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「TIGER&BUNNY」に見るTVアニメの新たな取り組み

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「TIGER&BUNNY」に見るTVアニメの新たな取り組み

2011年11月11日

「TIGER&BUNNY」シンポジウム.jpg


 「東京国際アニメ祭 2011 秋」(10月27、28日/秋葉原UDX)の一企画として、「『TIGER&BUNNY』に見るTVアニメの新たな取り組み」と題したシンポジウムが、10月28日に行われた。

 「TIGER&BUNNY」は、特殊能力を使って平和を守るヒーローが存在する都市、シュテルンビルトが舞台。ヒーローたちはスポンサーロゴを背負って活動し、その模様は「HERO TV」という人気番組で中継されている。物語は、仕事も私生活も崖っぷちのベテランヒーローと、有能だが扱いにくい新人ヒーローが、対立しながらも悪に立ち向かう姿を描く、痛快バディヒーローアクションだ。

 シンポジウム当日は、企画・製作を手掛けたサンライズの宮河恭夫専務取締役が登壇し、TVアニメにおけるプロダクトプレイスメント、Uストリーム配信などの試みについて語った。
(以下、コメントの要旨)



2つの新たな取り組み

 「TIGER&BUNNY」は、サンライズのオリジナルアニメーション。企画・原作=サンライズ/監督=さとうけいいち/シリーズ構成=西田 征史/キャラクター原案・ヒーローデザイン=桂正和/音楽=池頼広/製作=サンライズ、バンダイビジュアル、MBS(毎日放送)という座組みをとった。

 当初から考えていたのは、アニメが大好きな人だけでなく、普通のドラマが好きそうな人、いわゆるライト層に向けた作品にしたいということ。シリーズ構成に西田さん(ドラマ「妖怪人間ベム」「怪物くん」や映画「ガチ☆ボーイ」の脚本など)を入れたのは、そういう狙いがある。「機動戦士ガンダムSEED」や「機動戦士ガンダム00」など、これまで私が手掛けた作品でも、アニメ業界以外の人と組むことによって、通常とは違う化学反応が起こしたいと考えてきた。「TIGER&BUNNY」は結果的に、ライト層とアニメファンの両方を獲得できた、非常に稀な作品になった。

 「TIGER&BUNNY」は、ビジネス面において、2つの新しい試みを行った。一つは、キャラクタープレイスメント(※劇中の登場人物の身体の部位を、広告スペースとして売るというもの。モータースポーツのF1と似た仕掛け。広告枠を購入した企業は、劇中で登場人物と一緒に企業名や商品名を露出できる)。もう一つは、TV放送・WEBの同時配信。



キャラクタープレイスメント

キャラクタープレイスメント広告.jpg (1)まず、キャラクタープレイスメントについて。昨年11月24日付の日経新聞朝刊で、全15段のカラー広告を打った。その内容は、キャラクタープレイスメントの協賛会社を一般公募するもの。企業の中で広告の決定権は40代、50代くらいの人が持っていることが多く、若い人の意見は反映されにくい。でも、日経新聞に載っていれば、紙面を見て興味を持った若手が、紙面をそのまま上司に見せて「こんな面白い広告がありますよ」と社内提案ができる。出稿後に数十件の問い合わせがあり、結果的には8人のヒーローに対し17社の協賛が得られた。

 主役のワイルドタイガーにソフトバンクなどのロゴが入るのをはじめ、バンダイ、アマゾン、ペプシNEXなど17の企業ロゴ・商品ロゴが入る。面白いのは、ロックバイソンというキャラクター。ロックバイソンには牛角のロゴが入っているが、ファンの間では「ロックバイソン」ではなく、「牛角さん」という愛称で呼ばれている。

 新しい広告手法に対して、クライアントからは好評の声が寄せられている。バンダイから発売されているフィギュアがたくさん売れていたり、牛角の店舗でフェアを行ったりと、協賛各社とのコレボレーションは続く。スポンサー各社には、キャラクターで遊んでほしい。

 今回導入したキャラクタープレイスメントは、ストーリーと絡み、新しい広告手法として成功した。だからといって、次の作品ですぐに、同じ手法を使おうとは思っていない。

(C)SUNRISE/T&B PARTNERS,MBS



TV放送とWEB配信を同時に

 (2)TV放送・WEBの同時配信については、段階的に取り組んできた。まず、「機動戦士ガンダムSEED」でTV放送の6時間後に、NTTフレッツで1週間にわたって鑑賞できるようにした。続いて、「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」では映画館上映、ブルーレイディスク(BD)発売、ネット配信を同時に行った。私は、多メディアで同時にスタートしたいという気持ちが強い。

 今回は、MBSで土曜日の深夜に放送し、それと同時にWEB(Uストリーム)で配信。MBSの放送から3日後の火曜日にTOKYO MXで放送し、MBSから1週間後の翌週土曜日にBS11で放送する…というサイクルを作った。Uストを選んだのは、やはりツイッター機能が付いていることが大きかった。コンテンツに対するファンの一体感、高揚感を最大化する狙いだった。

 MBSでの初回放送は4月2日。Uスト同時配信で見た人数は、2952人。“3千人足らず、こんなものか!”というのが、その時に私が抱いた正直な感想。ところが、2回目に7900人、7回目には4万人と、急激に伸びていった。2クール(2011年4月~9月)で25回放送し、9月17日最終回でUスト視聴は9万3千人を超え過去最高に達した。この視聴数は、有名な歌手のライブをUストで配信した時と、同じ程度の数字である。毎週土曜日の放送後には、ツイッターで「TIGER&BUNNY」の関連ワードが独占するようになった。



最終回を映画館で生中継

会場のモニター.jpg 最終回の放送に合わせ、有料のライブビューイングを開催することになった。私は、「銀魂」や「機動戦士ガンダム00」で1万人規模のライブビューイングを行ったことがある。「TIGER&BUNNY」でUスト配信はバーチャルな世界だが、最後はリアルに見てもらう場を用意しようと、全国の映画館44サイト・85スクリーンで、24時から翌朝5時まで実施した。本会場の新宿バルト9では、MBSでの放送・Uスト配信と同時に最終回を上映し、出演声優らが登壇するイベントを実施した。他の映画館では、最終回上映と新宿バルト9のイベントを生中継した。新宿バルト9は全9スクリーンを、梅田ブルク7は全7スクリーンを「TIGER&BUNNY」が独占した。本会場4800円/中継映画館3000円で、なんと動員は2万3千人を記録した。有料のイベントに、これだけ多数のファンが集まったことに驚いた。

 また、TVの視聴率も深夜帯で3.8%に達し、Uスト視聴も前述のとおり過去最高の9万3千人を超えた。ライブビューイングに2万3千人が来場した影響によって、別のメディアでの視聴が下がることはなかったのである。

 ライブビューイングに集まったファンの様子をみてみると、“私たち、みんな「TIGER&BUNNY」が好きなのね”という確認作業をしている。有料でありながら、ファンが集まって皆で見る。面白い時代だと思う。Uストのツイートではやはり感覚的に分かりにくい部分があり、たまにリアルな場を提供するのが、今回のビジネスのポイントでだった。

 各種メディアへの露出も、どんどん良い方向に広がっていった。マーチャンダイジングも絶好調で、フィギュア、Tシャツ、BD/DVDなどが予想をはるかに超える売上げを上げている。


映画館中継をもっと大規模で

 次のステップとして、リアルなライブを、もっと大きな規模で展開していくことを企画した。11月13日、神奈川県民ホール(キャパ:2200人)で声優やアーティストが登場するイベント「HERO AWARDS 2011」を開催する。そして、その模様を全国の映画館で生中継する。14時、18時30分の2回公演で、本会場のチケット(6800円)はすでに完売。ライブビューイングは、現時点で105サイトが決まり、チケット(3500円)は3万枚以上売れている。本会場と中継映画館で3万4千人以上が同時に参加する大規模なイベントとなり、ファン同士の一体感が生まれ、大変な盛り上がりになるだろう。

 ライブを行いつつ、その場でグッズの販売していくことは、ビジネスにとって非常に重要な要素。これは、音楽ビジネスに近いビジネスの形態であり、「TIGER&BUNNY」のマーチャンダイジングはまだまだ伸ばせるはずだ。


既存メディアとグループの力を連動

サンライズ宮河氏.jpg 「TIGER&BUNNY」の展開は、さらに広がっていく。その基本的な考え方は、既存メディアを活用しつつ、バンダイナムコグループの持つ力を連動させていくこと。

 昨年4月に、イベントやライブの企画・製作を専門的に手掛ける新会社「バンダイナムコライブクリエイティブ」を設立した。また、3週間前(10月10日)には「バンダイナムコライブTV」というWEBサイトを開設した。このWEBサイトでは、バンダイナムコグループの最新情報を、日替わりでライブ(生)配信する。月曜から金曜は、21時にライブ配信し、23時に再配信。土曜と日曜は、11時から月曜~金曜の内容を再配信する。声優やアーティストも登場する。

 チャンネルの内容は主に、月曜=バンプレストの景品情報やキャラクターグッズ、ナムコのアミューズメント施設やテーマパーク、火曜=ランティスの新譜情報やライブ情報、水曜=バンダイナムコゲームスの家庭用ゲームソフト、木曜=バンダイのハイターゲット向け商品、金曜=サンライズやバンダイビジュアルのアニメ作品。

 既存メディア(TV、パッケージ、映画館、インターネットなど)、リアルなイベント(バンダイナムコライブクリエイティブ)、チャンネル配信(バンダイナムコライブTV)の間で、情報が行き来し、ファンが回遊できるような形を作っていく。

 個人的には、インターネットの特性は、ライブをどれだけやれるかということだと思う。TVではニュース、スポーツなど一部のコンテンツしかライブを行わないが、バンダイナムコライブTVではアニメに限らず、様々なコンテンツをライブ中継していきたい。 (了)



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