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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.75】
邦画と洋画の明暗、異変と感じなくなる日

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.75】
邦画と洋画の明暗、異変と感じなくなる日

2012年04月10日

 異変と言うべきだろう。「劇場版 SPEC~天~」(279スクリーン)が、4月7、8日の2日間で、全国動員35万1473人・興収4億6870万5300円を記録する大ヒットのスタートを見せたのである。配給の東宝も、このスタート成績には驚き、最終で25億円が視野に入ったとの見通しを立てた。ただ、異変の意味はこれだけではない。

 同じ4月7日公開の「タイタニック 3D」(480スクリーン)が、2日間で5万9771人・1億0015万0600円(先行上映成績込み)。「アーティスト」(178スクリーン)が同じく2日間で、4万2277人・5319万0300円を記録。このような邦画(「SPEC」)と洋画(「タイタニック」「アーティスト」)の圧倒的な差が、異変だと言うのである。

 「SPEC」は、テレビドラマの “コア層” を観客ターゲットに、テレビ(スペシャルドラマ)との連動でさらなる浸透の強化をはかり、5億円近い好成績にもっていった。いつもながらの展開ではあるが、その興行規模が予想を上回ったのは、コア層という客層の広がりを読めなかったからだろう。テレビのスペシャルドラマが映画版につながる展開のなかで、コア層の関心が拡大したのである。

 「タイタニック 3D」は結果論ではなく、劇場数を広げ過ぎだろう。「スター・ウォーズ 3D」のときも、600スクリーン超の劇場を開けたが、新作ではない3D映画に、何故ここまで大規模展開を仕掛けたのか。

 理由としては、名作信仰と3D版への過信が、劇場マーケット拡大の背後にあった気がする。ただ、個人的にはアイマックスシアター中心に、2作品とも、かなり絞り込んだ劇場での3D版上映を行うほうが効率的であったと思う。広げなければならない本社サイドの理由があったとしても、現実的な興行面においては、プラス要素を見出せなかった。

 「アーティスト」は、これは結果論ではなく、劇場数が多すぎたと思う。勝負に出た面は評価するが、無声映画という側面はクオリティ面を差し引いても、やはり興行的には大きなハンディキャップを負ったのだろう。とくに地方の劇場となると、それが顕著になる。ちなみに、昨年の「英国王のスピーチ」(最終18億2千万円)は、100スクリーン少しであった。

 邦画と洋画の明暗。今の興行のありようがストレートに出た週だった。今回、そのほんの一面に触れたに過ぎないが、これを異変と感じなくなる日が、いずれ来るのかもしれない。

(大高宏雄)

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