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『キングダム2』ヒットでローカルプロダクションに弾み、SPEのサンフォード・パニッチ氏に聞く

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『キングダム2』ヒットでローカルプロダクションに弾み、SPEのサンフォード・パニッチ氏に聞く

2022年08月04日
 7月15日に公開された『キングダム2 遥かなる大地へ』が大ヒットスタートを切った。3年前に公開され、興収57億円をあげた第1作『キングダム』に続くヒットであり、近年の実写日本映画を代表する人気シリーズになったと言っても過言ではない。

 その映画『キングダム』シリーズの最大の出資会社であり、企画段階から参画しているのがソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)だ。同社は近年、各国や地域で映画を製作する“ローカルプロダクション”に力を入れており、日本でも今年は『バイオレンスアクション』、『ヘルドッグス』、『アイ・アム まきもと』、『耳をすませば』の公開が控えている。『キングダム』シリーズはその大きな成功例であり、今後のSPEの日本での映画製作に弾みをつけるものとなった。

 『キングダム2 遥かなる大地へ』の公開直前となる6月末から7月上旬には、SPEの映画部門「ソニー・ピクチャーズ モーション ピクチャー グループ」のプレジデントであるサンフォード・パニッチ氏が来日。本誌のインタビューに応じ、ローカルプロダクションや、SPE全体の映画への考えを語った。


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サンフォード・パニッチ氏


ファンベースを大切に

──非常に暑いタイミング(気温が40度近かった6月末)に来日されて、驚かれたのではないですか。

サンフォード 本当に暑くて(笑)、ムンバイ以上です。昨日(7月4日)から少し涼しくなったので良かったです。新型コロナの影響があった最近は来日できませんでしたが、それまでは毎年のように、頻繁に日本に来ていたんですよ。

──日本を訪れるようになって、驚いた文化はありますか。

サンフォード 多くの人が出版物を読んでいることです。電車の中でも小説や漫画を読んでいる人が多く、驚きました。出版物と映画は親和性があります。いまSPEではコロンビア ピクチャーズが漫画「ワンパンマン」を原作とした映画を企画しています。今年9月に劇場公開するブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』も日本の小説が原作です。『キングダム』や『鬼滅の刃』といったものすごいヒット作も出版物(漫画)から生まれてくるわけで、それはこれからも楽しみです。日本の漫画は、日本だけでなく、ハリウッドで映画を製作するための原作としても興味を持っています。

──漫画を原作とした作品で意識していることはありますか。

サンフォード 数々の作品を通して学んできたことは、マーベルのようにファンベースのあるIPは、とにかくまずファンベースを尊重して、彼らとパートナーシップを作られなければ、どこにも向かえないということです。まずそのIPの人気を高めたファンが存在するわけですから、もしそのIPでハリウッド映画を作りたいのであれば、ファンの思い、ファンがどこを気に入っているのかなど、ファンベースをきっちり研究した上でないと成り立ちません。「ワンパンマン」の映画化に入った時も、『ジュマンジ』シリーズで知られる脚本家たちを起用しましたが、彼ら自身が「ワンパンマン」の大ファンでした。さらに、監督に決まった『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンも、原作のファンです。ただのファンではなく、“スーパーファン”であり、原作のありとあらゆることを知っています。

──『キングダム』も漫画原作です。初めにプロデューサーの松橋真三さんから映画化を提案されたそうですが、この企画にどのような印象を持ちましたか。

サンフォード この漫画の話を聞いたあとに、渋谷にある漫画専門店に足を運ぶと、『キングダム』がコーナー展開されているのを見て、とてもヒットしていることを実感しました。それをきっかけに色々調べるようになったのです。

──『キングダム』シリーズは世界でも通用する作品になると思いますか。

サンフォード 作品は大変良く出来ています。壮大なスケールで、アクションも見応えがあり、素晴らしいキャストが揃っている。とはいえ、言語が英語でない他の作品にも言えるように、世界でヒットさせるのは大変なのは否めません。ですが、これだけ良い条件が揃っている作品です。今回で2作目となり、今後もシリーズ化していきたい作品ですから、例え1作目を見逃した人も、2作目からご覧頂くことで、ファンの裾野が広くなっていくと思います。コンテンツは、例えばテレビ番組の第2シーズンを見て興味を持ち、第1シーズンを見返すといったことでファンが広がります。ソニーグループ傘下のクランチロールでも、そういった相互作用によりアニメファンのエンゲージメントが高まり、加入者ベースも増えています。


グループで一致団結

──昨年、クランチロールをグループ内に迎え入れました。SPEにとってクランチロールはどのような存在ですか。

サンフォード クランチロールはおかげさまで加入者がどんどん増えてきています。コンテンツと関係を持ちたい、興味を持ったという人がそれだけ増えているのでしょう。それと同時に、海外での漫画の出版数がどんどん増えています。この2つは無関係ではないと思います。クランチロールという一つのバケツの中に色々なIPが入ってきて、そこに興味を持ち、魅了されたファンが集まってくるのだと思います。クランチロールに限らず、いまソニーグループ全体として、色々な部門が力を合わせていく気運が高まっています。

──例えば何でしょうか。

サンフォード 『アンチャーテッド』が良い例だと思います。この映画はもともとプレイステーションのゲームのIPを基にしています。最近我々は、カリフォルニア州カルバーシティのSPE本社敷地内に、「プレイステーション・プロダクションズ」を設立しました。このチームはプレイステーションの色々な作品を映画化やTVシリーズ化することに特化しており、映画『アンチャーテッド』を手掛けました。プレイステーションはIPの宝庫であり、先月には「グランツーリスモ」の映画化も発表しました。撮影で使用したセットをスキャンし、その映像を背景に撮影する“バーチャルプロダクション”も行っています。ここにもソニーグループの技術が使用されています。

 また、SPEのインターナショナルディストリビューションチームが、日本で製作された『鬼滅の刃』や『キングダム』の海外の配給をサポートしており、本当に新しい時代が始まったなと思います。従来のように、部門ごとに独立して何かを行い、何も繋がりがないということはなく、いかにしてみんなで一致団結してやっていくのかが重要になっています。

続きは、「文化通信ジャーナル2022年8月号」に掲載。

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取材・文 平池由典

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