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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.94】
「最強のふたり」大ヒット、諦めるなという教訓

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.94】
「最強のふたり」大ヒット、諦めるなという教訓

2012年09月04日

 いい邦題である。「最強のふたり」とは、よくぞ付けた。9月1日から公開された本作が、49スクリーンという限定的な公開館数ながら、ちょっと驚くような大ヒットスタートである。もちろん、タイトルだけは、こうはいかない。タイトルの良さに加えて、いかにも楽しさを満喫できそうな作品の外観が大きかったのだろう。

 9月1日=動員4万1840人・興収4199万2400円、2日=2万8484人・3707万4200円、2日間累計=7万0324人・7906万6600円。この2日間成績は、「英国王のスピーチ」(最終19億円、107スクリーン)の90.4%であった。

 2日間における49スクリーンでの全上映回数497回のうち、何と220回が満席だったという非常に興味深いデータも出ている。満席の回は、料金が安い1日のファーストデイに集中しているとしても、これはめったにないような高い稼働率である。

 劇場別では、TOHOシネマズシャンテが、2日間全19回上映(この回数の多さは、この時点では読み勝ちだろう)のうち、17回が満席となった。また、新宿武蔵野館は、初日に1109人を動員し、3スクリーン体制になって(2003年)以降での初日動員新記録を樹立した。

 障害をもつ金持ち白人と、彼を介護する貧乏黒人の話。ユーモアあり、感動あり、涙あり。これが、全くくどくない。とにかく、理屈抜きで楽しめるのだ。日本人好みの作品と言っていいのではないか。この中身のインパクトが、宣伝の過程で、ある程度浸透していったと見ていい。高齢者男女に加えて、若い人たちも見受けられた。

 フランス映画で、日本人にはほとんど知られていない俳優2人の共演。昨今の興行事情では、ヒットの可能性は非常に低い作品なのだが、洋画低迷の折、大きなヒントを与えてくれたと思う。こうした作品が、世界のどこかに、あるのである。だから、関係者は目を皿のようにして、こうした作品を探し回る必要性があるということだ。諦めてはいけない。

 ちなみに本作は、昨年の東京国際映画祭で、最優秀作品賞と最優秀男優賞を受賞している。本来なら、その点が興行上の大きな意味をもってほしいのだが、まだそうなってはいない。この点が、少々残念ではある。

(大高宏雄)

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