もういいよ、という向きもあろうが、「アナと雪の女王」を語る。その現象については、すでに私もいろいろなところで書き、巷間では、主題歌の人気分析が盛んになっている。音楽評論家の出番も増えたわけだが、ただ、映画がメガヒットの領域に入ると、いかなる分析をしても、その理由がどうにも納得できなくなるのが映画興行の常である。「アナと雪」も例外ではない。隔靴掻痒にならざるをえない。
では、その隔靴掻痒を恐れず、以下の歴代作品別最終興収ランキングを見て、分析以外の別のことをちょっと考えてもらおう。
(1)「千と千尋の神隠し」(2001年)=304億円
(2)「タイタニック」(1997年)=262億円
(3)「アナと雪の女王」(2014年)=200億円~推定
(4)「ハリー・ポッターと賢者の石」(2001年)=203億円
(5)「ハウルの動く城」(2004年)196億円
(6)「もののけ姫」(1997年)=193億円
(7)「踊る大捜査線 THE MOVIE2~」(2003年)=173億5千万円
(8)「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年)=173億5千万円
(9)「アバター」(2009年)=156億円
(10)「崖の上のポニョ」(2008年)=155億円
つまり「アナと雪」は、歴代3位内に入ることがほぼ確実になったというわけだ。私としても、本当に久しぶりに歴代興収ランキングなるものを引っ張り出したりした。そこで、「アナと雪」が200億円を突破すれば、実に13年ぶりの快挙になるという事実に、今さらながらに驚いたのである。
映画も捨てたものではないな。というのは、メガヒット作品の送り手として、常に先頭に立ってきた宮崎駿監督が昨年、引退宣言したことに象徴的だったように、これからの映画興行には、おいそれと100億円以上のメガヒット作品は登場しないのではないかと、私は少し斜に構えていたからである。
これまでの歴代3位までの作品は、1997年から2001年にかけての4年間に集中して生まれている。それから13年の間、200億円超えの作品が全く登場しなかったことも見逃してはいけない。
もちろん、見逃したからどうということはない。だが、要は映画興行の場においては、ありきたりなマーケティングや分析など、時として全く無意味なものと化すほど、強靭かつ未知的で、とてつもない道へとつながっていることだけは把握しておくべきだろう。
それが、「アナと雪」だったのである。そう言ってしまっては、身も蓋もないという向きもあろうが、その未知の領域があるからこそ、映画は面白いとも言えるのである。この面白さのなかに、映画関係者は、どれだけ興行の可能性を見ることができるか。どれだけ、粘り強さを出すことができるか。それを突き詰めなければ、「アナと雪」現象の意味は何ほどのこともない。
さあ今後、97年から01年にかけてのように、メガヒットの時代が再来するのかどうか。来るかもしれないし、来ないかもしれない。来ても、帳尻合わせのように、他の作品の興行が厳しくなることも考えられる。ただ私の持論は、こうだ。映画興行の底上げを実現させない限り、メガヒットもただのあだ花と化す。だから、とくに最近顕著な邦画の実写作品の低迷ぶりが気にかかるという結論である。
(大高宏雄)