定するコンペでは、当初と比較しチーム勝率が落ちていると明かすが、「身の丈にあった事業に応札していた以前と比べて、今はより大きな規模の案件に応札しています。有力な広告代理店が数年にわたり手掛けてきた案件にも挑んでいるので失注もままあります」と、新たな領域にも臆せず足を踏み込む姿勢を語る。
そんなアクションを経て今年度から受託が叶った事業として、2020年度岐阜県の首都圏におけるPR業務を担うこととなる(すでにポニーキャニオンでは桑名市、沼津市の首都圏PRを担っている)。こういった実績は口コミで広がり、コンペを通さずに業務委託を受ける「随意契約」も増加。2019年度に受託した業務も多くが随意契約で、「県の仕事を手掛けたら、その市町村からもお話を頂くことがあります」と語る。
道後温泉本館のプロジェクションマッピング