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ウィットスタジオ、ササユリ動画研修所、ネットフリックスが若手アニメーター育成

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ウィットスタジオ、ササユリ動画研修所、ネットフリックスが若手アニメーター育成

2021年02月17日
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 アニメーション制作スタジオの「ウィットスタジオ」、若手アニメーター育成の「ササユリ動画研修所」、動画配信サービスの「ネットフリックス」が共同で、次世代のアニメーター育成に着手した。4月に「WITアニメーター塾」を開講することを2月12日発表し、9月までの6ヶ月間にわたるカリキュラムを、10人前後の受講生に向けて提供する。卒業時点で、商業アニメーション制作の現場で活躍できる土台をつくることを目指す。このプログラムは継続して実施していく運びで、業界で顕在化しているアニメーターの人材不足問題の解消にひと役買っていく。

 WITアニメーター塾では、アニメーターの入口とも言える「動画」技術の習得に特化する。講師には、スタジオジブリで『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』などの動画チェックを手がけ、現在はササユリ動画研修所で若手育成にも従事する舘野仁美氏を迎える。受講生には、ネットフリックスの特待生制度を提供し、1人あたり6ヶ月間で約60万円の受講料と、月額15万円の生活費を支援。受講生は卒業後、ウィットスタジオか、グループ会社のプロダクション・アイジーで、ネットフリックスのオリジナルアニメ作品の制作に取り組む。


画期的なカリキュラム

 プロダクション・アイジー(ウィットスタジオを含む)とネットフリックスは、18年に包括的業務提携を締結。IGグループでは現在「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」をはじめ8タイトルのネットフリックス作品の制作を進めており、これは全ライン数の3分の1強にあたる。今回のプログラムは、その両社で共有している制作体制への危機感から生まれたものだ。ウィットスタジオの和田丈嗣代表取締役社長(WITアニメーター塾 塾長)は、「作品の需要が高まる中で、供給を満足にすることができない、というのが1点目。2点目は海外スタジオの強さ。海外側の状況を知るにつけて、日本の中でスタジオをより強化していかなければならないという認識になった」と塾を開設した思いを語り、ネットフリックスの櫻井大樹アニメチーフ・プロデューサーも「海外では、アニメーターは格好いい職業として、生活水準も高い職業として認知されているが、日本はそうじゃないというニュアンスがあり、悔しいと思っている。日本のお家芸であるアニメに関わる全員が(自身の)職業を誇りに思える世界を作りたいと思った」と述べた。

 現状、アニメの制作現場では、若手の育成に十分な費用と時間をかける余裕はなく、技術の向上のためには先輩の技術を「盗んで覚えろという文化」(和田氏)が続いている。ある程度までスキルが上がったアニメーターは収入が安定するものの、多くの若手は「何ら訓練も受けないまま戦場に投入され、バタバタと討ち死にしている少年兵のよう」(櫻井氏)というのが実状だという。

 WITアニメーター塾では、この負のサイクルを断ち切るためのカリキュラムが組まれている。ササユリ動画研修所主宰の舘野氏は「アニメーターとして、やっておかなければならないカットがあり、それを1回でも経験しておけば全然違う。(カリキュラムには)それを入れられるだけ入れた」と話す。具体的には、「歩き」や「振り向き」、「走り」といった、商業アニメに必要とされるカットを選び、あえて難易度の高いものにも挑戦させることで、スタジオ入り後も即戦力として働けるように育てる。育成のための細かなカリキュラムを作成したことは、アニメ業界では画期的なことだという。ジブリで培った舘野氏の技術と、IGが求める動画は異なる場合も予想されるが、「応用力がつけば、どんなことでも対応できる。(舘野さんには)動かすことを教えてもらいたい」(和田氏)との考えだ。


アニメ業界のために先行投資

 費用を負担するネットフリックス側の利点について、櫻井氏は「短期的には、金銭的なメリットは別にない」としつつ、「アニメ業界が滅びれば大ダメージなので、存続可能な業態にするためには、ここで先行投資することは、長期的に見た時は理にかなっている」と説明する。実際に同社は、若手アニメーターの支援活動をすでに始めており、19年からはフランスのアニメ学校「ゴブラン」の卒業生を研究生として迎え入れ、日本の制作会社に派遣。第1期生のクレア・マッツ氏はプログラム修了後、ネットフリックスの東京オフィスで正社員として働き、企画最初期のデザイン担当を請け負っている。櫻井氏は、開設する塾について「ゆくゆくは動画だけでなく、原画、レイアウトにも拡大していきたい。また、英語の講座も開設し、海外からの学生も獲りたい。ゴブランのフェローシップにも、1人の枠に100人ほどが殺到する。学費と生活費の心配が無ければ、けっこう来ると思う」と、国内外から優秀なアニメーターを集め、育成していく構想を語った。

 「WITアニメーター塾」の実習場所は、ササユリ動画研修所、ウィットスタジオ、オンライン受講を併用。応募資格は今年3月に高校を卒業見込みの人、または高校以上を卒業した人で18~25歳までの人。日本に居住し、外国籍の人は日常会話レベルの日本語が話せることを条件とする。12日から募集を開始しており、書類提出は2月28日に締め切る。書類選考、実技・面接試験を経て、3月中旬に合格を決定する。




取材・文 平池 由典

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