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ついにオープン「代官山 蔦屋書店」、ターゲットは“プレミアエイジ”

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ついにオープン「代官山 蔦屋書店」、ターゲットは“プレミアエイジ”

2011年12月27日

代官山蔦屋書店.jpg

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、東京・代官山に新たなTSUTAYAとして『代官山 蔦屋書店』(=写真/以下、蔦屋書店)を12月5日にオープンした。同社の増田宗昭社長が、自著『代官山オトナTSUTAYA計画』の中で「CCCが立ててきた数々の企画の、ひとつの集大成」と記す渾身のプロジェクト。その全貌について、映像フロアを中心に取材した――。



“ない映画がない”を掲げる蔦屋書店

蔦屋書店2号館.jpg 『蔦屋書店』は、東急東横線の代官山駅より徒歩5分の立地。旧山手通りに面しており、かつては水戸徳川家の邸宅、その後はノースウエスト航空の社宅となっていた場所だ。デザイン・スタジオ『クライン・ダイサム・アーキテクツ』らが設計した2階建ての大型店舗3棟からなり、白を基調とした落ち着いたデザイン(=右画像参照)。しかし、よく見るとTカードの「T」の字をイメージした建造物であるとともに、外壁も小さな「T」字のタイルで組まれたユニークなデザインであることがわかる。

 緑に包まれた閑静な住宅街にある蔦屋書店のコンセプトは“森の中の図書館”だという。同社が“プレミアエイジ”と呼ぶ団塊世代前後の客層をターゲットに、落ちついた環境の中で趣味に勤しめるような施設を構築した。20~30代の若者が客層の中心であるTSUTAYAがこのような店舗をオープンした背景には、若年人口減少への対応と、TSUTAYA創業時(83年)に客層の中心であった当時の若者たちに、再度TSUTAYAに足を運んでもらう狙いがある。

 その『蔦屋書店』1号館・2階にあるのが、DVDやブルーレイのレンタル・販売を行う映像フロアだ。

扇型の映像フロア.jpg  店内は扇形に棚が並び(=左画像)、その中心にレジカウンターがある新鮮なレイアウト。棚と棚の間隔が広く、ストレスなく作品選びに集中できる。また、中央のレジカウンターとは別に、現金・クレジットカード、電子マネーのどれでも決済できるセルフレジが6台設置されており、よりスムーズに料金支払いを行うことができる。

 商品はレンタルDVDを中心に構成され、全国屈指の品揃えを誇る「SHIBUYA TSUTAYA」と同等の8万タイトル・10万枚を取り扱う。通常のTSUTAYA店舗で陳列されるDVDは、映画だけでなくドラマ、グラビア、バラエティなど多様なジャンル構成だが、蔦屋書店では『映画』に特化。「ない映画がない」を標榜し、話題の新作はもちろん、プレミアエイジの趣向に突き刺さるクラシック作品を外国映画・日本映画問わず多数ラインナップしているのが特徴だ。

 そして最大の売りは“コンシェルジュ”の存在。蔦屋書店には、そのジャンルの知識と経験が豊富なスペシャルリスト“コンシェルジュ”が計36人おり、客のニーズを踏まえて商品の提案や説明を行うために常駐している。映像フロアにもコンシェルジュが5人おり、訪れた人に映画の魅力を伝えている。

映画コンシェルジュの大前さん.jpg  映画コンシェルジュの1人、大前毅さん(=右写真)に話を聞いた。現在50代の大前さんは、大学時代に映画を専攻。根っからの「映画青年」で、社会人になってからも映画制作事業に携わっていたという。得意なジャンルは『ヌーベルバーグ』『アメリカンニューシネマ』『ATG』で、「大島渚、吉田喜重、篠田正浩監督らの作品に熱中しました」と語る。コンシェルジュの立場から、現在のオススメは『昭和映画史』コーナーにある日活作品。「日活は来年創立100周年。石原裕次郎さんと同年代の方に、もう一度映画に触れあってもらいたい」という。

 オープンから約2週間(取材日は12月21日)経ったが、すでにリピーターも現れている。大前さんによると、「ある婦人の方は、何日かに1度必ずお越し頂き、何本も借りて行かれます。話を聞いてみると、以前映画をプロデュースされていた経験があるそうです」という。この話からも、元業界人をうならせるほどの充実した品揃えであることが窺える。また、キッズコーナーも充実しており、ファミリーで訪れても希望の作品が見つかるだろう。

タッチパネル.jpg  同店舗ではコンシェルジュのほかにも画期的なサービスを行っている。それが「オンデマンドDVD」だ。このサービスは、今までにDVD化されていなかった作品を、店頭でDVDにしてその場で購入できるというもの。希望者は、店内の数か所に設置されているタッチパネル(=左画像)を操作して作品を選び、通常なら30分ほどで商品を受け取ることができる。従来はドキュメンタリーやグラビアが中心だった品揃えに、“復刻シネマライブラリー”と銘打って、『いちご白書』や『緑の館』などの名作映画もラインナップ。現在約3000作品を取り揃え、随時追加中だという。

 ちなみに、オンデマンドDVDサービスを利用する際に使うタッチパネルは、店内の商品検索にも使うことができる。膨大な商品数を取り扱うだけに、コンシェルジュの知識と、このタッチパネルの検索機能をうまく利用することが蔦屋書店の上手な楽しみ方の1つと言えるだろう。


6ジャンル+雑誌の品揃えは日本一

 では、映像フロア以外にも目を向けていこう。そもそも蔦屋書店は、前述の通り“森の中の図書館”というコンセプトを持ち、商品の中心は「書籍・雑誌」である。蔦屋書店を構成する大型店舗3棟は、どれも1階に書店が入っている。

「旅行」コーナーの一角.jpg  大きな特徴は、『人文・文学』『建築』『車』『アート・デザイン』『料理』『旅行』の6ジャンルの書籍に加え、『雑誌』に特化した「専門書店」としての品揃えだ。一方でコミックや学習参考書の類は見当たらない。店舗全体の在庫は約14万冊で、それ以上の蔵書数を誇る店舗は他にも存在するが、「プレミアエイジに向けて用意したこの6ジャンルと、雑誌の品揃えに関しては蔦屋書店が日本一」(広報担当)だという。(=右画像は『旅行』コーナーの一角)

 1号館には『人文・文学』、2号館には『アート・デザイン』『建築』『車』、3号館には『料理』『旅行』ジャンルがそれぞれコーナー展開されている。各フロアにコンシェルジュカウンターが設置され、『旅行』コーナーのすぐ隣には、旅行の手配ができるトラベルカウンターまで併設されている。また、3棟の中央を55mの『マガジンストリート』が貫き、ここには日本の雑誌1300種、洋雑誌1000種、計3万冊が置かれている。希少なヴィンテージ雑誌も多数揃えられており、雑誌マニアも満足間違いなしの売り場と言えるだろう。

スターバックス.jpg  そして、他の書店との大きな違いは、「どうぞ商品を手にとって読んでください」というスタイルだ。一部を除き、書籍はカバーがかけられておらず、いたる所にイスが置かれている。さらに、3号館1階にはブック&カフェスタイルのスターバックス(=左画像)が入り、書籍を読みながら利用することもできる。


 一方2階フロアは、1号館は前述の映像コーナーが入り、2号館には座席数120席のライブラリー&ラウンジ(『Anjin』)が設けられ、この周りを『平凡パンチ』などの懐かしの雑誌や、海外の貴重な雑誌や書物が取り囲む。1階の書籍をここで読むことも可能だ。また、3号館には音楽フロアが入り、ジャズ、クラシック、60年代ロックのCDを中心に、レンタル12万枚、セル1万枚を取り扱っている。

代官山T-SITE GARDEN.jpg  以上が『蔦屋書店』の概要だ。そして蔦屋書店には、プレミエアイジに向けた7つの専門店が集まる『代官山T‐SITE GARDEN』(=右画像)が隣接している。ここにはカメラや電動自転車を扱うショップ、クリニック・エステやカフェ・バーラウンジ、輸入玩具店、ペットが遊べるガーデンスペースを併設したペットケアショップ、多目的スペースが立ち並び、オシャレで小さな一つの町を形成。書店で本を読んだ後に、外に出て散策したくなるような雰囲気を醸している。


 これほどの大規模なプロジェクトでありながら、同社は開業の告知を控え、マスコミ向け内覧会なども行わず、12月5日にひっそりとグランドオープンした。それは、静かな環境の中でプレミアエイジに利用してもらおうという配慮があってのこと。取材時は平日の午前だったこともあるが、店内には静かで穏やかな時間が流れ、まさに“森の中の図書館”を思わせた。まずは採算を度外視し、新たな客層の掘り起こしと顧客満足を最優先に考えた店舗であることが窺える。CCCの「集大成」でありながら、次なる一手のための「挑戦的な企画」とも言えるだろう。

 増田氏は2月に開いた会見の中で、「今、お客様の環境変化への対応が求められている。私どもは(新たな方向性として)デジタル対応型TSUTAYAと、これまでの規模とは異なる1000~2000坪クラスの大型店の地方出店を考えている」と語っている。その2つの要素を兼ね揃えた『代官山 蔦谷書店』が、同社の今後の事業展開の中で大きな割合を占めることは間違いなく、その動向に注目が集まる。(了)



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