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インタビュー:宮田昌紀ユナイテッド・シネマ(株)代表取締役社長

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インタビュー:宮田昌紀ユナイテッド・シネマ(株)代表取締役社長

2007年08月15日
シネコンは住商30年の経験が活かせる場
 切り口は消費者向け事業/住商に映画事業部が誕生
 流通業とネット業の経験/悪くても利益出せる体制   シネコンは住商30年の経験が活かせる場
    切り口は消費者向け事業/住商に映画事業部が誕生
    流通業とネット業の経験/悪くても利益出せる体制
      

 3月30日、ユナイテッド・シネマが代表取締役社長の交代人事を発令した。UCIジャパン時代から延べ9年間トップを務めた塚田哲夫氏に代わり、親会社である住友商事から宮田昌紀氏が抜擢された。総合商社で豊富なキャリアを積んだ宮田氏が、自身初となる映画業界に挑戦する。


切り口は消費者向け事業

――3月30日開催の定時株主総会とその後の取締役会を経て、ユナイテッド・シネマ(UC)の代表取締役社長に就任しました。新社長就任までの経緯を聞かせてください。

宮田 内示が出たのは1月半ばくらいでした。私は住友商事に30年間いた人間です。商社は色んな分野の仕事をしていますから、辞令一つで全く違う分野に行ったり、全く違う国に行ったりということが当たり前です。そのため、ある日突然仕事が変わることになっても対応できるように日頃から準備をしているものです。以前の住商では内示は辞令の3日前で、辞令が出てから1週間以内に引継ぎを終えて赴任しなければならなかったんですが、今は多少のゆとりができまして、辞令の2週間前に内示が出るようになりました。それでも物理的なものと心情的なものの整理を全部終えて、新たな職場に赴任するには時間が短いのは確かですね。

――内示があった1月半ばから2週間が経った2月1日付で、社長付としてUCに赴任してきたわけですが、これ以前はどのような仕事をされていたんですか。

宮田 映像の仕事は今回が初めてです。00年から5年近く流通の仕事を手掛け、その後、05年に突然インターネットの世界に移りました。流通とインターネットでは全く分野が異なりますが、消費者向けという切り口であれば、どちらも同じということが言えます。この切り口は映画、映画館にも通じるところです。色んな分野を経験してきたわけですから、その経験をシネコン事業でどのように活かしていくのか、これがUCの社長に就いた私の大きな役割だと理解しています。


住商に映画事業部が誕生

――宮田さんは住商の映画事業を扱う部署である映像メディア事業部からの出向という形ですか。

宮田 ええ、そうです。ただし映像メディア事業部は、4月から名称を“映画事業部”に変更しています。組織の中の名称に“映画”という2文字が入るのは、住商の長い歴史の中でも初めてだと思います。UCやアスミック・エース以外にも、良質な映画作品への出資、CATVや衛星放送向けに映画専門チャンネルの放送を行うムービープラス、ビデオ・オンデマンドのジュピターVODなど、映画関連事業に長年取り組んできた結果としての、映画業界における存在感、或いは住商の中における存在感というものを住商自身が認めた、そして今まで以上に映画事業に経営資源を注入していくという意思表示であると解釈しています。
 補足すると、住商の組織図では一番大きな構成単位が“部門”で、その下に“本部”、さらに下に“部”があるという3層式になっています。映画事業部は、“メディア・ライフスタイル事業部門”内の“メディア事業本部”の中にあります。住商は4月1日付で大きな組織変更を行って、私が以前関わった流通事業(ライフスタイル・リテイル事業本部)とインターネット事業(ネットワーク事業本部)、そして映画事業が同じ部門に属することになりました。住商は昔から消費者向けのビジネスを手掛けていて、食品スーパーのサミットは40年以上、通販事業を20年以上、ドラッグストアも5年以上になりました。10年くらい前から消費者向けビジネスを一つの部門にまとめたらどうかという議論がありまして、今年4月にようやく一つのゴールに辿り着きました。組織として消費者向けビジネスが一つの部門に統合されたわけですから、今後様々な相乗効果を発揮できる体制が整ったのかなと思っています。


流通業とネット業の経験

――宮田さんがこれまで培った経験を、シネコン事業にどのように活かしていくかという具体像はあるんですか。

宮田 細かな部分については近い将来、打ち出したいと思っています。私の経験のうちシネコン事業で活かせるものとしては、まずは流通事業の中の量販店ビジネスの難しさです。どのような立地に出店するのか、商圏をどのように分析するのか、競合の分析をどのように見るのかといった要素は、施設を作ってその中で商品・サービスを提供していくという意味で、量販店もシネコンも同じことです。その難しさをどのようにUCのシネコン事業に反映できるかということです。
 二つ目が流通事業の中でもブランドの仕事です。住商は以前、アメリカのコーチと共同出資でコーチジャパンを設立しました。ブランドがお客様に受け入れられるか、ブランドに対する愛着を持ち続けていただけるか、といったブランドマネジメントについて、コーチジャパンの店舗展開を通じて学びました。シネコンがたくさんある中で、UCブランドがいかにして良いポジションを確保していくかということにつながります。
 三つ目がインターネットの仕事です。まだまだ映画の世界はアナログな部分が多く、これをいかにデジタル化できるかということです。ネットの世界も映画の世界もコンテンツ提供サービス、コンテンツを提供する場という意味では同じことです。世の中に色んな選択肢が増えてきている中で、お客様のライフスタイルに映画をどう入れ込んでいけるのか。シネコン事業は実際に劇場に足を運んで、2~3時間という時間を過ごしていただく。一方でネットはお客様が今いる場所で瞬時にして欲しいコンテンツを掴むことができる。そう考えるとシネコン事業はネット事業よりもハードルが高いということになりますが、このハードルを少しでも低くすることはコンテンツ提供会社として注力すべき点であろうと考えています。


2ヶ月強で90サイト視察

――2月1日にUCに入社してから3ヶ月半が経過しました。この間、どのような業務を行ってきましたか。

宮田 私は経営の方針を決めるに当たって、まずは現場を見なければならないと思っています。UCに来て、初めに行ったのがサイト回りです。塚田(哲夫前社長/現ワーナー・ブラザース映画ジェネラル・マネージャー代理)さんに同伴して、自社の17サイトは勿論、他社のサイトも含めて全部で90サイト近くを実際に見てきました。自社サイトの殆どに競合サイトがありますから、1回出張するにつき、20~30㎞圏内にある競合する3~5サイトをまとめて見てきました。4月20日にようやく、サイト回りが一段落つきました。
 しかも、最近は新宿バルト9や名古屋のミッドランドスクエアシネマ、なんばパークスシネマなど各社の旗艦店と言われるサイトがオープンして、各社とも色んなトライアルをしています。それらをUCの経営戦略の参考にしていきたいと思っています。


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