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インタビュー:群青いろ「14歳」

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インタビュー:群青いろ「14歳」

2007年05月08日
“自分たちの撮影スタイルの方が力が漲る”
 映像ユニット“群青いろ”の劇場デビュー作品
 世界各国の映画祭で絶賛、いよいよ一般公開“自分たちの撮影スタイルの方が力が漲る”
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 「ある朝スウプは」(04年)で衝撃的なデビューを飾り日本映画監督協会・新人賞を受賞した“群青いろ”の問題作「14歳」が、5月19日(土)より渋谷ユーロスペースにてロードショー公開される。

“群青いろ”は、高校を中退後独学で映画製作を続ける高橋泉(33歳・左)と廣末哲万(28歳・右)の映像ユニット。PFFアワード04グランプリを受賞した前作「ある朝スウプは」は、低予算ビデオ自主作品でありながら劇場公開されヒットを記録。世界中の映画祭で多数の賞を受賞した。
 新作「14歳」は第16回PFFスカラシップ作品で、「ゆれる」の香川照之らプロの俳優を迎え、中学校の閉鎖的な空間を舞台に、この年齢独特の〈不安定さ〉や〈いじめ〉など自らの体験を基に描いた劇場デビュー作(114分)。第36回オランダ・ロッテルダム国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞している。今回監督を手掛けた廣末と脚本を手掛けた高橋は、「鼻唄泥棒」(05年)でも同賞を受賞しており、新人監督発見の場として、世界が注目する同映画祭での2年連続受賞の快挙を成し遂げた。一般公開が迫った二人に“14歳”について聞いた―。


“どん詰まり感、バランスの危うさを感じる”

―なぜ、このテーマをPFFスカラシップ作品で撮ろうと思ったのですか。

高橋 僕の独断で企画し、脚本を書き始めました。PFFスカラシップ作品はお金が出るわけで、今までは同年代の友達とか知り合いを使っていたのが、スタッフ・キャストの年齢層が広げられるのと、ロケーションとしても今まで人の部屋を使っていたのが、学校を使ったりとか出来るという事で、この「14歳」を今回やってみようかなと思いました。

―廣末監督はすんなりと受け入れられたのですか。

廣末 そうですね、高橋さんはある種もう認めざるを得ない方なので、その企画・脚本で何も思えなければ僕に問題があるので、やりますと。信頼しています。

―二人にとって“14歳”という年齢はどういうものだと。

高橋 混沌としている歳。物凄く狭い世界しか見られないし、どん詰まり感は感じます。そうじゃない子も沢山いるんでしょうけどね。でも、出演してくれた14歳の子たちと話すと、僕が14歳の頃と精神的には何も変わらない。本当にただ携帯電話を持っているだけですよね。作品は、“今”の14歳と“過去”の14歳の二重構造になっていますけど、僕の中では今という感覚はない。だから劇中では携帯電話も持たせず、パソコンもいじらせないで、普遍的な意味での14歳という風にしました。

廣末 アンバランスでしかない。内面的な感情とか感覚は凄いエネルギーに溢れているけど、実際動ける範囲は決まっていて、視野も狭いし、何も手掛かりのないまま生きているから、そのバランスの危うさは感じます。過去と今の14歳の違いはないと思う。僕が14歳の頃も全く何の問題も抱えないように生きている子たちが沢山いたけど、今もそういう子はいるし、全然変わっていないですよね。

高橋 ただ、本作を観た人の中には、「こんなに暗い子、極端な表現の子ばかりじゃない」と言う人もいます。でも、これは映画、虚構なので、そこをワザと見せようとしていると言われると困ります。一方で、それは脚本の問題というよりは、廣末くんの演出が生々しく、子供たちの演技が凄いリアルだからという観方もありますから。

廣末 不自然になって欲しくないだけです。そのままの年齢の子たちばかりだったから、学校に自然にいる感覚と、プラス脚本から受けたあなたたちの感覚でそこにいて欲しいと伝えました。オーディションは全然苦労しませんでした。500人から来て頂いたんですけど、今回の子たちはすぐに見つかりました。

―廣末監督の演出は高橋さんのイメージしたものとは違ったのでしょうか。

高橋 やはり紙の上とは変わってきますよね。それは特に人間臭い人になって戻ってくるわけですよ、映像になると。そういうところは常に感じますね。それは子役だけでなく、大人の役もそうです。現場では、廣末くんが何かを聞いてきたりしたら、ちょっと答えるくらいで、別に僕からワザワザ何かと言うのはないですね。

―脚本に対してはどうですか。

廣末 脚本をもらって一番最初に考えるのは編集のことですね。編集で自分なりのリズムにもっていけるのかというのはその時点で考えて、それを、人を息づかせるとか、撮るというところでは全く苦労することはないです。

―ラスト、希望を持って終わらせた意図というのは。

高橋 正直、14歳の闇だけを描いてもね。野放図にふわあっと終わりというのが第一稿だったんですけど、やはりそれでは僕らの中のモチベーションが上らないところがあって、それはなんだろうかという解決方法が、とにかく14歳を引っぱたくことだったんですよ。それは結構感情の中で、あの世代の子たちがコンビニでたむろしているのとか僕は単純に好きじゃありません。そういう気持ちで作っていったんですけど、何かもっと身近な14歳の子がいたとしたら、何か言えるんじゃないかみたいなことを話していて、最後は脚本に起こす時に廣末くんに委ねて、考えちゃってくれという風にしました。多少、前の台詞と辻褄を合わせながらですけど、基本的に廣末くんの言いたい事を書いてやりました。

―あの引っぱたくシーンは、ある種14歳当時の高橋さんを叩く意味合いもあるのでしょうか。自分を見つめ直すためとか。

高橋 14歳の頃の自分を叩くという意味はないですね。単純に、大人としてというか、脚本家ってちょっとヤクザな仕事、フラフラしている人間が生意気にも14歳に腹を立てているという感じです。そんなに深く昔の自分を殴ると言う意味ではないですね。
 当時14歳だった僕を見つめ直すというような意味もないです。女子生徒が先生を彫刻刀で刺すシーンは、実際に見た経験なんですけど、あの時の女性は今どうなっているのか、そっから発想を膨らませていったんですよ。僕が僕を探しているという感じではないですね。

―その時の衝撃がかなりトラウマとして残っているのですか。

高橋 その衝撃は別に残ってはいないですね。ふわふわして見ていただけで、あれでもし、その先生が死んでしまったりしたら、もしかしたらいまだに何かあるのかもしれないけど、その時は本当にそれぐらいの暴力というか衝撃は、いっぱい14歳にはあったと思うので、そのうちの一つに過ぎません。


“特別な感覚”

―高橋さんの脚本には、やはり共感する部分が多いのですか。

廣末 そうですね、感覚的にどっかで似通ったところがかなり多くあるし、一番字を読んで映像とか感覚とかが僕の頭の中に出来ちゃうので、何か特別な感覚ですね。

―監督をしながら出演もすることは難しくはないですか。

廣末 基本的に、脚本をもらう時に「僕はいるんですか?」っていうことを高橋さんに確認するんです。そうすると、「廣末くんはこんな役で考えて書いた」と言ってくれるんですよ。だからそっから考えるんです。難しいかというと、自分の中で、シーンを演じる者として捉えしまえば、いてもらって凄く助かる演者ではあるんですけどね。

―高橋さんにとっても役者・廣末は魅力的な存在なのですか。

高橋 やはりそれはありますね。これは口で言ってもなかなかわからないことなんですけど、自分が書いている人物を表現できる人というのは、そうそういないんですね。だから、やはり廣末くんが言うように監督にとって一番便利な役者であるように、僕にとっても書いた脚本の中に廣末くんがいてくれると非常に助かる人ですね。内側から廣末くんが演出してくれるという感じはあります。


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