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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.52】
この10月、10億円に届かない邦画が続々

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.52】
この10月、10億円に届かない邦画が続々

2011年10月25日

 この10月、新作の邦画興行の状況を見るにつけ、寒々しい気持ちがわき上がってくるのを抑えられない。昨年当欄で、 “20億円の壁” と称して、作品ごとの興収がなかなか20億円を超えられなくなっている現状について記述したことがあるが、それは今や10億円になり、はたまた5億円になりつつある。いったい、何が起こっているのか。

 まず、10月に公開された邦画を順に言うと、「DOG×POLICE 純白の絆」(10月1日~)、「はやぶさ/HAYABUSA」(同)、「ツレがうつになりまして。」(8日~)、「一命」(15日~)、「スマグラー おまえの未来を運べ」(22日~)。全国規模のある程度の劇場マーケットを確保した公開作品に限っているが、いずれも10億円に届かない見通しである。とくに、「一命」と「スマグラー~」は5億円も難しい情勢だ。

 製作費との兼ね合いからいけば、「ツレがうつ~」は、7~8億円が見込めるので、健闘の部類とも言えるが、あとは軒並み予想を下回った。下回った理由は作品ごとに違う。ただそこに共通しているのは、やはり企画の問題だろうと思われる。今、人々が求めている娯楽とは何か。簡単に言えるものではないが、「ツレがうつ~」以外の作品からは、その意味が不透明なものが多かった。

 「DOG~」は、オリジナルである点は買えるが、A級娯楽作品に見えてこないのが弱かった。テレビドラマの映画化ではない知名度の低さを、中身のボリューム感が補えなかったのだと思う。「はやぶさ~」は、 “はやぶさ” の話題性が映画の題材として、どうであったか。 “はやぶさ” をめぐるドラマに、科学的な要素がかなり入り込んでいるように見え(わかりやすく描かれてはいるが)、通常の娯楽作品とは違った受け取り方をされた気がする。

 「一命」は、切腹という題材から見えてくる武士の鬼気迫る生き方が、今の時代によく伝わらなかった。緊迫した物語展開、息を呑む映像美(3D含め)は賞賛に値するが、タイトル含め、若い人たちの関心がそこに向かわなかったことは大いなる反省点だろう。「スマグラー~」は、 “運び屋” の破天荒なドラマの浸透が、面白さを醸すというより、どこか雑駁な印象に映ってしまった点が、何とも残念であったと思う。

 もちろん、理由はそれだけではない。ただ、各々の製作責任者は、その理由をとことんほじくり出し、今後につなげる努力をしてほしい。果たして、その努力は、どの程度のものであるのか。一度、聞いてみたいと思う。

(大高宏雄)

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