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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.59】
洋画興収トップ10、何と3D映画依存だった

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.59】
洋画興収トップ10、何と3D映画依存だった

2011年12月13日
 正月興行を視野に入れた作品の興行が、良くない。12月もすでに中旬に差し掛かっているのだが、この12月以降、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」などがあった昨年の同時期実績と比べて、芳しくないのである。「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」など、期待作品が目標に届いていないことが、その原因だと言える。

 これで正月興行の命運は、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」の動向に大きくかかってきた。映画界では、この作品の成否には正月興行のみならず、今後の映画興行全体を左右しかねないほど大きな意味があるとの見方をしている。これは、この作品クラスの大作が、もし期待を裏切るようなことがあったら、人々の映画離れ、映画館離れが、相当深刻なものであると認識されるからである。

 作品の認知度は抜群である。スターも出ている。文句なく楽しめそうだ。宣伝も見事だった。まぎれもなく、年に1本あるかないかぐらいの期待感を寄せることができる作品であり、そうした作品が期待を裏切れば、映画興行が根底から音を立てて崩れることだって、ありえる。

 さて前回、邦画と洋画を含めた作品別の興収トップテンを記したが、洋画のみの10本がより正確な数字で次のようにまとまったので、以下お伝えする。

 1.「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」=96億円
 2.「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」=88億5千万円
 3.「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」=69億円
 4.「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」=42億5千万円
 5.「カーズ2」=30億円
 6.「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」=26億8千万円
 7.「塔の上のラプンツェル」=25億6千万円
 8.「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」=24億円
 9.「ブラック・スワン」=23億9千万円
10.「トロン:レガシー」=21億2千万円

 ただし、20億円を超えるとみられる「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」は、配給会社が最終数字を明らかにしていないことを付け加えておく。

 以上の成績を見て、驚くことがある。3D映画(3D版がある映画)が、10本中7本あったということである。3D映画の興行が芳しくなく、それが昨年実績を大きく下回る原因であると前回記したわけだが、この結果を改めて見ると、洋画は、完全な3D映画依存ではないか。「元に戻った」のではなかった。3D映画の寡占状態であり、もはや3D映画なしでは洋画(米映画)の興行はありえないようなところまで来たと言えるのである。

 こうなると、3D映画以外の作品の興行が、いかに悪いかということが、逆に露わになってくる。3D映画でなければ、ヒット、いや、ある程度の成績さえおぼつかない。こんな時代が、洋画に到来するとは。だが、これが現実である。

 だからこそ、「猿の惑星」と「ブラック・スワン」の興行は、貴重だと言える。映画のまっとうなドラマと描写力で、ぐいぐい観客を引きずり込む。洋画の興行はこのように、3D映画と非3D映画のせめぎ合いの時代を迎えるのだろう。その力関係は、当然ながら3D映画のほうに偏るのではあろうが、これからは、非3D映画のふんばりの行方が、日本の興行には大きな意味をなすのではないか。その試金石が、先の「ミッション~」であると、私は思う。

(大高宏雄)

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